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甘未公方

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第四章

「あれも食える様になったな」
「あれ美味いよな」
「安くてしかも一個一個が大きくてな」
「金がない時はあれを買えばいいからな」
「甘いしな」
「そう、甘いだろ」
 薩摩芋のその味もというのだ。
「これも甘いだろ、米も菓子にすれば甘いし砂糖に薩摩芋でな」
「おい、全部甘いものだぞ」
「どれもな」
「全部今の公方様が広められたが」
「全部甘いな」
「今の公方様は甘いものがお好きじゃないのか?」
 このことからこう思うのだった。
「ひょっとしてな」
「ああ、そういうことか」
「それあるかもな」
「何かそんな気がしてきたな」
「言われてみると」
「米公方様は米だけじゃないのか」
「甘いもの全般か」
 江戸の民達は米だけではないのかと考えだした、吉宗のことを。
「甘いもの自体がお好きなのか」
「そしてわし等に甘いものを楽しめというのか」
「甘い味は確かにいいからな」
「果物にしてもな」
「いや、そうだとするとな」
「いい将軍様だな」
「甘くて美味いものをたっぷり食えとかな」
「素晴らしい将軍様だよ」
 江戸の民達は心から思い吉宗の善政に感謝した、それで吉宗を何時しか米公方からさらにであった。
「何と、江戸の民達は余をか」
「はい、近頃はです」
「以前は米公方と言っていましたが」
「米という字をばらばらにして八十八公方とも」
「しかし今はです」
「薩摩芋や白砂糖のこと、そして米が多くなってそこから増えた米の菓子のこともあり」
「そうしたことから」
「甘味公方か」
 吉宗は自らこの呼び名を出した。
「余をそう呼んでおるか」
「左様です」
「近頃上様をそう呼んでいます」
「とかく甘いものがお好きだと」
「その様に」
「そうか、それは面白い」
 吉宗は幕臣達の言葉を聞いて笑って述べた。
「甘味公方とはな、米公方も面白かったが」
「そちらもよいですか」
「甘味公方という呼び名も」
「そちらもですか」
「言われてみれば確かにそうだ」
 自分の政を振り返ってだ、吉宗は自ら言った。 
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