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おぢばにおかえり

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19部分:第四話 大学の中でその二


第四話 大学の中でその二

「どうして新一君が苦労するの?私が困ってるのに」
「ああ、気付かないならいいわ」
 完全に呆れた顔で話を打ち切ってきました。
「それはそれで」
「そうなの」
「で、お化粧はしてるわね」
 一応は。メイクは薄めが好きですけれど。
「感心感心。髪も服もきちんとしてるし」
「コロンもね」
「コロンは別に」
 つけてないです。毎日お風呂に入ってるだけで。それで充分ですよね。
「つけてないけれど」
「じゃあはいっ」
「きゃっ」
 いきなり友達の一人が霧吹きに入れた香水をかけてきました。
「これでいいわね」
「ローズ!?」
「そうよ、薔薇よ」
 香水をかけた友達がにこりと笑って私に告げました。
「これで武装完了」
「後は相手をノックアウトするだけね」
「ノックアウトね」
 それを聞いて急に私の中で物騒な気持ちが沸きました。
「是非そうしたいわ」
「こらこら」
 そう言ったらすぐに怒られました。
「そんなこと言わない」
「おみちの人でしょ」
「それはそうだけれど」
 それでもなんです。新一君に関しては。
「それにね。ちっち」
「何?」
 話が微妙に変わってきた感じがしました。
「ノックアウトするならね」
「ええ」
「拳じゃないのよ」
 そう言ってきました。
「拳じゃないって?じゃあ何で?」
「女の子でしょ、あんたも」
 今更って言葉でした。言うまでもないことです。
「そうだけれど」
「じゃあ答えは出てるじゃない」
「!?」
 その言葉に首を傾げます。
「答えが出てるの!?」
「そうよ。女の子じゃない」
 友達は楽しそうに笑って私に言います。けれどそれがどうしてなのかさえ私にはわかりません。
「だからよ。女の子のやり方で」
「どうするの?」
「そこは勉強」
 ここで突き放されました。よくわからないまま。
「自分で考えなさい」
「もっともちっちに関しては阿波野君限定でそんな必要ないでしょうけれど」
「余計わからないんだけれど」
 本当に。何で新一君限定なのか全然わかりません。そもそも皆が私に何を言いたいのかさえさっぱりわからないです。何なんでしょう。
「何が何なのか」
「それがわかるのも勉強」
「いいわね」
「そうなの」
「わからないでも行くっ」
 いきなり急かされました。
「多分新一君待ってるわよ」
「だから」
「だからってもう?」
 まだ少し早いです。それであの時間にルーズな新一君が待ってるなんて。そんなことないでしょって言おうと思ったらまた言われてしまいました。
「絶対待ってるから」
「ねえ」
 皆で言います。
「だからちっちも急ぐ」
「折角のデートなんだしね」
「デートって」
 また口を尖らせてしまいました。
「そんなの。私は」
「いいから来るっ」
「さもないと怖いわよ」
「わかったから」
 手まで掴まれました。こうなっては反論も何もありません。私は本当に仕方なく新一君のところに向かいました。本当に仕方なくですから。そこは誤解しないで下さいね。
 
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