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甘未公方

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第二章

「だからこれより余もな」
「まさか」
「うむ、食したい」
「宜しいのですか」
「よい、美味いというのなら食してじゃ」
 そのうえでというのだ。
「その味を確かめたい」
「そうなのですか」
「では早速な」
「これよりですか」
「料理させる、それでどうして料理するのじゃ」
「はい、土の中にあるのでまずは奇麗に洗い」
 青木はそれならとだ、吉宗の言葉に応えてその料理の仕方を話した。
「湯でじっくり煮るか焼くかして」
「食するのか」
「その際皮は剥きます」
「赤茶色のこれはじゃな」
「はい、剥いてです」
 そうしてとだ、青木は吉宗にさらに話した。
「その中のものをです」
「中は赤茶色か」
「いえ、黄金色です」
「何と、皮と中身の色は違うか」
「左様です」
「ではそのことも楽しみにしてじゃ」
 それでと応えた吉宗だった。
「今から食する」
「わかりました」
「何と。上様自らそうされるとは」
「言われれば我等が確かめますが」
「そうしますが」 
 ここまで吉宗と青木の話を聞いていた幕臣達は驚きを隠せなかった、しかし吉宗はその彼等に笑って話した。
「ははは、余が広めるのだからな」
「それで、ですか」
「上様御自らですか」
「確かめられますか」
「そうじゃ、そういうことじゃ」
 吉宗は幕臣達に笑って話した、そうして実際に彼自らその茹でた薩摩芋を己の前に出してもらいその皮を剥いた、すると。
 中身が出て来たがその中身は実際にだった。
「ほう、確かにな」
「黄金色ですな」
「そうじゃな、これは面白い」
 見たその中身に笑顔で言った吉宗だった。
「まこととはな、ではな」
「はい、お召し上がり下さい」
「そうさせてもらう」
 こう言ってそしてだった。
 吉宗は実際にその薩摩芋を食べた、すると。
「ふむ、甘くてな」
「そしてですな」
「美味い、しかも大きいしのう」
 薩摩芋の大きさについても述べた。
「これはよいな」
「そう言って頂き何よりです」
「では薩摩芋はじゃ」
「認めて頂きますか」
「喜んでな、これは天下に広めよ」
 薩摩芋、それをというのだ。
「そうせよ、よいな」
「わかり申した」 
 幕臣達も応えた、こうしてだった。
 薩摩芋は天下に広まることになった、薩摩芋は甘く美味くしかも痩せた土地でも多く採れ天下の民達の腹を満たした。
 だが吉宗はそれに終わらなかった、今度は貿易の話を聞いて言った。
「砂糖のことか」
「はい、白砂糖ですが」
「清から買っていますが」
「これがかなり高く」
「民の口に入りませぬ」
「贅沢なものになっています」
「それはいかん」
 吉宗は砂糖の話を聞いてすぐに言った。
「天下万民が餓えずしかも美味いものを食することが出来る」
「そうならねばですな」
「やはりよくありませぬな」
「天下にとっては」
「どうしても」
「そうなる様にするのが政じゃ」
 まさにというのだ。 
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