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楽園の御業を使う者

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CAST27

7月31日 午前6時59分。

「白夜様」

「はいはい。わかってるよ」

家のリビングで、右手を一閃。

空間の裂目が広がり、足を踏み入れる。

真夜さんの部屋…というか四葉家当主の執務室に出る。

ニュッと両サイドから伸びてきた手が、俺の頬をつねった。

「いぃっだぁい!?」

横を見ると…

「深夜さん…!?」

俺の、というかスキマの隣にレテ・ミストレスがいた。

その代わり真夜さんの気配が無い。

「やっぱり思った通りね。
久しいわね白夜君」

深夜さんが頬から手を離したのでスキマから全身を出して、水波も連れてくる。

「久しぶり、水波さん。
ごめんなさいね、私の妹が振り回しちゃって」

深夜さんが俺を無理やり椅子に座らせた。

普段真夜さんが座っている椅子だ。

「さて…白夜君。貴女が今日この家に来た理由は何かしら?」

この展開はつまり真夜さんが抜け出そうとしていたのが見つかったって事か…

「昨日葉山さんがごそごそしていたのだけど、ご存知ない?」

「はて、何の事でしょう?
私は東京は暑いから避暑にどうかと真夜さんに呼ばれただけですよ」

「あらそう? こんな朝早くから?」

「はい。東京は朝から喧しい事この上ないですから」

「そうなの?じゃぁこれから一月くらいここに居てもいいのよ?
深雪と達也ももうじき穂波が連れてくるわ」

「御言葉に甘えて、と言いたい所ですけど俺も道場に顔を出さなきゃいけないんですよ」

「武道家も大変なのね」

「ええ、それはもう」

「所で、真夜のパソコンに九校戦のチケットの予約履歴があったのだけど何か知らないかしら?」

「俺が真夜さんのパソコンの中身を知っている訳がないでしょう?」

「そうなの?てっきり私は真夜が貴女の能力を使って『また』抜け出すのかと思っていたのだけど?」

「それは貴女の妄想に過ぎませんよ」

「あらそうかしら? ねぇ、水波さんは何かご存知?」

「いえ、私には何も」

「残念だわぁ…」

"心を読む程度の能力"

深夜さんの心を読むと、どうやら真夜さんは隣の部屋のようだ。

「ねぇ白夜君」

「はいなんでしょう?」

「貴方、真夜の事好きなの?」

"千里先を見通す程度の能力"

なるほど、真夜さんの位置はそこか…

"なんでもひっくり返す程度の能力"

隣の部屋の真夜さんがすわっている椅子と俺、調度品と水波の位置をひっくり返した。

腕の中には真夜さんがいる。

「びゃ、白夜君!?」

"あらゆる物の背中に扉を作る程度の能力"

水波にアイコンタクトをとり、後ろに倒れ込む。

繋げた先は家のベッドだ。

バフッと背中にベッドの感触がくる。

「え、えーっと…?」

真夜さんは困惑気味だ。

「真夜さんの執務室に行ったら深夜さんがいたので少し心を覗いて貴方の場所を教えてもらって千里眼で場所を詳しく探って場所を『ひっくり返して』それから背中にトビラをひらいて倒れ込んで…現在にいたります」

「そ、そうなの…?」

「真……極夜様。お話の前に白夜様の上から降りた方が宜しいかと。
現状は誤解を招きかねません」

真夜さんを横抱きにしたまま倒れ込み、驚いた真夜さんが俺の顔の横に手をついていた。

ようするに…

「現状は極夜様が白夜様をレイ…襲…押し倒……………強姦しているように見えます」

「最後で一番まずいのに行ったな!
どうせなら誤魔化せよ!?」

「申し訳ありません。私は類い希なるリスペクトを極夜様に抱いておりますが、私の貧弱なボキャブラリーでは現状をフォローする事はできません」

「床ドンとかあるじゃん!」

「されたいのですか?」

「ちげーよ!」

そこでふっと明るくなった。

真夜さんが俺の上から退いたのだ。

「え、えと、その、そういうつもりじゃなかったのよ?」

その頬は赤くなっていた。

「わかってますよ」

先ずは飯だな。

「真夜さん。朝御飯にしますからリビングいきますよ」

「わかったわ」

俺が部屋から出ると、その後ろに真夜さん、続いて水波がついてくる。

リビングに出て、振り向いて真夜さんに尋ねる。

「真夜さん、朝はパン派ですよね?」

「ええ、そうね」

「じゃぁ、サンドイッチですね」

さて、キッチンに行こう。

side out



「真夜様。愛されておりますね」

「そうなのかしら…?」

「はい。今日だけは俺が作る、と聞きませんでした」

「そう…」

「…白夜様は健気で、誠実で、純粋です。
どうか、その気持ちに応えてください」

「えぇ、そうね…」

生返事を返す真夜の顔は、恋する乙女の顔そのものだった。







side in

『貴方、真夜の事好きなの?』

そんなの、好きじゃない訳ないだろう…

「真夜さん。サンドイッチできましたよ」

リビングにサンドイッチを持っていく。

「食べて、すこしゆっくりしたら出ましょう」

「わかったわ。キャビネットとトレーラーよね?」

「スキマやトビラでもいいんですけど、目立ちますから」

「それに狭い車内で密着できますからね。
ねぇ?白夜様?」

「お、おまっ!お前は何を言ってるんだ水波!?」

「いえいえ、従者の仕事は主の考えを忖度する事ですから。
私は別のキャビネットに乗りますので」

「あら、いいの水波ちゃん?」

「はい。私の任務は白夜様の護衛兼マネージャーですが、白夜様とま……極夜様の邪魔をしない事は最優先ですので」

「ガーディアンとしてその発言は問題なのだけれど…
わかっていて言っているようね」

「待て水波!」

「白夜様。早く食べましょう。
私お腹がすいてるんです。
深夜様のプレッシャーに押されてお腹がへりました」

「そうね。せっかく白夜君が作ってくれたのだし食べましょうか」

おー…じーざす…
 
 

 
後書き
ちなみにサンドイッチを作っている間、白夜はずっとふよふよ浮いてます。
白夜と水波の住む家の家事は基本的に水波がするので彼女の身長に合わせて作ってあります。
ふよふよ浮きながら料理を作る赤毛でポニテの幼女ってかわいいですよね… 
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