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おぢばにおかえり

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1部分:第一話 はじめましてその一


第一話 はじめましてその一

おぢばにおかえり

                第一話  はじめまして
  はじめまして、わたし中村千里といいます。天理大学人間学部宗教学科一年です。天理高校を卒業して今は奥華詰所という場所から大学に通っています。
 私は家が天理教の教会で高校からここに住ませてもらっています。まだまだ未熟な者ですが勇ませてもらっているつもりです。天理教では頑張るということを勇むと言うんです。
 その天理教のこととかですが。今からお話させて頂きますね。ええと・・・・・・。
 あっ、すいません。お客様です。今詰所の事務所の受付にいるんですが誰か来られました。・・・・・・また彼です。
「すいませ〜〜〜〜ん」
 如何にも軽そうな男の子の声。黒い詰襟の天理高校の制服と青いビニールのカバンを持っています。背は高くて痩せていて薄茶色の髪に二重瞼で細長い顔。また来たのね。
「あの、君」
「はい」
 不機嫌そのものの声で応えてあげます。今日は何しに来たのかしら。
「人を探しているんだけれど」
「どんな方ですか?」
「あの、背は一五〇位で」
 はいはい、どうせわたしはチビですよ。何か小学校高学年で止まってしまってそれ位しかありません。仇名も『チビちゃん』とか言われてきました。私の名前は『ちさと』と読むんです。それで『ちっちゃん』とか『ちっち』とか言われてきましたがこんな仇名で呼ぶ人もいます。もう馴れました。
「髪は黒いストレートのショートヘア」
「黒のショートですね」
 子供の頃からこの髪型です。自分では気に入っています。何気に伸ばそうかな、とも考えていますけれど。
「そうそう。それでね」
「他には何か?」
 ムッとした顔で聞いてあげます。もうわかっていますから。
「目は二重の垂れ目で小さめで」
 ええ、垂れ目ですよ。しかも少し小さいし。垂れ目は気にしてます。・・・・・・実は胸がないのと同じ位。けれどそれはあえて自分では言わないですけれど。
「顔が白くてね。それで名前は」
「名前は?」
 どうせ私のことですけれど。いっつもいっつも失礼しちゃいます。
「中村千里さんです」
「中村千里さんですね」
「うん。ちょっと呼び出して欲しいんだけれど」
「…・・・何か用?」
 眉を顰めさせて言いました。彼にはよくこうした態度を取ります。
「今日は」
「ああ、先輩」
 けれど彼の態度はあらたまりません。相変わらずの様子です。
「そこにいたんだ。わからなかったよ」
「嘘でしょ。最初からわかっていたのに」
 毎日ですから。もうわかっています。いい加減にして欲しいです。
「だって。小さいし」
「貴方が大きいの」
 ジロリと彼を見上げて言いました。本当に背が高いから。私なんてつむじを上から覗き込まれたことがあります。それでつむじの形がどうとかまで言われたことが。
「私は別に・・・・・・あまり」
「まあまあ。小さくても気にしない気にしない」
「阿波野君が言ってるんでしょ」
 またムッとした顔で言い返しました。本当に頭にきます。

 
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