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おぢばにおかえり

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65部分:第十話 登校その六


第十話 登校その六

「長池先輩よね」
「ええ、そうだけれど」
「あの人凄く怖いじゃない」
 その怪訝な顔で言うのでした。
「一年の時だって同級生の人と凄くやり合ったそうだし今だってきついし」
「怖い?きつい?」
 私には夢みたいな話でした。全然そんなことは考えられません。
「そうかしら」
「そうよ」
 ここで私達は教室に入ります。そうして彼女の席で話を続けます。彼女の席はロッカーの側です。そこではっぴとかをゴソゴソと探しながら話を続けます。
「厳しいし怒った顔凄く怖いし」
「優しい人だけれど」
 少なくとも私はそう思います。一緒の部屋ですからよくわかるつもりです。
「そんなことないわよ」
「本当!?」
「嘘言って何になるのよ」
 私はこうも言いました。
「何にもならないじゃない」
「それはそうだけれど」
「ただでさえ東寮って厳しいけれど」
 これは本当のことです。幹事の先生達も決まりも先輩達もかなり厳しいってことは聞いていましたけれどその通りです。それはもう軍隊みたいだって言われる程です。
 朝は早くからお掃除で先輩達のスリッパを揃えたりとか朝御飯の時間は殆どなかったりとかそんなのは当たり前で。お菓子の食べ方も厳しい人だっています。
 それでも長池先輩は全然厳しくないです。穏やかな人ですしそのことはとても有り難く思っている程です。いつも親切にしてもらっていますし。
「長池先輩はそうじゃないわよ」
「本当に!?」
「私一緒の部屋にいるのよ」
 これが根拠になります。
「その私が言うんだから問題ないじゃない」
「まあそうだけれどね」
「少なくとも長池先輩は違うわよ」
 それをまた彼女に言います。
「穏やかな人よ。とても奇麗だし」
「確かにそれはね」
 彼女も奇麗って言葉には素直に頷いてきました。
「凄い奇麗よね。色白で目がキラキラしてて」
「髪の毛だってね」
 先輩は髪の毛もいいんです。
「薄い茶色でふわふわした感じでね」
「結構三年の人って奇麗な人多いわよね」
「高井さんもそうだしね」
「あの人なんか凄いじゃない」
 彼女はまだロッカーを探しながら私に応えてきます。天理高校のロッカーはかなり変わっていて和風で全部同じ段になっています。そこが普通の学校とは違います。
「最初見た時びっくりしたわよ。女優さんみたいって」
「目が大きくてね。はっきりしていて」
「そうよね。他にも奇麗な人って」
「先輩達の間にはかなりいるわよ」
 おぢば全体で結構以上に美人の人は多いです。まあ小柄な割合がその中でかなりありますけれど。私はその中でかなりのものだって言われています。
「いいわよねえ。羨ましいわ」
「ええ。それはね」
 私も同じ意見です。羨ましいってものじゃありません。
「ところで見つかったの?」
「ええ、あったわ」
 いい答えが返ってきました。
「ロッカーの中に。扇も」
「よかったじゃない」
 それを聞いて私もほっとしました。
「なかったらどうしようかって思っていたわよ」
「どうしようかって借りればいいじゃない」
 これを言ったらこう返されました。
「それだけじゃない、結局のところは」
「あまりそういうのって好きじゃないのよ」
 私は左手で頬杖をついて少し眉を顰めさせました。
「貸し借りっていうのはね」
「お堅いわね、そういうところが」
「それでもよ」
 私はまた言いました。
「後で面倒なことになり易いからね」
「考え過ぎよ、それは」
「そうかしら」
「そうそう、人生気楽に」
「また気楽過ぎるわよ、あんたは」
 こう言い返しますすけれど反省していないのがわかります。全く全然反省しないんですから。東寮はとても厳しいところですけれどこうした娘もやっぱりいます。
 何はともあれはっぴが見つかってよかったです。話がそっちに行きました。
 
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