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おぢばにおかえり

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63部分:第十話 登校その四


第十話 登校その四

「絶対にしないわよ、彼氏だって特に募集していないし」
「誰か立候補してきたらどうするの?それじゃあ」
「その時はね」
 私だって相手が名乗り出て来たら。それが誰でもやっぱり悪い気はしませんしやっぱり。かなりいい気持ちでその立候補を受けちゃうかも知れないです。知れない、ですけれどね。
「私も。それは」
「それが年下だったら?」
「何が何でもそのシチュエーションにこだわるのね」
 しかも皆。いい加減聞き飽きてきました。
「お姉さんだからいいじゃない」
「そういう問題じゃないでしょ」
 それと好みはまた別です。
「私だって好みっていうのがあるんだから」
「怒ったの?」
「りっぷくよ」
 おみちの言葉で返しました。
「全く。朝から皆随分と言うわね」
「ちっちって言い易いのよ」
「言い易いって?」
「別にからかい易いとかそういうのじゃないから安心してね」
「からかわれてる気もするけれど」
「それとはまた違うから」
 だといいですけれど。そんな気がしてなりません。
「安心してね」
「わかったわ。それにしてもね」
「ええ」
 私の言葉に応えてくれます。
「何かしら」
「どうして私が言い易いのよ」
 次に聞くのはそこです。気にならない筈がありません。
「全然そうは思えないけれど」
「雰囲気よ」
「雰囲気!?」
「そうなの。ちっちって優しいし」
「それで?」
「ええ。後は」
 もっと話しだしました。
「人の話は何でも聞いてくれるじゃない」
「それでなのね」
「そういうこと。だから皆あれこれからかったりするけれど」
「やっぱりからかってるじゃない」
「だから人の話は最後まで聞いてよね」
 今度は私が言われます。何かあべこべになっちゃっています。
「それでも相談持ちかけられたりすることも多いわよね」
「そうね」
 これは自分でもわかります。私に話を持って来る人って中学校の時から多いです。今でも結構あります。寮生活って色々ありますから。それで相談を持ちかける娘が多いんです。私も私で長池先輩に色々と話を聞いてもらったりしていますけれど。これは皆同じだと思います。
「とにかく話しし易くて。それでね」
「それでなのね」
「悪いことじゃないじゃない」
 必死な感じでこう言ってきました。
「それも。でしょ?」
「まあそうだけれど」
 一応はその言葉に納得します。確かに悪いことじゃありません。
「けれどね」
「何?」
「からかわれるのは好きにはなれないわよ」
 少しりっぷくした顔で彼女に言いました。
「私だってね。それはね」
「わかってるけれどね」
 わかってやっていたようです、それも皆。
「それでも言い易くて」
「それは止めて欲しいわよ」
「まあまあ」
 ここで私を宥めてきます。
「別に嫌ってるわけじゃないからいいじゃない」
「嫌われてはいないのね」
「当たり前でしょ。私だって色々と助けてもらってるし」
「そうかしら」
 自分では自覚はありません。
「そんなつもりないわよ、私には」
「そうねえ、ちっちって」
 ここで何か言いたそうでした。
「周りのことはすぐに気がつくけれど自分には」
「自分には?」
「あっ、何でもないわ」
 そこから先は言おうとはしませんでした。
「気にしないでいいから」
「何か無理な話だけれど」
「だから気にしない気にしない」
 そんな話をしている間に何時の間にか学校の前です。四角い校舎に瓦の屋根。思えば随分と変わった形の学校だと思います。
「気にしたら負けよ」
「負けよって」
 話を続けながら門の中に入ります。皆も同じです。
 
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