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楽園の御業を使う者

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CAST 25

七月中旬。

「はぁ…ほんと、昨日は怖かったわ…」

テレビ局近くのカフェで、真紀さんと水波と一緒にランチタイムと洒落混んでいた。

「ですねぇ…」

「貴方も怖がるのね…魔法師はそういうのを怖がらないって聞いたけど…」

話は必然的に共演した番組の愚痴が多くなる。

いま話しているのは昨日のホラー番組の収録についてだ。

「魔法師だって人間ですから。
よくわからない物を怖がるのは必然です」

「そういうもの?」

「ええ、まぁ」

テーブルナフキンを手に取る。

それを破いて人形にする。

「たしかに魔法師は、非魔法師から見れば万能の存在かもしれません」

"人形を操る程度の能力" "式神を操る程度の能力"

破いて作った紙を歩かせる。

「でも、基本は人間です。撃たれたり斬られれば死にますから、CADがあっても銃器や刃物は怖いです」

魔法で人形を真っ二つに切る。

「ほかの幽霊や吸血鬼も、対処できるかわからないっていう不安が恐怖を駆り立てます」

「成る程ね~。
水波ちゃんもそうなのかしら?」

無論マネージャーである水波も収録スタジオにいたのだ。

「いえ、わたしは…」

「あぁ、昨日こいつ俺のベッドの中ですっげぇ甘えてきましたよ」

ごすっ!

「黙っててください」

「水波、照れ隠しでどつくのやめようぜ…
鍛えてるからお前のやつ痛いんだよ…」

「ふふ…白夜君に甘える水波ちゃんね…
とっても微笑ましい光景ね」

「真紀様…」

その後いろいろ愚痴ってカフェを出る。

真紀さんと別れたあと、ぶらぶらしていると…

「あ…白夜だ」

「雫?」

雫とばったり会った。

「こんな所でどうしたの白夜?」

「今日は収録が午前でな。さっき共演者の人とメシ食った帰りだ。
そっちは?」

「いまから買い物…白夜もくる?」

「水波」

「はい。大丈夫かと」

「その子は?」

「俺のマネージャー」

「専属メイドです」

家内以外でメイド服着ないしそんな事言っても…

あぁ、いや、雫の家ならメイドくらい居るしそういうのもわかってるかな…

「押し掛けメイドだがな。
雫、水波も一緒でいいか?」

「いーよ」











「きゃー!本物の白夜ちゃんだー!
かわいい!テレビで見るよりちっちゃくてかわいい!」

「水波、助けろ」

「お断りします」

現在、合流した光井ほのかの抱き締められていた。

「ねぇねぇ本当に14歳なの?」

「今月七日が誕生日だからな。
間違いなく14だ」

「合法ろり…」

「雫、俺は男だ。お前の友人にも言ってやってくれ」

「男でも関係ないよ!かわいいから問題ない!」

「ジーザス」

「白夜は、性別【白夜】だから、問題無し」

「俺は男だ。俺は男だ。大事な事だから二回言ったぞ」

「哀れですね、マスター」

「Fa〇k」

「駄目だよ~白夜君。そんな汚い言葉使ったら~」

「なら俺を離せ光井、この状況がFac〇なんだよ」

「えー…」

何とか離してもらい、雫達の目的地へと向かう。

向かった先は、普通(高級店でないという意味)の店だった。

「ほー…意外だな」

「堅苦しいのは嫌いだから」

「成る程。言えてる」

時折収録で高級品を着る事があるが、確かにあの手の物は堅苦しい。

「白夜様はドレスを着る事も有りますからね。
そういった点は一般男性より鋭いでしょう」

「え?白夜ちゃんのドレス?」

やめろ反応するな。

「写真ある。みる?」

雫がポケットからスマホを取り出した。

「みる!」

「まてやこら」

雫を止めようとした瞬間、後ろから水波に抑え込まれた。

「はなせ!俺はマスターだぞ!」

「マスターの素晴らしさを説くのも従者の務め。
マスターの素晴らしさを説く事を邪魔するのを阻止するのも従者の務めです」

「物は言い様だな!」

「わぁ…すっごいきれい…」

「うっとり眺めてんじゃねーぞコラァ!」

"光を屈折させる程度の能力"

「<偽典・光歪曲迷彩-デミ・メタマテリアルオプチカルカモ>!」

雫のスマホを覆うように、光の通らないエリアを作る。

「白夜様、このような場所での魔法行使は…」

「気づかれてねぇしサイオン使ってないからセーフ」

程度の能力によってもたらされる異能は、魔法をブーストする事もできるが、サイオンを介さずに事象改変を起こす事ができる。

程度の能力で魔法をブーストした方が威力は上だが、此方は気付かれずに使う事ができる。

まぁ、程度の能力の中には物理法則をガン無視した能力もあるしな。

スキマとかはその最たる物だ。

「ふふ…白夜ちゃん。『光井』に光学系術式を挑みますか…
その勝負受けて立ちます!」

あ…『光井』って光のエレメンツじゃん…

すっかり忘れてた…

光井がCADを出そうとして…

「すとっぷ」

雫がその手を抑えた。

「白夜がどうしたかはしらないけど、こんな所で魔法を使えば普通気付かれる」

「うぅ…」

「あとでメールでおくるから」

「うん。わかった」

ええぃ、話をそらさねば…

「お前ら服買えよ。俺の写真とかどうでもいいだろ」

「ん。わかった。桜井さん白夜連れてきて」

「かしこまりました」

「おいここ女性服専門店だろうが」

「女性の服を選んで差し上げるのが良い紳士の務めですよ」

「はいはい。やりゃぁいいんだろ…」

「「「(チョロい)」」」



店の中に入ると、色とりどりの服があり、服に合わせた靴等もあった。

ただ季節が季節なだけに水着とかも置いてあって居心地が悪い。

「ご主人様」

と水波が耳打ちした。

水波が『ご主人様』と呼ぶ時は大抵俺をからかう時だ。

「ここは女になっておいた方がよいのでは?」

ふむ…

「しかしタイミングがな…」

すると水波は嬉そーな顔をした。

「白夜様、此方の服を試着していただけませんか?」

と白いワンピースを差し出した。

「それが本音か」

「いえいえ建前でございます。主へ切欠を与える建前でしかございません」

嬉そーだなー…

仕方ないのでワンピースをひったくって試着室に入る。

"なんでもひっくり返す程度の能力"

性別をひっくり返して女になる。

で、だ…

「着ない訳にはいかんよなぁ…」

仕方なく今着てる服を脱ぎ、ワンピースを着る。

「我ながら似合うのがなぁ…」

腰まで伸ばした赤髪のポニーテールが白いワンピースに映える。

「水波、着替えたぞ」

シャッと試着室のカーテンを開けるとパシャパシャとフラッシュが焚かれた。

水波、雫、光井、それに加え店員までも…

水波が俺の着ていた服をシュパパっと回収してワンピースの値札を鋏で切った。

「なにしてんの?」

「そのワンピースは既に購入済みです。ご安心を」

「いやなにしてんの!?」

「ま…極夜様から頂いた資金で会計しましたので御安心を」

「むしろできない」

俺に付いてる護衛とか、今俺が住んでる家の地下施設の工事とか、色々してもらってる。

真夜さんと四葉深夜を治療したけど、こんなにしてもらうのは気が引ける。

「白夜様お気持ちはわかりますが、極夜様にはこの写真を送ります。
きっと御満足されるでしょう」

「えー…」

水波が持っていたハンドバッグに俺の服を詰め込む。

「待て、何故バッグに入れる」

「お分かりでしょう?」

んのやろう…

「まぁ…いいや…今の俺は」

女だから、と言おうとして口をつぐむ。

ここには雫と光井もいるのだ。

「きょ、今日は女子が多いし、こっちの方が自然だろ」

「はい。白夜様の仰る事はごもっともです」



その後三人は服を一着も買わずにその店を後にした。

「おい」

「なに?白夜」

「お前、なんで買わないんだよ」

「なんでって…今日は白夜を見かけてから白夜を着せ替え人形にするって決めたから。
自分のはもう買ってあるし」

「ジーザス…」

着せ替え人形って…お前…

「白夜様。ここはもう開き直っては?」

うん。水波の言うとおりだね。

もう開き直ってオシャレした方が楽かもしれない。

「さ、次のお店行くよ」

「は?」

「安心して。お金は私が出す」

「おまえはなにをいっているんだ」

「桜井さん、白夜連れてきて」

「かしこまりました」




そのあと十数は店を廻った気がする。

とてつもなく疲れた。

二人と別れ、家に帰る頃にはへとへとだった。

「白夜様。お疲れですか?」

「うん…」

「では夕食の支度をしますのでソファーで横になっていてください」

「うん…」

side out






ソファーに横になり寝息をたてる白夜。

ワンピースの裾からハリのある太ももが延びていた。

元が男である白夜は、体を女にしていてもガードが緩い。

水波は今日買った買い物の入ったバッグを持ってきた。

そして、一枚の布を取り出す。

そのあと、白夜のワンピースの裾に手を入れる。

その中のトランクスを、白夜が起きないよう慎重に脱がせる。

「ふふ、白夜様はパンツだけは絶対に男物ですからね…」

スルリとトランクスを脱がせると、今度はバッグから取り出した布切れを…パンティを履かせる。

「これでよし…」

水波は今の白夜にこれ以上の悪戯をしたい気持ちを抑え、カメラを取り出す。

まず白夜の全身が写るように撮る。

音もフラッシュも出ない。

四葉が黒羽の任務…非合法な資料収集等の為に作り上げた超々高性能カメラである。

次に顔のアップを。

バストショットを。

そして最後。

彼女は白夜のワンピースの裾を捲り…

「これでよし…。
真夜様の知らない。私だけの白夜様…」

四葉真夜への忠誠を失った訳ではない。

だが、桜井水波という一人の女として、彼女は白夜を好いていた。

「さて、夕食を作らなければ」

白夜のトランクスとカメラをバッグに詰め込み、彼女はソファーから離れて行った。 
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