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龍天使の羽撃き

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03

side in

「よぉ、マギー。元気してたか?」

「あっらぁ! ノーイじゃないの!
ひさしぶりねぇ!」

コミュニティエリアに戻ると、さっきの三人組とマギーがいた。

「まぁたニュービーの世話か?」

「そうよぉ。聞いたわよ、貴方がこの子達を助けたんですって?」

「本当参ったよ。マスダイバーの奴ら制御できもしない量子ワープで土星まで飛んでたんだぜ?
ランダムワープを追っかけて片付けたら今度は地球にとんぼ返りだ。
ま、仕事だからやるんだけどね」

そこで三人組のうち、茶色い帽子の男の子に話しかけられた。

「さっきはありがとうございますヴォジャノーイさん!」

「いや、いいよ。俺はゲームマスターの代理でもあるからね。
ニュービーハントみたいなノーマナー行為は職務上見過ごせなかったんだ」

「げーむますたー?」

もう一人の男の子…恐らく00のパイロットが不思議そうに首をかしげた。

「彼はねぇ、運営に雇われているダイバーなの。
不正行為をダイバーの側から摘発排除するのがお仕事なのよ」

まー。量子ワープ使えるからって便利使いされてるだけなんだがな。

「GBN運営部不正ツール外部追跡隊長シビルジャッジメンターゼロワン。
仕事中はそう呼ばれているよ」

「な、長いですね…」

「役職なんてそんな物だよ」

「彼はシビルジャッジメンターの隊長を任されるだけの実力があるのよぉ」

「そんな誉められた物じゃないさ」

「あらぁそう?でも『制限解除』してもらってるダイバーなんて貴方以外知らないわよ?」

「「制限解除?」」

あんま言いたくないんだがなぁ…

「昔俺と同じ事を考えた奴がいてな。
NTD、トランザム、ナイトロ、ゼロシステム、明鏡止水…
そんないわゆる『ハイパーモード』を全部載せした機体を使うフォースがあったらしいんだがな。
案の定機体は壊れるわ、情報過多で意識不明に陥るわでパッチが当てられたんだってよ」

「へ?でもヴォジャノーイさんは使ってますよね?
フェネクスベースならナイトロも装備してるはずですし…」

「ああ、NTD、トランザム、ナイトロを装備してる。
ナイトロはほぼ使わないけどな」

ナイトロはダメだ。

本当に頭がパンクする。

「でな。おれがそのフォースの事を知らなくてさ、GBN運営に直談判しに行った訳よ」

「「は!?」」

「そしたら検査クリアしたらいいよって言われて一週間くらい提携病院で『ガチ』の検査受けた訳よ」

「そ、それで…?」

「検査にはクリアしたけど、今度はパワーバランスがどうのこうのって話になるわけよ」

「当たり前よねぇ…」

「で、それに目を瞑る代わりにゲーム内での不正ツール使用とノーマナー行為を取り締まる役目を押し付けられたんだ」

「彼なら大抵のダイバーには…それこそ不正ツールを使ったりノーマナー行為をするようなのには負けないもの」

「ま、そういう訳だ。もしお前達がハイパーモードの並列稼働をどうしてもしたいってんなら俺の方から紹介状書くぜ」

「だめよぉ。この子達はまだ入ったばっかりなんだからぁ」

「ま、そうだな」

それに諸々の大会に出れないしな。

「ねぇ、ヴォジャノーイさん」

「なんだい少年?」

「ヴォジャノーイさんとチャンピオンってどっちが強いの?」

ふむ…キョーヤとか…

「リク君。それは聞いてはいけないことなのよ」

「そうだぜ。俺はズルしてるような物だしな。
まぁ、キョーヤも心意使えるからたぶん互角だがな」

「しん…何ですか?」

あ、しくった。

「ほら、気合いでビーム弾くパイロットいるじゃない?
それの事よ。ダイバーにも時々いるのよね」

(おいマギー!)

(仕方ないじゃないの!貴方が言っちゃったんじゃない!)

(しゃ、しゃぁねぇな…)

「そんな事できるんですかヴォジャノーイさん!?」

「お、おう頑張ればできるよー」

本当に頑張れば…ね。

「ねぇ」

そこで今まで無言だった女の子が喋った。

ぶっちゃけNPCかと思ってた所だ。

「貴方のガンプラ。どうしてあんなに嬉しそうなの?」

「「「「?」」」」

嬉しそう? カンヘルが…?

「えーと。不思議ちゃん。どういう意味かな?」

「トランザムも、NTDも、ガンプラは嫌う。
なのに、嬉しそうだった」

ますますわからん。

この子はガンプラの気持ちがわかるとでも言うのだろうか?

そも無機物であるガンプラに…

いや、本当にそうだろうか?

心意という不確実で無限の可能性を持ったシステムがあるのだ。

それに九十九神という考えが日本にはある…

「もし、もし本当にガンプラがハイパーモードを嫌っていて、それでもカンヘルが喜んでるって言うのなら、作った通りに動かしてやれてるからだろうな」

それだけだ。

「わかった。貴方のガンプラを、大切にしてあげて」

言われなくとも、そうするさ…

ピー!ピー!ピー!

ん?

ウィンドウが開くと、ヴィジホンが起動した。

その中には青筋を浮かべた葵……俺の彼女が…

『おいこら灯俊! どこで油売ってるんだ!
林檎も蜜柑もまってんだぞ!』

あー…わすれてた…

「すまん皆!彼女との約束があるんだ!
また会おうぜ!」

side out




取り残された四人は、ポカンとしていた。

「えっと…僕らも帰ろうか」

「そうだなユッキー…」

「サラちゃんはどうするのかしら?」

「わたしは、もうすこしいる」

「わかったわ」

「じゃぁね、サラ」

「じゃーねー!」

そうして、リクとユキオは現実世界へ帰還した。 
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