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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と入学編
  NO.003 修行と日常生活の苦難(前篇)

 
前書き
今日三度目の更新。 

 



『君はヒーローになれる!!』

そう言われた時の出久の気持ちといったらそれはもう計り知れないものがあった。
さらにはオールマイトの力を継ぐことが出来る事に対しても高揚感のようなものを感じていた。
だけど、それとは別にしてオールマイトは悩んでいた。

「しかし……雄英入試まで約10カ月。それまでに君の身体を仕上げないといけないが、まずは日常生活にも慣れないといけないからな」
「どういう事ですか……?」
「そうだね。君はまだそんなに自覚はないだろうけど今までの男性の暮らしをしてきたから仕方がないが、今日からは女性として暮らしていかないといけない」
「あっ……」

オールマイトの言い分は分かる。
身体が個性の影響で性転換してしまったせいで日常生活に支障を来すことは大いに考えられる。
最悪心が身体を拒絶をしてしまい碌に動けなくなってしまいかねないからだ。

「さて、どうしたものか……」

ふむぅ……と顎を擦りながら悩みだすオールマイトに出久も他に頼る当てがない以上はただ見守る事しかできないでいた。
やがてオールマイトは一つの決断をした。

「そうだな。期限も限られてくるから荒治療で仕方がないけど生活面では君のお母さんに任せるしかないだろうな」
「母さんに……?」
「そうだ。何事も一番君を理解しているのは母親なのではないかね?」
「まぁ、そうですね……」
「だから私との修行の間、並行して君の母親から女性としての暮らし方をレクチャーしてもらいなさい。実を言うと子育てをした事がないから私ではそっち方面は教えることが出来ないからね!」

HAHAHA!と誤魔化すように笑うオールマイト。
だけどそれなら仕方がないと出久も割り切った。

「とにかくこれから大変な修行になるけど覚悟はあるかね?」
「あります! 頑張らせてください!」
「よろしい。それではまずは明日一日で親に女性としてのレクチャーを受けたのちの明後日に海浜公園で君を待っているよ」
「はい!」



それで一旦はオールマイトと別れた出久だった。
そして家に帰るなり今日の出来事を母に相談してみたところ、

「そっかー……。よかったね出久。女の子になっちゃったのは仕方がないけどこれであなたのヒーローの道が開けたんだね!」

思いの外簡単に出久の状態を受け入れられてしまい出久は思わず拍子抜けしてしまった。

「その……母さんは僕の事が気持ち悪くないの……?」
「何を言うかと思えば……バカねぇ。自分の子供を嫌う親がいるものですか。それよりこれからが大変だよ出久。残り少ない中学生の間は仕方がないけど高校に入るまでには女子の仕草とか制服とかにも慣れないといけないからね」
「うっ……それもそうだね」
「出久が言うには明後日から個性の使い方を必死に勉強するんでしょ?」
「うん。早く慣れないといけないからね!」
「だったら明日は一日女子としての行動を勉強しないとね! 頑張りなよ出久!」
「わ、わかった……その、頑張る!」

出久は苦笑いを浮かべながらも答えた。

「あ、でも言葉使いは出久は優しい子だから直さなくてもいいからね? 今更無理そうだしね」
「だよね。あはは……」

出久の想像の中では女言葉を使う自身を想像して思わず目を逸らしたい気持ちになった。
女の子になったってだけで黒歴史なのにこれ以上の恥辱は勘弁である。







翌日になって出久は引子から女性としてのレクチャーを教わった。
トイレの仕方や生理用品などの使い方、ブラなどの使い方など……。
ただでさえ女性との接触が母親以外に今まで碌になかった出久には未知の世界が過ぎた行いだった。
女体化したというのが神秘的なのは分かるけど胸も基準以上に大きくなったのだからブラをしないと擦れて痛い。
出久は一日で詰め込むかのように女性としての知識を学んでいった。
もともと学習肌なのも幸いしてなんとか基本的な事は学んだ出久は、もうすでに精神的に疲れた顔をしながらも翌日に海浜公園へと足を運んでいた。
ちなみに引子は学校や役所に性別の書き換え申請を行いに行ってしまった。
もう、男には戻れないと静かに涙を流した出久であった。

「やぁ元少年!」

海浜公園に来てみればそこには案の定オールマイトの姿があった。

「オールマイト……」
「どうしたんだね元少年。その、一日の間にあらゆる苦痛を味わった様な暗い顔は? 可愛い顔が台無しだぞ」

オールマイトに可愛いと言われてもいまいちピンと来なかった出久。
それより気を紛らわすかのようにオールマイトに修行内容を聞くことにした。

「そうだね。まずは君の体作りもしないといけないけど、女性になった事で筋力も落ちている事だろうしこれは大変な作業になるぞ!」
「そうですね」

実際、女性になった事で筋力が落ちたのは言いようもない事実である。
そこも今後の成長課題である。

「そして君のその個性も鍛えないといけないからね。何分異形種など教えたことがないからそこら辺は独学になってしまうだろうが……」
「そこら辺はなんとか大丈夫です! 昨日のうちに個性を発動してみてどういうものかは何となく理解しましたから」
「ほう……ちなみにどんな力があったんだね?」
「はい。今のところ把握しているのは猫の爪の伸縮自在や硬化によって鉄を引き裂くくらいには強化出来ました。
次に身体能力……主に脚力の強化。高速移動に加えて昨日試しに飛んでみたら四階建てのビルの屋上まで飛んじゃいました。
他には人より優れている目、耳、鼻などの五感の強化……。特に猫の特性なのか物音に敏感になって暗闇の中も夜目が働いてそつなく移動することが出来ました。
それに驚く事に……」
「驚く事に?」

出久は一回オールマイトから目を外して、ちょうど近くにいた野生の猫を手招きして、なんとニャンニャンと猫の様な声を出していた。
すると猫の方も出久の言葉に反応してか同じように声を出している。
しばらくして、

「という感じで猫の言葉が分かるようになりました」
「そ、そうか……ちなみにさっきの猫はなんて?」
「『オールマイトの秘密をゲット、ヒャッハー!』とか叫んでいました」
「待ちなさい!」

オールマイトは焦った。
動物とはいえ自身の秘密を知られるのは看過できないからだ。

「あ、大丈夫です。ちゃんとバレない様にとキツく言及しておきましたから」
「それなら、まぁ……安心なのかな? だがたった一日でそれだけ把握できているとはやるな元少年」
「まぁ、今までのヒーローノートとかで動物種とかのデータの下積みとかもありましたからなんとか……」

あははー……と何事もないように笑う出久を見て、内心オールマイトは戦慄していた。
結構強力な個性じゃないか、と。
これにワン・フォー・オールが加わったらどう化けるか見物である。
とにかくその日から出久とオールマイトによる修行(ゴミ片付けによる肉体作り)が始まったのであった。


 
 

 
後書き
なんとか三話まで書けました。
キリが良いところまで書けたらなと。 
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