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おぢばにおかえり

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10部分:第三話 高校生と大学生その二


第三話 高校生と大学生その二

「真面目に。そうでしょ?」
「そうだけど」
 言われるとこっちが不安になってきました。いつもがいつもですから。
「できるの?」
「本当に真面目にするよ」
 また言います。
「真面目にね。じゃあ明日」
「明日なのね」
 新一君を見上げて尋ねます。
「本当にやるのね」
「勿論だって。じゃあね」
 新一君はいきなり帰ろうとします。ところが。
「ああ待って阿波野君」
 事務所から井本さんの御主人が声をかけました。小柄で若作りの方です。黒縁眼鏡が凄く似合っていていい感じの人です。
「はい?」
「これから何処行くんだい?」
「いや、適当に」
 いきなり真面目にするって言った側からこの発言がもう極めていますよね、いい加減なんだから。
「ブラブラと遊ぶつもりですが」
「八木か桜井行く?」
「いえ、天理で」
 八木と桜井はどちらも近鉄線の駅のことです。この辺りじゃ結構大きい駅でして遊ぶ場所とかもそれなりにあります。けれど私は滅多に行けません。詰所で忙しいからです。
「遊ぶつもりですけれど」
「何か買う予定ある?」
「本屋で。漫画でも」
「あっ、それだったらね」
 彼が漫画を買うと聞いてすぐにお金を出してきました。
「サンデーとマガジン買って来て欲しいんだけれど」
「サンデーとマガジンですか」
「うん。いいかな」
 井本さんは結構漫画がお好きなんです。私もそれなりに読んだりします。実は結構男の子が読む漫画が好きですけれどこれは内緒ですよ。
「わかりました。先輩は?」
「私?」
「うん。何がいいかな」
「別にないけれど」
 首を右に傾げて答えます。
「別にね」
「じゃああれ?小学生のファッション雑誌とか」
「・・・・・・怒るわよ」
 言うと思っていましたけれど。どうせ小柄です。
「何で私が小学生なのよっ」
「また阿波野君はそんなこと言って」
 また横から井本さんの奥さんが笑顔で言います。
「駄目よ、先輩からかっちゃ」
「いやあ、冗談ですよ」
「冗談でも許せないわよ」
 口を膨らませて言い返しました。
「幾ら私が小さいからって」
「だから見つけ易いしね」
 また変なことを言い出しました。
「見つけ易いって?」
「あっ、何でもないよ」
 もっとわからないことに急に誤魔化してきました。やっぱりわからない子です。
「だから気にしないで」
「わかったわ。それじゃあね」
「うん。じゃあこれで」
「行ってらっしゃい」
 一応声はかけました。
「車に気をつけてね」
「じゃあサンデーにマガジンに」
「チャンピオンレッド御願いね」
 井本さんの奥さんがここで言いました。
「シグルイと聖闘士星矢Gとジャイアントロボ好きだから」
「俺も好きですよ」
 新一君は今の漫画三つ聞いてすぐに言葉を返しました。
「じゃあそれもですね」
「ええ、御願い。はい」
 井本さんの奥さんもお金を新一君に手渡しました。何かそれ見ていたら私も雑誌が欲しくなりました。それで彼に言いました。
「私もいいかしら」
「あっ、小学生のファッション雑誌でしたっけ」
「本当に怒るわよ」
 また言い出したんでむっとして見返しました。
「漫画よ。いい?」
「ジャンプとか?」
「いえ、それじゃなくて」
 ジャンプは最近読まなくて。それで今は。
「マガジンZ御願いね」
「先輩もマニアックじゃない?それって」
「まあそうかも」
 自分でも女の子が読む雑誌じゃないかなって思うんですけれど。この前たまたま新一君が読んでるの見ていたら好きになったんです。
「けれど。いいでしょ?」
「別にね。僕も好きだし」
 元々彼が買っていましたし。何か仮面ライダーとかウルトラマンとか真剣な顔で読んでいたんです。学校でもかなり読んでるみたいです。
「それじゃあそれだね」
「ええ、御願い」
 お財布からお金を出して手渡します。
「じゃあね」
「うん。じゃあ・・・・・・って」
 彼が出ようとしたら目の前に。その山村先生がいました。すっごい威圧感のある風貌の角刈りの方が堂々と立っておられました。
 
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