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おぢばにおかえり

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33部分:第六話 レポートその二


第六話 レポートその二

「さてと」
 中に入ると友達の一人が声をあげました。
「まずは台湾のコーナーね」
「そうね」
 台湾にも教会がありましてそういうこととかあって台湾の民族コーナーもあるんです。天理教は世界のあちこちに教会があります。関係ないお話ですけれど。
 それで台湾のコーナーに行くと。何か騒がしいです。
「誰かしら」
 私はそれを聞いて眉を顰めました。
「参考館で騒ぐなんて」
「褌だったんだな、ここも」
「あの」
 それで騒がしい方に注意しました。
「ここでは静かにしてくれませんか?」
「あっ、すいません」
 !?この声は。
「すいませんってひょっとして」
「あっ、先輩なんだ」
 もうここでわかっちゃいました。何でここに!?
「暫くぶり」
「ちょ、ちょっと」
「ちっち」
 声が大きくなったところで友達に肘でコツンと突かれました。私が大声出したら何にもなりませんから。うっかりしてしまいました。
「声、わかってるわね」
「ええ、御免なさい」
 そうですね。落ち着かないと。それでも。
「それにしても」
「やあやあ、奇遇だね」
 本人が向こうからやって来ました。またやけににこにこしています。
「昨日も会ってね。それで今日もなんて」
「全く。何でこんなところで」
 新一君が来ます。学生服を来ています。何でここにまでいるのか。本当に訳がわからないです。
「会うのよ」
「いや、たまたまさ」
 そのにこにことした顔で言ってきます。
「ツレと遊びに来ていて」
「そうだったの」
 遊びにですか。新一君らしい。
「それでなのね」
「うん。先輩は?」
「勉強よ」
 不機嫌な顔を新一君に向けて答えました。
「レポート書かないといけないから」
「ああ、そうだったんだ」
「それで来たら。いるんだから」
「お導きだよね、親神様の」
 そう言われると反論しにくいですけれど。それでもかなりふそくを感じちゃいます。いつもいつも何かっていうと会うのが本当にわからないです。
「そうよね」
「やっぱりね」
 またここで皆が周りから言います。どうして皆新一君の方の味方になるんでしょう。
「だからね、ちっち」
「私達はこれで」
「えっ、ちょっと」
 皆急に何処かに行こうとするんで慌てて声をかけます。
「何処に行くのよ」
「いや、お邪魔虫はこれでと思って」
「だからよ」
「だからよって」
 そのまま何処かへ行こうとします。
「何処に行くのよ、レポートは?」
「だから別行動なんだって」
「そうそう」
 皆にこにこと笑いながら言います。しかも新一君に対しても。
「阿波野君、頑張ってね」
「応援してるわよ」
「また新一君に」
 何かいつもいつも新一君に対して。新一君の肩ばかり持つのが本当に訳がわかりません。しかも私の前でかなり露骨になんて。どういうつもりなんでしょう。
「じゃあ僕もツレに言ってきますんで」
「ええ、早いうちにね」
「それで後は」
 また皆が新一君に言います。
「二人でまたデート」
「これも親神様のお導きよ」
「お導きなのかしら」
 私は全然そうは思えません。こういうのを腐れ縁って言うんじゃないかっていつも思います。それもおみちの教えではお導きって言うんですけれどそれでも。
「はいはい、だからちっち」
「今日も頑張ってね」
 皆どっかへ行っちゃいます。ついでに新一君も。
「帰ろうかしら」
 ふと思いました。けれど何か気が変わって残りました。このまま帰ってもよかったんですけれど。どうしてかは自分でもわからないです。
 暫くしてその新一君が戻って来ました。にこにことした顔で。
「お待たせ」
「待ちたくはなかったわ」
 憮然とした顔と声で答えました。
「何でこんなところでも新一君と」
「まあいいじゃない」
 それでも新一君は相変わらずにこにことした声で。こんなに楽しそうなのが全然わかりません。私はいつも迷惑しているっていうのに。
「これも何かの縁で。お導きで」
「新一君もそれ言うのね」
 皆と同じことを。まあおぢばにいるからですけれど。
 それでもまあ。一緒にいるし。新一君に声をかけました。
 
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