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NEIGHBOR EATER

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EATING 21

「あ、太刀川」

「げぇ!翼!」

基地でばったり太刀川と会った。

「太刀川、高校の成績について本部長が話があるらしいぞ」

すると太刀川は…

「あぁ、ごめん。今からちょっと用事があるんだわ…
またこんどって伝えといてくれ」

「そうか、わかった。と言うとでも思ったか」

羽を伸ばし、太刀川を拘束する。

ついでに隊室の俺のPCを通してアイツに音声を届ける。

「何をする翼!」

「本部長がお前を捕まえたら小遣いくれるって言うからさ」

嘘だけど。

「なにぃ!?本部長そこまで本気なのか!?」

「うん。で、太刀川。幾ら出す?」

「い、幾らだと?」

「そう。どう?取引してみる?」

「い、いいだろう。よし、300円でどうだ?」

スマホを取りだし…

「えーと本部長のアドレスは…」

「嘘嘘嘘嘘!600円出すから!」

「俺の1日の稼ぎ以下だな」

「せ、千円」

「バカかお前」

「せ、千五百円でどうだ?」

「防衛任務の時給以下とか嘗めてんの?」

ちなみに時給1500円プラス撃破数の出来高。

命かかってるから結構、というか物凄く給料がいい。

これでも少ないって言う人はいるけどね。

「くっ…2000」

「はぁ?夜間手当ついたらもっと高いだろ?」

「4000!倍額だ!これでどうだ!」

「はぁ?」

「五千出すよ!出せばいいんだろ!」

「まいどありー」

羽を畳むと、太刀川が財布を取りだし、五千円札を取り出した。

「ったく…とんだ悪ガキだなお前…」

渡された五千円札を…太刀川の胸ポケットに突っ込む。

「?」

「実は本部長から小遣いの話なんてなかったんだ」

すると太刀川は気の抜けた顔をした。

「ジョークがキツすぎるだろ…」

「昨日雷蔵に見せてもらった映画思い出してさ」

「あぁ、そういうこと…」

「いやぁ、まさか本当に太刀川が五千円も出すとは」

その一言に応えたたのは、太刀川ではなかった。

「ほう?貴様本部長の説教を回避するためにそんな大金を積んだのか」

ガシッ!

「そ、蒼也!?」

太刀川の真後ろに音もなく忍び寄ったのは、エース部隊隊長の風間だった。

「さっきからお前と清輝の会話は全て聞かせてもらったぞ」

「な、なにぃ!翼ぁ…!」

「風間、時間稼ぎは役に立った?」

「ああ、役に立った。
少ないが、礼だ。ジュースでも買え」

風間から300円を渡された。

「じゃぁ俺はこいつを本部長の前に連行する」

「じゃぁね、風間、太刀川」

「クッソォォォォォ!覚えてろよ翼ぁぁぁ!」







「およ?翼君?」

自販機でMAX缶コーヒーを買い、横のベンチで飲んでいると声をかけられた。

「あ、栞」

「珍しいね。君がここにいるのって」

「そうかな?」

栞が隣に座った。

「そうだよ。君って結構秘密が多いじゃん」

「まー、BT保持者だしね…」

羽をくいくいと動かす。

「うーん…やっぱりその羽気になるなぁ…
神経かよってるんでしょ?」

「うん。あんまりさわらないでくれ」

「わかった。で、アタシ達の隊長知らない?」

「さっき太刀川見掛けたから風間を呼び出したよ。
たぶん今頃本部長と一緒に太刀川を絞ってる」

「ならいいや。アタシの用事もそれだったし」

「そ。MAX缶コーヒー飲む?」

「んー…貰おうかな」

「はい」

「へ?」

「あ、ごめん。飲みかけ嫌だよな。
もう一本買うよ」

ベンチから降り、自販機に金を入れる。

「え?いやって訳じゃないよ。
それに年下に奢ってもらうのは…」

「いいよ、さっき風間から300円貰ったし」

「風間さんが?」

「太刀川捕縛の報酬」

「い、いや、やっぱりいいよ。
それにカロリーとか気になるし…」

「あっそ」

「だからさ、それちょうだい?」

と栞が俺のMAX缶コーヒーを指した。

「ん。はい」

栞に持っていたMAX缶コーヒーを渡し、自販機の返金レバーを押す。

「あー…この甘みがアタシを癒してくれる…」

「おっさん臭いぞ栞」

「おぉぅ…思春期女子になんて事言うのかね…。
はい、ありがと、返すね」

「ん」

返されたMAX缶コーヒーを飲み干し、ゴミ箱に捨てる。

「躊躇無いね…間接キスだよ?」

「陽乃と夜架といっつもしてるから馴れた」

「ボーダー男衆が聞いたら君刺されるよ?」

「刺される訳無いし刺されても死なない」

「うわぁ…」

「んだよ」

「なんでもなーい。じゃ、アタシはここらで失礼~」

そう言って栞は立ち上がり、手を振りながら歩いていった。

「なんだあいつ…?」

side out









「うぇへへ…翼きゅんと間接キスしちゃった…」

「うわぁ、引きます。ドン引きです」

と菊地原。

「宇佐美先輩…流石にフォローできません…」

歌川もどうしようもないという顔だ。

「宇佐美、死にたくなければその話をやめろ」

「え~なんでですか隊長~嫉妬ですか~?
うぇへへ…うぇへへ…翼きゅんの唇…」

「忠告はしたぞ宇佐美」

風間の一言の後、菊地原と歌川の顔が真っ青になった。

「主様の唇が、どうかなさいましたか?」

「翼君の唇がどうしたのかなぁ…?」

宇佐美が振り返ると、ソコには魔王と切姫がいた。

「詳しくお話聞かせていただきます、宇佐美先輩」

「栞ちゃん。事と次第によっては…ね?」











その日、ある敏腕オペレーターの物らしき悲鳴が響き渡ったが、真実を知る者は、居ない。
 
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