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英雄伝説~西風の絶剣~

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第38話 絶剣と妖精の再会

side:リィン


 皆、久しぶりだな。リートことリィンだ。俺は今ロレントから定期船に乗り王都グランセルに向かいそこからルーアン行きの定期船に乗り換えたところだ。どうして俺がルーアンに向かっているのかというと一週間前に来た連絡が関係している。その事を少し振り返ってみようか。



ーーーーー 今から一週間前 -----


「ふあぁぁ……平和だな」


 ロレント支部の前の道を箒で掃きながら暖かな日差しを受けてついあくびをしてしまった。オリビエさんに振り回されてばかりだが偶にはこう平和な時があってもいいよね。


「リ、リート君!」


 俺がぼんやりとしてるとアイナさんがギルドから慌てた様子で出てきた。


「アイナさん、どうかしましたか?またオリビエさんがトラブルでも起こしたんですか?」
「いえ、今日はそう言った報告はないわね……ってそうじゃなくて!」
「じゃあどうしたんですか?」
「あなたの妹さんがルーアンで見つかったのよ!」
「えっ……」


 俺は持っていた箒を離してしまうほど驚いてしまった。


「ほ、本当ですか!?フィー……じゃなくてフィルが見つかったっていうのは!?」
「え、ええ……さっきルーアン支部から発見されたって報告があったの。妹さんは孤児院でお世話になっていたそうよ」
「そうですか、良かった……」


 俺はアイナさんの報告を聞いて心から安堵した。良かった、フィーはルーアンにいたんだな……


「それでフィルはこっちに来るんですか?」
「それがね……」


 俺はフィーが直にロレントへ来るんじゃないかと思ったがアイナさんは複雑そうな顔をした。話によるとフィーがお世話になったという孤児院が何者かに放火されたらしくフィーもその犯人と思わしき者に負傷させられたとのことだ。


「俺の大事な妹に傷を……?」
「ちょ、リート君?何だか怖いオーラが溢れてるんだけど……」
「あ、すいません。つい無意識に……でもそれなら猶更ルーアンに残るのは危険なんじゃないですか?犯人が再びフィルを襲うかもしれないし」
「ルーアン支部を預かっているジャンも彼女にはそう話したみたいなんだけどお世話になった人たちが危ない目にあったのに自分だけが安全な所に行くのは駄目だって言うらしいの。せめて放火事件の犯人が捕まるまではこっちにはこれないって……」


 なるほど、優しいフィーの事だ。自分が世話になった人たちを置いてはこっちにはこれないって思ったんだろう。正直直に会いたいがフィーの気持ちを考えると強くは言えないな。俺がフィーも立場だったらそうしただろうしね。


「じゃあ俺が向こうに行くのは駄目ですか?せめて妹の傍にいてあげたいんですが……」
「……リート君?まさかあなた、放火事件の犯人を捜すつもりじゃないでしょうね?」
「思う事はありますが聞けばエステルさんたちが事件の調査に関わっているんですよね?なら俺はエステルさんたちに任せておくつもりです。事件に関わるつもりはないですし俺はただ妹の傍にいてやりたいんです、駄目でしょうか……?」


 俺がジッとアイナさんを見つめるとアイナさんははぁ~っとため息をついて微笑んだ。


「……全くあなたって子は。まあ自分の家族が事件に巻き込まれて気にならない人はいないだろうし……分かったわ。私が話を付けておくわ」
「アイナさん、ありがとうございます!!」
「ただし絶対に自分から事件に介入しないことが条件よ。前だって空賊事件に介入したって聞いたときは心配したんだから……」


 アイナさんは俺の頭を撫でながら心配するように俺を見つめていた。前は約束を破ってしまったから今回こそはアイナさんを心配させないように彼女の約束を守ろうと思った。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 ……とまあこんな感じで俺がルーアンに向かう事になったんだ。アイナさんには本当に恩ばかり作ってしまっている、どれだけ感謝しても足りないくらいだ。


「いやぁ、ルーアンといえば新鮮な海の幸が美味しいって聞くし楽しみだね。君もそう思わないかい?」


 ……ただ一つ不満があるとすれば何でオリビエさんまで一緒に来ているかだ。朝に定期船に乗ろうとしたら受付の所で俺を待っていたらしい。


「何でオリビエさんまでついてきてるんですか?」
「だって最近はシェラ君も忙しくて構ってくれないしロレントの料理も満喫したからね。そろそろ違う都市に行こうって思ってたのさ」
「じゃあ先にグランセルかツァイスに行ってくださいよ。態々一緒についてこなくてもいいじゃないですか」
「そりゃリート君が恋しがる妹さんを見たかったからに決まってるじゃないか」
「言っておきますけどフィルに何かしようとしたら真っ二つにしますよ?」


 俺はカチャリと太刀を鳴らして見せるとオリビエさんは顔を青くして「そんなことはしないさ……あっはっは……」と苦笑いを浮かべていた。やっぱり何かちょっかいをかけようとしていたな、この人。


『乗客の皆様。まもなくルーアン市にご到着いたします。忘れ物のないようにお気をつけて定期船から降りてください』


 おっと、もうすぐ着くのか。いよいよフィルに会えるんだな、何だか緊張してきた。


 定期船を降りた俺はしつこく付いてくるオリビエさんを連れて遊撃士協会のギルドに向かった。ギルドの中に入ると眼鏡をかけた男性がいたので話しかける。


「こんにちは」
「おや、どうかしたのかい?」
「僕はロレント支部から来たリートという者です。あなたがジャンさんですか?」
「ああ、君がリート君だね?うん、僕がルーアン支部を預かっている責任者のジャンだ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」


 俺はジャンさんに挨拶をしてから早速フィーについて尋ねた。


「それで俺の妹の事なんですが……」
「君の妹さんはルーアンから少し離れた場所にあるマノリア村にいるよ。そこまでの案内はカルナに任せてあるから彼女と一緒に向かってくれ」


 ジャンさんは二階から降りてきた女性に視線を移して彼女に相槌を送る。その女性はそれを受けて自分も首を縦に振り俺に手を差し伸べてきた。


「あたしは遊撃士のカルナだ。マノリア村までの護衛をさせてもらう。よろしくな」
「リートです。よろしくお願いします、カルナさん」


 俺はカルナさんと握手をして自己紹介を済ませた。


「さて、話も終わったようだし早速マノリア村に向かおうじゃないか。それにしてもリート君の妹さんかー、楽しみだなぁ」
「……そこの男性は知り合いか?」
「……一応知り合いなので大丈夫です。一応は」



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 俺はアイナさんとオリビエさんと一緒にメーヴェ海道を渡っていた。途中で魔獣に何回か襲われたが問題なく対処することができた。


「そうか、あんたたちがエステルたちと一緒に空賊事件を解決した民間協力者だったのか」
「エステルさん達の事を知っているんですか?」
「ああ、仕事もしっかりこなしているし期待できる新人だと思うよ。今はジェニス王立学園の学園祭の手伝いに言ってると聞いたね」


 あれ?エステルさん達は放火事件を調査しているって聞いたけど違ったのかな?


「学園祭?興味深い話だね。それはいつ行われるんだい?」
「丁度明日だよ。良かったら行ってみたらどうだい?その日はあたしが学園の警護に当たるからもしかしたら会えるかもしれないしね」
「そうだったんですか?じゃあお忙しいかもしれないのに護衛なんてさせてしまって申し訳ありません」
「構わないよ。これも遊撃士の仕事だからね。……っとそろそろマノリア村に着くよ」


 カルナさんと話をしているとマノリア村の入り口にたどり着いたようだ。


「孤児院に住んでいた人たちは今は『白の木蓮寧』という宿酒場の二階に住まわせてもらっているんだ。フィルって子もそこにいるはずだ」
「ここまで連れてきて頂いてありがとうございました。カルナさん」
「気にしなくていいよ。早く妹さんに顔を見せて安心させてやりな」


 カルナさんは他に仕事があるらしく急いでルーアンに戻っていった。忙しい中で護衛をさせてしまって悪いことをしてしまった。


「ほらほら、リート君。今は一刻も早く妹さんに会いに行ってあげるべきじゃないかな?カルナ君にお礼を言いに行くのはその後でもできるしね」
「オリビエさん……そうですね。今はフィルに会いに行きましょう」


 俺はオリビエさんにそう言われて気持ちを切り替えてカルナさんが話していた白の木蓮寧に行き店を運営している人に事情を話した。既に遊撃士協会から連絡を受けていたらしくすんなりと二階へ案内してもらえた。因みにオリビエさんは気を使ってくれたのか一階で待っていると言い料理を頼んでいた。


「ここにフィルが……」


 俺は孤児院に住んでいる人たちが使っているという部屋の扉をノックする。


「はい、どうぞ」
「失礼します」


 俺は扉を開けて中に入る。部屋の中には若い女性がベットに座っていた。


「あら、あなた方は……?」
「はじめまして。俺はリートと言います。俺の妹が孤児院で世話になったと聞いて今日こうして来たんですがあなたが院長先生ですか?」
「まあ、じゃああなたがフィルさんの……はじめまして、私はテレサと言います。フィルさんからあなたの事は聞いていました」
「テレサさん、フィルを保護して頂いた上に世話までしてもらって……本当にありがとうございました」


 俺はテレサさんに頭を下げるとテレサさんは顔を上げてくださいと言った。


「私の方こそフィルさんには色々助けていただきましたし気にしないでください」
「テレサさん……」


 なんと心の広い人だろうか。俺はフィーを保護してくれたのがこの人で本当に良かったと思った。


「そういえばフィルはここにはいないんですか?」
「フィルさんは子供たちと遊んでくれています。怪我もよくなってきましたし子供たちも放火事件が起きて不安に思ってるから自分が出来ることをしたいと……」
「そうですか、フィルらしいですね」


 怪我も大したことが無かったようで良かったよ。俺がそう思っているとテレサさんが微笑みながら窓から外の風景を見ていた。


「そういえば孤児院が放火事件にあったと聞きました。心中お察しします」
「……ありがとうございます」
「俺とフィルの父は何でも屋をやっていてある程度ミラがあります。今回の事を話せばきっと力になってくれると思いますがどうでしょうか?」
「お気持ちは有り難く受け取らせて頂きます。しかしあなた方にそんなご迷惑はお掛けできません。これは私たちの問題ですから……」
「しかしそれではあなた達に対して何もお礼が出来ていません。父もきっとそう言うでしょう」
「……ならひとつだけお願いをしてもいいでしょうか?」
「なんでしょうか?」


 俺が訪ねるとテレサさんはジッと俺を見てきた。


「フィルさんが来てくださってから孤児院は賑やかになりました。面倒見もいいし子供たちもすっかり懐いてしまって……もう家族と言ってもおかしくないほどです」
「テレサさん……」
「あなた方の事情は分かりませんが人には言えない仕事をしていらっしゃるんですよね。それとなくフィルさんやあなたの様子を見ていたら感づきました。孤児院をやってると多く人と会いますから何となく分かってしまうんですよね」
「……」


 俺はあえて何でも屋と言ったがこの人は俺とフィルが猟兵だという事を無意識に感づいたのか?



「それをふまえて無茶なことを言わせて頂いてもよろしいですか?」
「……なんでしょうか?」
「フィルさんをまた子供たちに会わせてあげてくださいませんか?」


 俺はそれを聞いて悩んだ。俺たちは猟兵だ、本来リベール王国には猟兵は簡単には入国できないし今回のケースだって来たくて来た訳じゃない。
 だからカシウスさんが帰ってきてこの国から去ったら余程の事がない限りここに来ることはないだろう。


「……分かりました。必ずここにフィルがまた顔を出せるようにします」


 だが俺はテレサさんの頼みを聞き入れた。難しい問題なのは確かだ、でも俺はこの人の願いを叶えたいと強く思った。フィーだってそれを望んでいるはずだ。


「それと俺の本当の名はリィンです。フィルはフィーと言います。あなただけには伝えておきたかったので……」
「……ありがとうございます、リィンさん」


 俺はそう言うとテレサさんと握手を交わした。その時俺たちがいる部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。


「テレサ先生、ただいまー!あれ、そいつ誰?」
「もうクラムったらお客さんに対して失礼でしょう!ごめんなさい、この子ちょっと口が悪くて……」


 どうやら孤児院に住む子供たちが帰ってきたようだ。帽子の男の子に緑髪の女の子が注意をしていた。


「お腹すいたねー。今日の夕食はなんだろう?」
「私、フィルお姉ちゃんのシチューが食べたーい!」
「ん、なら後で厨房を借りよっか……!?」


 後から入ってきた呑気そうな男の子と、元気がありそうな金髪の女の子に手を引かれながら入ってきた銀髪の少女を見て俺は心が震えた。少女も俺を見て目を見開いていた。


「リィ……リート?」
「……会いに来るのが遅くなってしまって済まなかったな。フィル」
「っ!リート!!」


 感極まったのか銀髪の少女……フィーは涙を流しながら俺に飛び込んできた。俺はそれを受け止めて頭を撫でた。


「会いたかった……ずっと会いたかったよ、リート……」
「俺もだ。ずっと会いたかった……無事で本当に良かったよ。フィル」
「リート……」


 今まで我慢していたんだろうかフィーは俺の胸の中でクスンと涙を流していた。きっと俺に会った事で張りつめていた糸が切れてしまったんだろう。俺は無言でフィーの頭をポンポンと撫でていると不意に足に鈍い痛みが走り見てみると帽子を被った男の子が俺を睨んでいた。


「おい!何フィルを泣かせてんだよ!」
「あ、いやこれは……」
「さてはお前が孤児院を焼いた犯人だな!フィルから離れろ!こいつ!!」


 ドカドカと俺の足を蹴ってくる男の子に俺はどうしたらいいか困惑した。この男の子は純粋にフィーの事を心配しているから怒れないしどうも興奮しているからか説明しようとしても話を聞いてくれない。


「ちょ、ちょっと!止めなさいよ、クラム!」
「止めんなよ!マリィ!俺がこいつを成敗してやるんだからな!!」
「もし本当に放火した犯人だったらフィルお姉ちゃんが抱き着いたりしないでしょ?この人はお姉ちゃんが話していたお兄さんだよ」
「クラム、その人は正真正銘のフィルさんのお兄さんです。急に蹴ったりするとはどういうことですか!」
「うえっ!?オ、オイラてっきり……」


 どうやら落ち着いてくれたようだ。俺はクラムと呼ばれた男の子の前に跪くと目線を合わせる。


「君はクラム君っていうんだね?」
「だ、だったら何だよ……」
「俺の妹が世話になったようだな。色々とありがとう」


 俺は握手を求めて右手を差し出すがクラムはバシッと右手を弾いた。


「何がありがとうだ!フィルが危ない時にいなかったくせに兄貴ぶるなよな!」
「こら!クラム!あなた、何てことを……」
「ふんだ!オイラ絶対にそいつを認めたりしないからな―――――!!」


 クラムはそう言うとダッと部屋を出て走り去っていった。


「リートさん、ごめんなさい。クラムが失礼な事を……」
「いえ、気にしないでください。彼の言う通り俺は妹が危ない時に傍にいなかったんです、今更ノコノコと現れて兄貴面されても納得できないでしょう」


 頭を下げるテレサさんに俺は構わないと言う。あの子が言っていたことは間違ってないしそれにあのクラムって子はもしかしたらフィーに気があるのかもしれない、微笑ましい物だな。


「でもフィルお姉ちゃんのお兄さんが来たって事はお姉ちゃんここからいなくなっちゃうの?そんなのヤダよー!」
「ポーリィ、それは……」


 金髪の女の子がイヤイヤと首を振りながらフィルにしがみついた。


「リート、その……」
「大丈夫だ、フィル。放火事件の犯人が捕まるまではここにいてもいいという話になっている。本来なら褒められた行動じゃないが俺もフィルと同じ状況だったらそうしていただろうし気にしなくてもいい。俺が来たからにはお前もその大切な人たちも守って見せる」
「リート、ありがとう……」


 フィルは嬉しそうに微笑んだ。


「よし!リート君と妹さんの感動の再会を記念してここは僕が一曲披露しようじゃないか!」
「オリビエさん、いつの間にいたんですか?」


 部屋の出入り口にいつ来たのかオリビエさんがリュートを手に持ちながら立っていた。


「リート、この人は誰?」
「初めまして、リート君の妹さん。僕はオリビエ、リート君とは一晩を共に過ごした深い中なのさ」
「……リート?何したの?」
「いやいや何もないぞ!?」


 ジト目で睨んでくるフィーに俺は慌てながら説明した。


「……ふーん、そんなことがあったんだ」
「分かってくれたか?」
「ん。てっきりリートがBLに目覚めたんだと思っちゃった」
「……どこでそんな言葉を覚えたんだ?」
「ゼノがリートが彼女を作らないのはホモだからじゃないかって言ってた」


 なるほど。ゼノとは帰ったら話し合い(肉体的)が必要なようだ。




ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「ふう、腹いっぱいだ……」
「オリビエも太っ腹だね。全員分の食事代を出してくれるなんてね」


 フィーと再会した後はオリビエさんがお祝いとして食事会を開いてくれた。孤児院の人たち全員の分も合わせて出してくれたんだがどこにそんなミラを持っていたんだ?


「……ふふっ」
「うん?どうかしたのか、フィー?」
「ううん。リィンにもお友達が出来たんだなって思ったの」
「オリビエさんが?友達っていうか悪友というか……まあいい人なのは確かだと思うけどそれが霞むくらい癖が強すぎるんだよな」
「でもオリビエと話すときのリィンはとっても楽しそうだよ」
「そうか?いや、そうなのかもな」


 今は二人きりなのでお互いの名前を呼びあっている。するとフィーは俺の首に両手を回して頬と頬を合わせてきた。


「んう……リィン……」
「なんだ?今日はやけに甘えてくるな?」
「だって久しぶりに会えたんだよ?ずっと会いたかったんだから……」


 暫くフィーにされるがままになっていたが俺はフィーの怪我を見て顔を顰めた。


「……怪我は大丈夫なのか?」
「うん。見た目ほどひどくはないよ。教会で薬ももらったし安静にしてたら良くなるって」
「そうか……フィーに傷をつけたのはどんな奴だったんだ?」
「仮面を付けた人物だったけど多分体格からして男だと思う。でも実力は凄かった、まるで団長や光の剣匠と対峙しているみたいだった」
「フィーにそこまで言わせるとはな。一体何者なんだ?」


 俺はフィーを傷つけた人物について考えていたが、フィーはそんな俺を見て心配そうにしていた。


「リィン、もしかしてその犯人を追うつもりじゃないよね?」
「ん?ああ、俺も君を傷つけられた事には憤りを感じているが残念ながらそれはできないんだ。アイナさんと約束したからな」


 俺がここに来たのはフィーや孤児院の人たちにその犯人たちが再び襲い掛かってこないように守るためだ。でもフィーは俺の話を聞いて今度は不機嫌そうな顔をしていた。


「アイナって誰?」
「アイナさんは俺が保護された遊撃士協会のロレント支部を仕切っている人だ。それがどうかしたのか?」
「……女の人だよね?」
「ああ、そうだよ」
「ふーん。他にも出会った女の人とかいるの?」
「他に出会ったといえばエステルさん達と同じ遊撃士のシェラザードさんにボースの市長であるメイベルさんにそのメイドのリラさん……後はルーアンに来て出会ったカルナさんとかかな?」
「……」


 な、なんだ?フィーの機嫌がどんどん悪くなっていっているんだが……?


「私がリィンを心配していた時に、リィンは美人のお姉さんたちと仲良くしていたんだ」
「フ、フィーさん?それはちょっと違うような気がするんですが……」
「ふんだ、リィンのバカ」


 その後俺は不機嫌になったフィーの機嫌を直すため、抱っこして頭を撫でた後一緒のベットで寝ることになった。でもなんで不機嫌になったんだろうな?

 
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