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おぢばにおかえり

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109部分:第十五話 中間テストその三


第十五話 中間テストその三

「人によってはある程度だけ頑張るって人もいるしね」
「あっ、みたいですね」
 別に天理大学行かない人もいます。大学に行かなくても天理教の色々な場所で働くことができるからです。これもまたおみちを通るってことなんです。
「海外布教とかね」
「海外ですか」
「ちっちはそういうの考えたことある?」
「いえ、それは」
 それは正直考えたことがなかったです。家の教会を継ぐことは考えていましたけれど。
「天理大学に合格するわね」
「はい」
「それで卒業して」
 何か凄い未来な感じです。
「その後はどうするの?」
「一応家に帰ろうかと」
 あまり考えていないですけれど。そう考えています、一応は。
「それで仕込みを」
「そう。ちっちは教会の娘さんだしね」
 やっぱりそれが大きいです。
「そういえば潤もあれよ。教会の娘さんだから」
「どうされるんでしょうか、高井先輩は」
「高校を卒業してから暫くはおぢばに残るんだって」
「えっ、そうなんですか!?」
 高井先輩が残られるなんて。優しくて奇麗な人ですから嬉しいです。
「私もそのつもりだしね」
「長池先輩も」
「だから時々になるけれど会えるわね」
「はい、嬉しいです」
「嬉しいって」
 私が笑顔になると何か先輩は苦笑いになりました。そのお顔でまた仰います。
「大袈裟よ。私達が残ることがそんなに嬉しいとは思えないけれど」
「やっぱり。知っている方ですから」
「そうなの」
「そうなんです。先輩はおぢばで何をされるんですか?」
「一応大学に行くつもりよ」
 勿論天理大学のことです。
「だから三年になったらちっちと会うわね」
「隣ですから時々御会いできますよね」
「そうね。詰所に置いてもらうことになるし」
「詰所ですか」
 それを聞くと何か少し違和感を感じました。それは今私が東寮にいるせいでしょうけれど。
「何かおかしい?」
「詰所に住まわせてもらえることもありなんですよね」
 そのことを先輩に確かめるようにして尋ねます。
「そういえば」
「そうよ、何言ってるのよ」
 先輩はおかしそうな笑顔になりました。
「当たり前でしょ。その為の詰所なんだから」
「そうですよね。私何言ってるんだろ」
「まあ気にしないで。それでね」
 話が変わりました。
「ちっちもおぢばに残るのね」
「はい」
 これはもう私のなかでは決まっていることです。
「大学に受からなくてもここにいさせてもらいたいです」
「そうなの、じゃあ当分ここなのね」
「ええ。ですからまた先輩と御会いできますね」
「私なんかと会っても何もないわよ」
 先輩は私にこう笑ってきました。
「それでもよかったらだけれど」
「それでもで御願いします」
 私もこう言葉を返しました。
「先輩がいてくれると凄く心強いですし」
「わかったわ。じゃあ私でよかったら」
「ええ。それで御願いします」
 そんなやり取りの後でまた勉強です。いつもよりもずっと勉強漬けで遂にテストの日です。テストの日はそれが終わったらすぐに下校なんでまた図書館にです。
「ちっちって勉強は図書館派だったのね」
「落ち着くしね」
 こうクラスメイトに答えます。
「ほら、寮だとね」
「それはね」
 寮はとても忙しいですし学習時間もありますけれど部屋によってはシャーペンの芯を出すのも部屋の外でしなければいけないしとても大変ですから。だから図書館で勉強することが多いんです。私は中学校の頃から図書館で勉強することが多いんですけれど。
 
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