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エアツェルング・フォン・ザイン

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そのにじゅうご

「ザイン、起きなさいザイン、玉藻も起きて」

「あぁ、お早う。アリス」

「うー…お早うございますアリスさん」

目が覚めると、やはりアリスの抱き枕にされていた。

「早く着替えてらっしゃい」

「ふぁい」

「ふにぃ…わかりましたぁ…」

そして何時も通り寝間着から普段着に着替える。

今日は寺子屋が休みなので、アリスから人形について教えてもらう。

「じゃぁ、今日は前回に引き続いて人形に仕込むギミックを教えるわ」

服を着替え、アトリエに向かうとアリスが作業台の椅子に座っていた。

普通の人間ならば、朝食を取るのだが、アリスは魔女だし、俺は妖精だし、玉藻は式神だ。

俺とアリスは空間から力を、玉藻は俺から力を吸収するので食事は基本取らない。

「ザイン」

「はいはい」

机に座るアリスの、膝の上に座る。

「やっぱり軽いわねぇアナタ…食べた方がいいのかしら?」

「いらんよ。つーかさ、なんで膝の上な訳?」

「だって作業台は一つしか無いじゃない」

なお、この時玉藻は屋根の上で日向ぼっこしている。

「まぁ、いいや、で、今日はどのギミックを教えてくれるんだ?」

出雲と伊勢には、かなりの空きスペースがある。

今は教わったギミックを一つづつ組み込んでいる。

「そうね、なら今日は…」

目の前に上海が現れる。

「これにしましょう」

ジャキン!と音を発て展開されたのはニードルだった。

上海の両足の脹ら脛部分から踵より少し先まで伸びるニードル。

「なるほど…」

「ではまず…………………」








「今日はこの辺にしときましょう」

午後三時、仕込んだギミックの動作確認を終えた。

アトリエからリビングに場所を移し、テーブルに紅茶とクッキーを置く。

「それで、今日はどんな話をしてくれるのかしら?」

アリスが俺に人形を教える代わりに、俺はアリスに冒険の話をする。

「そうさなぁ…なら今日は……文明が一度滅んだ後の話をしよう」

そういう契約だ。

「その世界で、人間は憎み合い、争い、遂には星をも滅ぼした。
人間は新天地を求め、星々の世界へ旅立った。
しかし、母なる星を捨てられず、数十、数百の年月を掛けて、帰って来た者達もいた。
これは疾風と硝煙の話。
滅んだ世界を生きる、人間の話だ…」

GGOでのキリトとシノンの、俺とカトラスとショウの冒険の話をする。

途中で玉藻も戻ってきて、狐の姿でテーブルに寝転がり、一緒に聞いていた。

「ねぇ、ザイン」

「どうしたアリス?」

「その御話、本にはしないの?」

「本…?」

「貴方の冒険の話、とても面白いわ。
きっと、他の人もそう思ってくれるわ」

ふぅむ…

「考えておくよ」

「そう、期待してるわ。そろそろお風呂にするわ」

時計を見ると、もう19時だった。

「OK」

アリスはバスルームの方へ向かう。

まずアリスが入ってから俺と玉藻が入る。

アリスが魔法で風呂を沸かすから当然だ。

「玉藻、おいで」

「んー!」

ポフン!とヒトガタになった玉藻に抱き付かれる。

「ご主人…!ご主人ご主人ご主人!」

「お、おう?どうした?」

「一緒にお風呂入りたいです!」

「ふぁ!?」

「私がヒトガタになってから一度も一緒に入ってくれてないです!」

「い、いやぁ、それは、ね…?」

「良いじゃないですか!リアルではカトラスさんと入っていたんでしょ!」

「幼稚園の頃の話だ!」

それにもう200年以上前の事だし、UW行く前の事なんてほとんど覚えていない。

「むー…部屋でカトラスさんとお互い下着姿だったと聞いています」

「や、葵はそういう対象として見れないし…
つか一応男だし…」

「じゃぁ私の事は意識してるんですか!?」

う…それは…まぁ…

「してないって言ったら嘘になるな。
葵は小さい頃から見てたからそうな訳で…」

「あら?面白い話をしてるじゃない」

え?風呂入ったんじゃなかったの?

「一緒に入ってあげなさいよザイン」

「はぁ!?」

「何よ?恥ずかしいの?わかったわ私も一緒に入ってあげる」

「え?」

いま、何て言った?

「さ、行くわよ」

アリスに後ろ襟を引っ張られ、風呂場に連れて行かれた。

「待て待て!おかしいだろ!?」

「うるさいわね。早く脱ぎなさいよ」

と言いながら玉藻とアリスは服を脱ぎ始めた。

「いやいや!何してんの!?」

「面倒ね…玉藻」

「はーい!」

玉藻に後ろから抱きつかれた。

「ちょぉ!?」

「じゃ、脱がすわよ」

「待て待て待て待て!」

「暴れないで、パンツが脱がせにくいわ」

「テメェはどこぞの吸血鬼か!?」

そんなやり取りが有りながら、結局俺は脱がされ、二人と風呂に入る事になった。

「へぇ…アナタの体って本当に子供なのね…」

「あんまり見るな」

「あら、ごめんなさい」

あぁ…もう…

「どうしたのザイン?」

「目のやり場に困るんだよ」

アリスも玉藻もスタイルいいし…

てゆーか何で玉藻はロリ巨乳なんですかねぇ?

「あら、ザインは私の体に欲情してるのかしら?」

「してない!」

なんでこんな事にぃ…?

「ほら、背中流してあげるから」

言われたとおり椅子に座る。

椅子に座った俺と膝立のアリスの目線がほぼ同じという所で、改めて自分が妖精になったんだなと思った。

「ザイン」

「んだよ?」

「私に背中を流して貰ってるって里の男に知られたらどうなるかしらね?」

「さぁ?反撃した俺が霊夢あたりに退治されて終わりじゃね?」

「あら?負けるの?」

「殺し合いなら十中八九俺が勝つ。
だが弾幕ごっこは殺し合いじゃない。
それに霊夢に負けておけば警戒されないだろ」

「ご主人!私の尻尾洗ってください!」

ん?尻尾?

「おう、いいぞ」

ボディーソープを出して、玉藻の尻尾を洗う。

「あっ…ふぁっ…そこ…」

「悩ましい声を出すな」

「だってご主人の手が気持ちいいんだもん」

「そうかよ」

「なに?ザインったら興奮してるの?」

「断じてしてない!」

「あらそう?でもココは…」

「やめろやめろ!R-18タグ付いてねぇんだぞ!」

「それもそうね」

「ご主人?」

「何でもねぇよ…」

いつもとは違う、賑やかなバスルーム、案外悪くないかもしれない。

風呂から上がって、寝間着に着替える。

「ザイン」

「なんだよ?」

「歯を磨いてあげましょうか?」

「は?」

「この前妖怪の賢者が言ってたのよ。
他人に歯を磨かれると快感が生じるって」

「ヤメロ、どこぞのエロ奴隷じゃあるまいし」

ん?あれ?おかしくないか?

現在は2003年…

物語シリーズは発売されていないはずでは…?

「あぁ、アナタの頭の中を覗いたそうよ」

「今度あのBBAぶっとばす」

取り合えず明日博麗神社に行こう。

隙あらば俺から歯ブラシを奪おうとするアリスを警戒しながら歯を磨いた。

「さ、寝ましょうか」

「そだな」

「はい、アリスさん」

歯を磨いたら、直ぐに寝る。

幻想郷では太陽と共に生活するのだ。

魔法を使えば外と同じようなリズムで生活できるが、周りと時間が狂うのでしないらしい。

ベッドでは、玉藻、俺、アリスの順で寝ている。

俺が玉藻を抱き枕にしてアリスが俺を抱き枕にする。

俺と玉藻が抱き合って寝てると、玉藻の尻尾が邪魔になるのでこの順番である。

「お休みなさい、ザイン、玉藻」

「お休み…」

「お休みですアリスさん…」










変わり果て、人間ではなくなった俺を受け入れてくれる人が居る。

幻想郷でなら、俺は悠久を生きていけるかもしれない。

それが叶わずとも、幻想郷に骨を埋められるなら、それは幸せかもしれない。






拝啓、明日葉灯俊様。
俺は今幸せです。
 
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