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名探偵と料理人

作者:げんじー
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番外編4(中編) 金田一少年の事件簿:怪盗紳士の殺人

 
前書き
こちらのお話は番外編第4弾の続きで金田一少年の事件簿の事件です。

コナンと金田一の世界観がクロスしているので捏造設定が多めになっています。 

 
番外編4(中編) 金田一少年の事件簿:怪盗紳士の殺人

「怪盗紳士の仕業か!?小宮山さん電話は!?」

「そこのテーブルの上にあります!」

 

小宮山さんが指差したテーブルの上には電話の子機があり、それを一は手に取った。

 

「あ!剣持警部を出してください!大変なんだ!」

 

どうやら本館の使用人の人が出たらしく、一は剣持警部なる……剣持警部?けんもち……おお!もしやあの剣持警部か!彼も来ていたのか。

 

「あ、おっさん?!大変なことが起きたんだ!」

『なんだ、金田一そんなに慌てて』

「実はラベンダー荘にある蒲生画伯の絵が無くなっているんだ!」

『な、なんだと!?おい、ラベンダー荘ってのはどこにある!?』

 

電話の向こう側では剣持警部が使用人にここの居場所を聞いているみたいだった。

 

『よし、皆でそっちにすぐ向かう!お前はそこで大人しくしておけよ!』

「あ、え、ちょっと……切れちまった」

 

どうやら一方的にまくしたてたられて電話は切られてしまったらしい。まあこんな状況だし仕方ないわな。

さて、と。俺は足跡を踏まないように開けっ放しになっている窓へと近づいた。玄関から真反対側にある窓から見える風景は一面のラベンダー畑だった。玄関には歩哨の警官が一人立っていたが、裏にあたるこの場所には警官の姿はない……いや、ここって小宮山さんがギャラリーとして使っているって言っていたし、そこの担当が正面一人だけって杜撰すぎるだろ。怪盗がお利口に玄関から来るわけもあるまいて…おや?

 

「一、一」

「おい龍斗。あんまり現場を荒らすようなことすんなよ?オレがおっさんにどやされるからな」

「あー、まあ。幸か不幸か、こういう犯行現場に出会うのは初めてじゃないんだなこれが」

「は?」

「俺の幼馴染みの女の子のお父さんは毛利小五郎なんだ。さらに加えて、俺の幼馴染みには工藤新一っていう探偵もいるんだ。だから事件に巻き込まれることも何回か…ね」

「え!?二人ともすっごい有名な探偵じゃない!「東の高校生探偵」に、「眠りの小五郎」!新聞でも良く見る二人と知り合いなんて」

「と言ってももう15年くらいの付き合いだからそんなすごい人って感じじゃないんだけどね」

「……オレも「東」の高校生探偵なんだけど」

「はははは…新ちゃん、工藤新一は高1に上がってから結構首突っ込んでたからね。彼のお父さん……優作さんが捜査協力していた警部がその場にいて、新ちゃんが事件に首を突っ込むことに協力してくれたのも後押しになったんだけど」

「オレにとってのおっさんみたいな感じか?」

「そう……なるのかな?新ちゃんは目暮警部に事件解決の要請とかで呼ばれていったりしてるけど」

「ああ…それ、今回のオレと同じじゃねえか。オレも剣持のおっさんに言われて今日ここに来たんだ。怪盗紳士逮捕のためにな。後で紹介するよ」

「それは楽しみだな。一も東京で俺に言ってくれれば新ちゃんは今は出張で厄介な事件に関わっているから軽々しくは言えないけど。小五郎さんには会えるかも……じゃない、一。ほら見てみなよ」

「ん?……あれは」

 

俺が指を指した先にはラベンダーが倒れて道のようになっている部分だ。ラベンダーの花が潰れたいい匂いと共に茎が折れて青臭さが俺の鼻につく。これは折れてそう時間は経っていないな。

 

「犯人はココから来た見てえだな」

「偽装工作でなければ、ね。床についている土の匂いも畑の土と同じものだし、ラベンダーの香りと一緒に茎や葉を踏み荒らしたせいで真新しい青臭い匂いが漂ってるしな」

「……龍斗サン龍斗サン?オレにはラベンダーのいい香りしかわからないんですが?そもそも土の匂いなんて立ったままのお前が何でわかるのでしょう?」

「今更じゃないかな?天草で色々やったジャン?と、まあ警察の人も来るし山狩りでもして怪盗紳士を捕まえるでしょ。靴跡に畑の土にラベンダー。まともな人が現場を見れば解決するさ」

「そうだな。剣持のおっさんもいるし」

 

 

――

 

 

「お前が怪盗紳士だっていうのは分かっているんだ!山歩きなんて適当なことふかしやがって!そのかばんの中には盗んだ絵が入っているんだろ?出せ!」

 

えぇ……確かに怪しいけどさ。さっきのはフラグか?いきなり両腕を警官に掴まれて、カバンの中身を出せはないんじゃねえかいな。

一が本館に電話をした後剣持警部や剛三氏、招待客がラベンダー荘に集まった。その時に、外の警官の所属、青森県警の警部である大河内善助という警部が一を助っ人として呼んだ剣持警部を「高校生の探偵気取り」に手助けを求めるなんてとんと人手不足なんですね、と揶揄していたが(まあ外様の警視庁の警部を快く思わないのは分からなくもないが)犯罪が起こってそれをだしに使うのはなんかなあ。

その怪盗紳士にされそうな人は岸一成と名乗り、山歩きをしていて迷い込んだそうだ。彼の服からはラベンダーの香りもしないし、もっと詳しく嗅ぎ取ってもラベンダー畑を突っ切ったような痕跡は感じられない。

 

「怪盗紳士!?ボクがぁ?」

「さあ、絵はどこにやった?どーしても吐かないと言うなら――」

 

吐かないならどうするのかな?っと、岸さんの鞄がもぞもぞしてる?

 

「な、何を隠している!?」

「わんわん!」

「ポ、ポアロ!」

「あ、君の犬だったの?そこの道をうろついていたんで連れてきたんだ」

 

そのポアロは岸さんの鞄から出されて岸さんに抱かれていた…が、すぐに彼を見て唸りを上げた。一はそれを見て誰が盗んだか察しがついたようだ。

 

「とにかく!署に来てもらおうか!たっぷり絞り上げてやる。さあくるんだ!」

「待ってください、大河内警部!」

「ん?」

「その人は絵を盗んだ犯人じゃなさそうですよ?」

「何だと!?こいつが犯人じゃないとしたらいったい誰が」

「犯人はオレ達招待客の中にいる。この中の誰かが蒲生氏の自画像を盗んだんだ!!」

「ほ、本当なのかい君?誰が私の自画像を?」

「信じられないわ…」

「それは…こいつが知っているよ!」

 

一は岸さんに抱かれていたポアロを預かり、皆に見せた。

 

「その犬が犯人を知っているだと!?ばかばかしい!やっぱりあてにならんな、警視庁の助っ人というのは!」

まだいうかい。

「まあ見てなって!…さあポアロ!お前の「推理」でラベンダー荘から絵を盗んだ犯人を見つけておくれ!」

 

一に地面に降ろされたポアロは一目散に和久田さんへ走り寄り吠えた。

 

「うわ!?な、なんだこの犬は!?」

「なーるほど。絵を盗んだのはあんただったんですか、和久田さん!」

「バカな!?犬にほえられたぐらいで、どうして僕が犯人呼ばわりされなきゃいけないんだ!?」

「根拠はあんたの体に染みついたラベンダーの香りさ!」

「ラベンダー?」

「さくらによるとポアロはラベンダー畑の近くに来るといつも激しく吠え立てるらしい。今日の車に乗ってきている時もそうだった。寝そべっていて窓の外を見ていなかったのにもかかわらずな。それはなぜか?それはそこにいる龍斗が教えてくれた。エアコンからラベンダーの香りが入ってきて暫くしてポアロは吠えだしたってな。つまり、ポアロがラベンダーの匂いを嫌いなんだ」

 

一はそこで一度きり、皆に現場をもう一度確認させるように手を回した。

 

「このアトリエは玄関まで一本道だ。だがそこには警官が立っていた。侵入経路とみられる窓から入るにはぐるっと迂回してラベンダー畑を突っ切っていくしかない。窓の外を見てもらえば分かるけど案の定ラベンダー畑の中には誰かが踏み荒らした跡がある。ラベンダーの花はすりつぶすことで香りが発生するから犯人の身体にはラベンダーの香りが染みついているはずなんだ。

ポアロは岸さんには吠えず他の誰かを睨んで唸っていた。誰に唸っていたかはもう分かるよな?つまり本当の犯人、あんたに向かってだ!」

「ついでに補足するなら、貴方夜のパーティでカクテルをスーツにこぼされて着替えているのにその新しいスーツに匂いがついている。さらに調べればラベンダーの香りだけでなく踏み荒らしたときに茎や葉の青臭い匂い、とどめに部屋中に残った足跡と合致し、畑の土が着いた靴を持っていること、なんてのも決め手になると思いますよ?」

「む!?確かに金田一の言っている事だけじゃなくそれだけの証拠が残っているのなら言い逃れできねえな」

「じゃあ、あんたが怪盗紳士!?」

「ち、違う!僕は怪盗紳士なんかじゃない!…確かにアトリエの絵を盗んだのは僕だ!でも僕はその女に伯父さんの絵を全部持っていかれるのが悔しくて…!」

 

さくらさんを指さしてわめく和久田さん。いや、親とかならともかく伯父さんて。図々しくないか?

 

「僕だって一枚くらい貰う権利があると思ってそれで…信じてくれよ皆!」

「ま、たしかに本物の怪盗紳士ならこんだけ杜撰な証拠は残さねえだろうさ」

「全くお前というやつは…!私の顔に泥を塗りおって!そんなにお望みなら言う通りお前にはただの一枚も絵はやらんわ!」

「ひいいいいい!」

 

頭を抱えた和久田さんをその手に持っていた杖で殴打する剛三氏。いや、警察は止めろよ……

そう思って二人の警部の方を見ると論破された大河内警部の肩に剣持警部が手を置いていた。

 

「良かったですね、大河内警部!盗難事件が一つ解決して!」

「……」

「それも皆そこにいる、「高校生の探偵気取り」のお蔭ですよね?」

「くっ!」

 

おお、ぐぬぬしてる。中々見ないな、あんな立派な「ぐぬぬ」。

大河内警部は剣持警部から離れ、和久田さんに絵の居場所を聞きにいったようだ。

 

「よう、金田一!助かったぜ。大河内警部全然協力してくれなくてな。やっと鼻をあかせたよ」

 

高校生組に話しかけてきたのは剣持警部だ。

 

「いやあ。それほどでも…って言いたいけど、あれ位しっかり現場検証していれば誰でも真実には辿りつけてたさ。現にそこの龍斗も気づいてたろ?」

「む?そう言えば君は見ない顔だな」

「初めまして、緋勇龍斗と言います」

 

俺は自分の事と、今日ここに来た経緯を話した。

 

「そうか、それは災難だったな。にしても、君が緋勇龍斗君か。私の家内も君が寄稿した雑誌のレシピを元に料理を作ってくれたことがあったが一家皆好評だったぞ!もうしないのかい?あれっきり妻が新しいレシピが出ないと嘆いていたが」

「あー、まあ。次の、一月にある世界大会に出てからですかね。あんまり雑誌の取材とかテレビとか興味なくて」

「そうかそうか、それは楽しみだ…っと。自己紹介が遅れたね。私は警視庁捜査一課の警部、剣持勇だ」

はい、知っています…あれ?捜査一課?

「あのー。つかぬ事をお聞きしますが、怪盗の事件って捜査二課なんじゃないですか?」

「なに?どうしてそう思うんだ?」

「いえ、以前幼馴染みの家が宝石専門の泥棒、「怪盗キッド」に狙われたことがありまして。自分もその場に居合わせたことがあってその時に来ていたのが捜査二課の中森警部だったので、そういう物なのかなって」

「なるほど、中森の奴を知っているのか。元々捜査二課は金銭犯罪-詐欺とか脱税な―や知能犯を扱う所でな。捜査一課は殺人や放火、強盗に傷害などの凶悪犯罪を担当しているんだ。怪盗キッドの奴は長年色々な暗号付きの予告状を送ってきたり様々なギミックを駆使して犯行を重ねているので二課担当になったんだ。今回は蒲生画伯の敷地内で放火もあったことから捜査一課の私が来たというわけだ」

「なるほど……因みに、目暮警部や松本警視って知ってます?」

「おお!目暮に松本警視を知っているのか」

「ええ。ほら、つい最近松本警視の娘さんが結婚式を挙げたじゃないですか。その時に応急処置した縁で。目暮警部は幼馴染みのお父さんの上司だったので、食事会を開いた時に知己を得たんです。もう15年くらい前になるかな」

「はあ~!オレもその結婚式には出ていたよ!そうか、君が彼女を助けてくれたんだな!あの時は高校生の少年の応急処置のお蔭で危機を脱したとしか聞いていなかったからな。それと目暮とはまた奇妙な縁だな…奴は森村警部補が殉職した後に少しの間教育係を代行していたよ」

森村警部補?殉職なら二階級特進で森村警視か。

「っと。大河内警部が和久田から隠し場所を聞きだして案内させるみたいだな」

「おっさん、オレもついて行っていいか?」

「ん!?んー。まあいいか。よしついてこい」

 

さくらさんと七瀬さんは本館に戻るそうだ。他の人もそうらしく、絵の隠し場所に向かうのは俺と一、そして…

 

「ねえねえ、ちょっと!」

「ん?」

「あなたすごいじゃなーい!私ミステリードラマを見ているみたいで感動しちゃった!!君も名探偵を補佐する優秀な助手みたいでかっこよかったよ!」

 

後ろから俺達を追いかけてきて、一の手を握ってそう言う招待客の女性がいた。彼女も隠し場所を見に来た一人だ。

 

「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね!私は醍醐真紀。芸能ジャーナルの記者なんだけど…名探偵VS怪盗の対決が見られそうなんて私はラッキーね!それにほとんど取材を受けないあの緋勇龍斗もいるなんて私、今日はツキまくってるかも!」

「「は、はあ…」」

 

げ、ちょっとめんどそうな人だな。あんまりお近づきしたくない。

俺達が彼女の対応にあたふたしていると、土をザクザクと掘る音と大河内警部の声が聞こえてきた。

 

「本当にここに埋めたのか!?絵なんてどこを掘っても出てこないぞ!」

「そ、そんな…僕は確かにここに埋めたはず」

 

どうやら掘っても掘っても絵が出てこないようだ。

 

「どういうこった?」

「場所を勘違いしているとか?」

『大河内警部――――!!』

「ん?」

「なんだなんだ?」

 

そんな時後ろから大声で近づいてくる人影。あれは青森県警の制服警官?

 

「大河内警部大変です!盗まれた絵が元の場所に!!」

「な、なんだって!?」

 

……盗んでまた返す?おいおい、怪盗キッドみたいなやつなのか、怪盗紳士って。

 

 

――

 

 

ラベンダー荘に戻ってみると確かに絵が元の位置に戻っていた。「とんだ茶番劇だった。次回は本物が、絵をいただきに参上する。ゆめゆめご油断なさらぬよう… 怪盗紳士」のカードと共に。

 

「怪盗紳士の挑戦状だ…!本物の怪盗野郎がついに動き出しやがったか…!」

 

しかし、いつこんなものを。というか、盗まれた時も戻された時も現場に警察官が一人もいなかったって結構穴だらけだな、おい。

 

「怪盗紳士!お前の挑戦受けてやる!ここにある絵は1枚だって盗ませやしない!金田一耕助の名にかけて!」

 



……

………おおお!?これってあのセリフか!いやあ、思い出すのにちょっとかかっちゃったけど、これを現実で聞くことになろうとは。ちょっと感慨深い。

 

 

――

 

 

『今の所、特に異常はありません大河内警部!』『よし、そのまま警戒を怠るな!…たく、東京者が偉そうに仕切りよって!怪盗紳士は青森県警が絶対とっつかまえてやる!』……

はあ。まあそんなこったろうとは思ったけどあんな様子じゃ無理だろうな。俺はそう思いながら開放していた感覚を閉じた。外で警戒している大河内警部がどんな指示をしているのか思いと聞いてみたが外に敵がいるのに味方を敵視しててどうするんだよ。

俺達は本館に移動してさくらさんの肖像画が置いてある部屋でティーブレイクをしていた。今この場にいるのは高校生4人に醍醐さん、小宮山さん、岸さんの7人だ。

「へえ、あの怪盗紳士が狙っているんスか?ここがそんなすごい絵描きさんの家だったなんてなあ」

「あら、あなたここが蒲生剛三氏の家だって知らずに迷い込んだの?」

「ハハハハ、ボクは山歩きが唯一の趣味でして。芸能関係はからっきし…」

「呑気な人ねえ。金田一君たちが居なければ今頃あの頑固な類人猿にこってり絞られていたわよ?」

「そうそう、金田一君に緋勇君だっけ?さっきはありがとう」

「いやあ、俺は何にも。お礼なら俺にヒントをくれた龍斗とそこの小さな探偵君に言ってあげてくださいよ!」

「ああ!確かにそうだな。ありがとなー、チビスケさん」

「お手柄ね、ポアロ」

 

そう言ってポアロをもみくちゃにする岸さん。撫で方が優しいのかふにゃふにゃになっていくポアロ。うん、和むね。

 

「でも、あの大河内って警部はあんな指示出しといて、任意同行でもなく現行犯で捕まえそうな勢いだったけどホントにあの年まで警察やっていたとは思えないね」

「?それってどういうことだ、龍斗」

 

本館に戻る時に剣持警部にちらっと聞いたらあの人員配置は大河内警部が指揮を執っていたそうで、剣持警部は口出しを出来なかったそうだ……ギャラリーとして開放されていて、多数の作品が飾ってあるラベンダー荘に玄関一人しか警官を配置していなかった時点でありえんだろうに。死角有りまくりで、実際に素人の和久田さんにまんまと盗まれたわけだしね。

そのことを皆に話した。

 

「え、うっそー!あんなお宝の山があります!!って所、私だって守り固めるのに!!」

「それは…私、芸能関係だから門外漢だけどこの杜撰さは記事に出来るわね」

「うわあ、そんな警部さんに捕まってたらボクどうなっていたか…」

「でも、金田一君はちゃんとそれを食い止めた。流石ね、金田一君。名探偵と言われたおじいちゃんの血が金田一君の中にしっかり流れているのね!」

「え?名探偵のお爺ちゃんって?」

「そうよ!はじめちゃんは正真正銘あの金田一耕助の孫なんです!」

「へえ!?それであんな見事な推理を?!」

「すごーい、だからあんなに論理立てて推理を披露できたのね!」

 

確かに、俺はこの五感で犯人を導き出すことができるがそれを他の人も納得できる論述に落とし込むが出来ない。それが出来れば俺も名探偵!…なんてな。

 

「じゃあその名探偵さんに聞きたいんだけど次に怪盗紳士が狙ってくるのはどの絵だと思う?」

「え?うーん、まだそこまでは」

「あれ?一。怪盗紳士って獲物を指定していないのか?」

「え?ああ、龍斗は知らないのか。怪盗紳士の予告状には蒲生画伯の作品をコレクションに加えたいってあってな。どの作品かは言ってきてねえんだよ」

「ふっ。そりゃああの絵に決まっているさ」

「「「「え?」」」」

 

おや、あの人は確か来客の一人で……

 

「羽沢さん!」

 

七瀬さんが耳打ちで彼が画商の羽沢星次さんだと教えてくれた。彼は部屋の入り口で佇み、さくらさんの肖像画を見上げている。

 

「「我が愛する娘の肖像」…南十字星輝く満天の星空の背景に微笑み、髪をなびかせてこちらに微笑む少女の絵は見る者を遠き日に見上げた夜空の元に誘う――この絵には単なる「美」、「芸術」を超越した何かがある。私ならこの絵に2億…いや5億出しても惜しくない!私が怪盗紳士なら真っ先にこの絵を狙うだろう!」

「…まあ確かにねえ。さっきギャラリーにある他の絵も見たけどやっぱりこれが別格よね」

「いえ…!」

ん?

「この絵を怪盗紳士が盗むなんてことはありえませんよ。なにしろ怪盗紳士はこの絵を一度盗んで返してきたんだから」

 

ああ、そういえば結構話題になったな。

 

「1度盗まれた?」

 

……一。少しは新聞とかテレビ、ネットニュースを観ようよ。

事情を知らない一に醍醐さんが説明してあげていた。半年前にこの絵が海外のとある絵画コンクールにこの絵を送り返してきたこと。そのことにより蒲生画伯の未発表の作品であることが世に知られることとなったという。しかもそのコンクールが世界的権威をもつものでグランプリをとったというからこの絵の価値はかなり上がっている。

さらにこの絵にまつわる顛末として、蒲生画伯がこの絵のモデルとしているのは生き別れた娘が成長した姿の想像図という事をマスコミに発表したのだ。

 

「私が生まれた頃お父さんはまだ売れない画家でしかもお母さんとは内縁の妻だったそうなの。でも私が5歳の時お母さんは私を連れてお父さんの前から姿を消したって…」

「「「「……」」」」

「大変だったのね、さくらさん」

「去年亡くなった母から、5年前に失踪した父は本当の父親じゃないって聞かされてて。それでグランプリを取ったあの絵を雑誌で見た時ひょっとしたと思って名乗って出たのよ」

「そりゃーたしかにびっくりしただろうなあ。自分そっくりの絵が海外のすっごいコンクールでグランプリを取ったって雑誌に載っていたらさ!」

「んん?でも待てよ?さくらお前、オレ達の学校に通ってた時は眼鏡におさげにで、今とは全然別人だったような?」

「それはね……」

 

さくらさんは胸元のぼたんを2つほどあけ、みんなに左の鎖骨が見えるようにした……一、ブラジャーに注目しないの。

 

「絵と同じ形のこのアザが決め手となって娘だと分かったのよ。お父様はこのあざを見るなり私を娘だと認めてくれたの」

 

左鎖骨の上に確かに蝶のような独特のあざが浮き出ていた。確かにあれがあれば断定できるか。

その後、再会したあとに剛三氏に痩せて、眼鏡からコンタクトに変えるように言われてその指示通りにすると今の姿になったというわけらしい。

 

「でも、流石は蒲生画伯ね!想像でさくらさんそっくりの絵を書けるなんてね」

「まあ、ですからこの絵を再び怪盗紳士が奪いに来るとは到底思えないのですよ」

「…確かにこの絵をめぐる怪盗紳士の行動は不可解な点が多いと思います。ですが先週気が燃やされたことで私はこう考えたのですよ。絵を返してきたのはこの絵のモチーフとなった人物、さくらさんを探し出すためだったのではないか?ってね」

「わ、私を!?」

「な、何を言い出すんだよ羽沢さん!」

 

放火で気づいた?モチーフを盗む……まさか!?

 

「っ!羽沢さん、あんたなんてことを考えるんだ」

「おや、そこの探偵君ではなく緋勇君が気づいたか。つまりこういう事さ。怪盗紳士は絵のモチーフを盗む。だがこの「愛する我が娘の肖像」のモチーフである娘が見当たらない。だからわざと有名にして、娘が蒲生氏の元に帰ってくるように仕向けた、ってね」

「い、一体何のために?」

「そりゃあやることは一つ。「絵のモチーフ」をこの世から消し去る。さくらさんを殺すためさ!」

「「「「な!?」」」」

「さくらさんを殺すためですって!?」

「ま、大変なことにならなきゃいいですけどねえ…?」

 

そう言って部屋を後にする羽沢さん。誰かに命を狙われているかもしれないと指摘されたさくらさんは真っ青になってしまっている。

 

「何よあの人!感じ悪!!」

「確かに、人を不安にさせるだけさせといてフォローも入れないなんてね…小宮山さん、あの人はどういう?」

「あの方は緋勇様と来られる予定だった方と同じく画商をしております羽沢星次様。銀座の有名は画廊の2代目でして先代はとてもいい方でしたが息子の星次様は少々強引なやり口という噂が。目利きは確かなのですが……」

「どうしよう、あの絵が盗まれたら私…」

「だ、大丈夫よ!そんなこと絶対にないって!!…それにいざとなったら貴女の名探偵が守ってくれるわよ!」

 

醍醐さんのその言葉に青かった顔色がみるみる赤くなっていった…おや?さくらさんって一の事を……?

その後、羽沢さんによって冷めてしまった空気も元に戻り雑談を続けて、夜もいい時間となったところでお開きとなった。岸さんは予定外の迷い人という事で外で野宿すると言い張ったが、まあさくらさんがそんなことさせるわけもなく空き部屋に通されていた。俺も案内された自分の部屋に入り、諸々の事を済ませてからベッドに入った。

 

 

――

 

 

「んー……」

 

 

部屋に戻ってから2時間。ベッドに入ったはいいが寝つけずにいた。別れる前にみたさくらさんの顔色がちょっと悪かったのが気になったのだ。まあ、それだけではなく一に再会してまた事件らしきものが起きたことに思いをはせていたことも原因の1つなんだが……

 

「……何か悶々と考えているよりいいか」

 

折角ラベンダー畑があるんだし朝一番にリラックス効果のあるラベンダーティーでもご馳走してあげようと思い立った俺は部屋を出て、外で警邏をしていた剣持警部に事情を話しラベンダー畑までついてきてもらった。俺はそこで何株か採取し、本館に戻って今度こそ就寝した。

 

  
 

 
後書き
捏造設定
・剣持警部は50前。
・キッドが捜査二課で扱われる理由。
・捜査一課での剣持警部と他の刑事との関わり。
・ラベンダーが5~7月が開花時期とのことなので「怪盗紳士の殺人」は7月、「6月の花嫁殺人事件」後の話とした。
・「怪盗紳士の殺人」を読めば分かりますが、この青森県警はかなり無能です。




普段なら~があったとなどでモノローグでバッサリカットする部分を、原作通りに会話を再構成しているのでかなり長くなってます。普段もその通りにしていると週一は不可能だなと戦慄しました。原作の大幅コピーにならないようにしないと… 
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