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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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りざると

ベルは硬い床に正座させられていた。

「……………………」

ギルドの指導室に沈黙が流れる。

「君はどぉーしてこう…」

ベル目の前にはエイナがニッコリ微笑んでいる。

ただ目が据わってるとだけ追記しておく。

「いや、その、ですね…」

「ベート氏に挑発された結果レベル1で15階層まで潜ったと?」

「カッとなってやりました。
反省はしてます後悔はしてません」

「は?」

「ぴぃ!?」

エイナの睨みに、ベルが首を竦める。

その小動物のようなリアクションに、エイナは毒気を抜かれてしまう。

「ヴァレンシュタイン氏、彼の監督はキツく御願いしますよ」

「わかってる。もう目を離さない」

この場に居るのはベル、アイズ、エイナの三人だけだ。

「…次は無いわよベル君」

「はいぃぃ…」

ベルの正面に座るエイナが、今度は数枚の紙を取り出した。

「はい、じゃぁソファーにすわって」

「な、なんでせうか」

「倒したモンスターの種類とおおよその数を書きなさい」

ベルがテーブルを挟みエイナの向かい側、アイズの隣に座る。

「あんまり覚えてないっていうか、その、必死だったので…」

「覚えてる範囲でいいよ」

「じゃ、じゃぁ覚えてるはんいで…」

ベルが渡された『万年筆』で用紙に書き込む。

「エイナさん、ちょっと気になったんで聞いていいですか?」

「何かな?」

「すごく関係無いんですけど、『万年筆』っていつからあるんですか?」

万年筆は1800年代前半に考案され、1800年代後半に実用化された文具だ。

少なくともベルの知識ではそうなっている。

「神々がもたらした利器って言われてるよ」

「なるほど…」

「で、ベル君」

「はい」

「話をそらせば今書いたキラーアント百匹(最低)っていうのを見逃すと思ったのかな?」

ベルがビクッと体を震わせる。

「いえ、15階層まで潜ればそのくらいは…」

「話は後で聞くよ。手を動かしなさい手を」

「(こわぃ…アイズさんは…助けてくれそうにないな…)」

観念したベルはサラサラとモンスターの種族と撃破数を『覚えている範囲で』書き込む。

欄が埋まっていくにつれ、エイナの表情が険しくなる。

そして最後に『ヘルハウンド 50匹(最低) シルバーバック 交戦 敗北』と書いた。

「以上ですっ…!」

モンスターとの交戦数、締めて550(最低)。

そこへ、横からアイズが除き込む。

「(…!? あ、アイズさんの胸が…!?)」

二人の身長差もあって、アイズの胸がベルの肩に押し付けられる。

「ベルの撃破数、最低でも750くらいのはず」

「な、なんでですかアイズさん?」

体をアイズから極力離そうと上体を傾けながら、問い掛けた。

「ベルが倒したモンスターの魔石、私達が集められるだけ集めたから」

実際は魔石を砕いて倒した物もあるので更に増える。

「なるほど…懸念事項が一つ消えました」

「大丈夫、それほど手間じゃなかったから」

疑問を浮かべているベルに、エイナが説明した。

「モンスターはね、魔石を食べると格が上がるの。
そういうモンスターは強化種って言って物凄くあぶないんだよ」

「へ、へー…」

「ベル君は将来大物になるね。
自分のファミリアの幹部にサポーターをやらせるなんて」

「サポーター?」

「非戦闘員の荷物持ちの事だよ」

ベルがアイズに気まずそうな視線を向ける。

「やったのはほぼベートだし気にしなくていいよ」

「ますます気まずい…」

とベルが呟く。

「ベルはベートみたいな人がすきなの?」

「なんでですか?」

「昨日ベートの尻尾触ってたから」

「もふもふは好きですよ」

「こんど私もさわってみようかな…」

そこへエイナの手がにゅっと伸びた。

「いふぁいれふえいなふぁん」

ベルの頬がうにょーんと伸びる。

「話をそらさない」

「ふぁい…」

にょーん…にょーん…にょーん…

「あにょ…いらいれふ…」

にょーん…にょーん…

エイナが片方の手で自分の頬を触り…

「ま、まけた…!?」

「なにがれふか」

「なんでもないわ…」

エイナが手を離し、ベルが自分の頬をさする。

「いたい…」

それに構わず、エイナが紙に目を通す。

そして、深いため息をついた。

「ロキファミリアに私から個人依頼です。
ベル君の面倒をきちんと見てください」

拘束力を持たない依頼。

だがそれは、ボロボロになったベルを知るアイズの心を縛り付けた。

「ヴァレンシュタイン氏。貴方はさっきベル君が倒したモンスターの魔石を集めていると言いましたよね?
その魔石は換金しましたか?」

「お金はリヴェリアがもってる」

「わかりました…」

エイナが少し考え込み…

「ベル君、ヴァレンシュタイン氏」

「なんですか?」

「………なに?」

「明日時間は有りますか?」

ベルとアイズが目を見合わせる。

「明日は、リヴェリアがベルに勉強を教えるって言ってたけど、たぶん昼には終わる…と思う」

「わかりました…では明日ベル君の装備を買いに行きましょう」
 
 

 
後書き
ベルはやらかす度にリヴェリアとエイナからお説教です。 
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