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ロボスの娘で行ってみよう!

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第17話 エル・ファシルの英雄達


グタグタぽい。
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第17話 エル・ファシルの英雄達

宇宙暦788年6月1日

「囲まれましたー!」
船橋内にオペレーターの悲鳴が走る!
ラップとヤンが小声で話し合う。

「ヤン、万事休すか」
「前門の虎後門の狼と言う奴だけど、未だ何か有るはずだ」
「そうだな、此処で諦めるわけには行かない」

そう言っている間にも敵艦が近づいて来る。
「あと30分で完全に囲まれます」
「前方の艦隊から指向性レーザー通信確認」

「読んでくれ」
「我、第8艦隊、我、第8艦隊、騎兵隊参上!貴船の船籍を問う」
「味方だーーー!!」

「助かったー」
船橋で歓声が上がる。
ヤンとラップが直ぐさま連絡を行う。

「我、エル・ファシルより脱出中、敵艦が後方で追撃中、救援求む」
「了解、全速で当艦隊後方へ逃げよ、後は任せろ」
発光信号で連絡しあいながら、輸送船団と同盟軍第8艦隊がすれ違う。

「ラップ、やったな」
「ヤン、助かったな」

「味方の艦隊だ!」
「援軍が来たぞ!」
「万歳ー!」

船団の彼方此方で歓声が上がっている。
敵艦隊は欲に目がくらんでいるらしく中々気がつかない様で、未だに全速力でバラバラに追撃してくる。

ヤン達の船が艦隊の下をすり抜けるとき艦隊司令部との連絡を行った。
モニターに現れるのは、シトレ司令官以下の艦隊スタッフである。
その中にミイラが居たのはヤン達も驚いた。

「ヤン中尉、ラップ中尉、リンチ司令官はどうしたのかね?」
「司令官閣下は銃撃され重態であります」
「戦闘があったか」

「いえ、参謀長が裏切りました」
考え込むシトレ。
「そうか、詳しい事は後でだな、1個戦隊を護衛に付けるので先にシャンプールへ向かえ」
「はっ」

その後ヤン達は1個戦隊の護衛を受けて翌々日無事にシャンプールへと到着し喝采を浴びるのである。


■エル・ファシル〜シャンプール間の宇宙空間   帝国軍追撃艦隊

折角の農奴300万人に目の前でまんまと逃げられた艦隊は、農奴の癖にと怒り心頭で全く纏まりのない状態で追撃を行っていた。一度はリヒテンラーデ侯の調停で配分が決まったが、それはそれで逃げた以上は捕まえた者が多くを得られると多くの者が言い出した為に、各貴族の私兵が目の色変えてお互いを牽制しつつ追撃をしているのである。

「あと少しで追いつけるぞ!」
「若いイイ女は頂きだぜ!」
「ぬかせ、貴様に負けるか!」

馬鹿貴族共の私兵集団がバラバラに追撃してくる為に艦隊は細長い帯が多数有る状態でバラバラである。同盟軍第8艦隊は銀河基準面より上方を斜め上から突撃を始めていた為に殆どの敵艦は気がつかないうちに11光秒まで近づかれていた、それでも気がつく艦はある。

「前上方に多数の光点あります」
「なんだ?」
「敵の増援ではないでしょうか?」

「まさか」
「しかし、味方でないことは確かです」
「不味いぞ、戦闘用意!」

「敵艦発砲!」
「直撃来ます!!」
「うわーーーーーー」

直撃受け爆発する艦が次々と出る。
銀河に大輪の花が咲く。
帝国艦隊はパニックになりバラバラに逃げ始める、元々戦闘なんかは考えていなかったからである。

旗艦が数十隻も居る為に指令が滅茶苦茶に流れている。
「敵艦隊です!」
「全艦砲撃せよ!」

「回頭だ回頭しろ!」
「後退だ!」
「左舷回頭!」

「右舷回頭!」
「ワルキューレをだせ!」
「上方へ艦首をむけろ!」

てんでバラバラに動く為、艦同士が次々に接触して爆沈や大破していく。


■エル・ファシル〜シャンプール間の宇宙空間  同盟軍第8艦隊

 エル・ファシルへ急行する艦橋内ではジリジリ過ぎる時間を皆が皆、エル・ファシルへ早く早くと考えてながら緊張感に包まれていた。
ワープ後に全天レーダーに艦影が多数映り始めた。

「前方に多数の艦艇、IFF少しだけ反応します」
オペレーターの報告を聞き、サダ参謀長がシトレ司令官と話す。
「エル・ファシルからの脱出船でしょうか?」

「うむIFFが少ないのは、民間船が多数だからだな」
「後方に更に艦船有ります」
「参謀長後方は恐らく追撃艦隊だな」

「恐らくそうですな」
「味方船団に連絡をせよ。敵に気がつかれないよう指向性レーザー通信でな」
「了解しました」

シトレとサダの話しの中で次々に情報が入ってくる。
「前方は味方船団です、後方は帝国艦隊です」
「よし、艦隊上昇、銀河基準面より上方から斜めに攻撃を加える」

シトレの言葉が全艦に復唱されていき、全艦隊が上昇を始める。
上昇する艦隊の真下を船団が次々に逃げていく、その時最後尾の司令船に連絡を付ける。
映像に出たのはヤン中尉とラップ中尉であった。

「ヤン中尉、ラップ中尉、リンチ司令官はどうしたのかね?」
「司令官閣下は銃撃され重態であります」
「戦闘があったか」

「いえ、参謀長が裏切りました」
参謀長の裏切りと言う話に、艦橋内ではみんなが顰めっ面をし始める。
只1人リーファは包帯だらけの顔の下で、えっリンチ逃げなかったんだと思っていた。

「そうか、詳しい事は後でだな、1個戦隊を護衛に付けるので先にシャンプールへ向かえ」
「はっ」

第8艦隊は上昇後に追撃してくる帝国艦隊に天頂方向から斜めに急撃し攻撃を開始した。
「ウランフ提督、貴官の分艦隊が先陣を切って貰いたい」
シトレの命令にウランフが不敵な笑みを浮かべて敬礼して了解をする。

「敵は、バラバラですな。一つ教育してやります」
映像が切れるとウランフは艦隊に命令を出した。
「さあ、敵を撃破するぞ、撃って撃って撃ちまくれ!」

急進撃するウランフ分艦隊、その左右をムーア分艦隊やボロディン分艦隊が追撃していく。
各旗艦で一斉に命令が下る。
「「「ファイヤー」」」

ビームの奔流が次々に敵艦の上面へ直撃を与えていく、一瞬で帝国艦が爆炎に消え始める。それでやっと帝国艦隊が気がついたらしく、反撃をしようとし始めたが、敵信を探る通信機には帝国艦隊が滅茶苦茶な命令を出し合っているのが聞こえてくる。

「閣下、敵は混乱しているようです」
「参謀長、此処はたたみかけるぞ」
「はっ」

シトレとサダがイケイケドンドンの攻撃を行い始める。
次々と爆沈する帝国艦艇、そこをスパルタニアンが飛び回り次々に攻撃を加えていく。
帝国艦隊はのたうち回りながら逃げ回る。

第8艦隊では次々に命令が下る。
「斉射三連、撃て!」
「ミサイル発射!」

僅か数時間で帝国艦隊はバラバラに壊走し始めた。
第8艦隊は追撃を開始した。
「敵艦隊壊走していきます」
「よし、追撃する、完膚無きまでに叩きつぶせ!」

それから半日以上追撃を行い次々に沈んでいく帝国艦船、阿鼻叫喚の状態である。
第8艦隊は遂にエル・ファシルへ到着したが、エル・ファシル地上は完全に爆撃と艦砲射撃でクレーターだらけになっており、建物は完全に破壊され尽くされていた、最早当分帰還は無理であろう。

追撃はその後も続き、最終的にアスターテ星系まで追撃された帝国艦隊はバラバラに壊走していった。最終的に輸送船、揚陸艦などには既にイゼルローン要塞に逃げ終えていたが、最終的に艦艇数7589隻、補給艦、工兵艦、揚陸艦など562隻、農奴輸送船870隻で艦艇兵員数96万2945名のうち帰還できたのは、補給艦、工兵艦、揚陸艦など562隻、農奴輸送船870隻と艦艇752隻だけであり、兵員12万8626名と地上部隊9万8755名だけで大敗北であった。更に多くの貴族の一門が戦死や捕虜になり帝国内で大問題が発生したのである。

第8艦隊は、最終的にアスターテ星系で追撃を打ち切り帰還した。シャンプール星系に帰還したのは6月12日の事であった。シャンプールへ帰還した第8艦隊は大歓声を持って迎え入れられた。
既に6月3日にはヤン達が到着していて、マスコミに揉みくちゃにされ、重傷のリンチ司令官とヤン中尉、ラップ中尉達がエル・ファシルの英雄達とマスコミに騒がれていたのである。

リンチ司令官は、自らを犠牲にして民間人を守ろうとし、凶弾に倒れた悲運の司令官として。ヤン中尉は、エル・ファシルへ偶然居合わせながら脱出計画を親友のラップ中尉と作り司令官負傷の後を継いで民間人の脱出に力を尽くしたと。ラップ中尉は、病気がちなのにも関わらず、ヤン中尉と共に脱出の中心的な人物として、賞め称えられていたのである。

また緊急に救援艦隊を牽いたシトレ提督もエル・ファシル救援の英雄として、
マスコミに騒がれていたのである。

ヤンやラップそしてシトレにしてみれば鬱陶しいだけであるが、エル・ファシルの参謀長ジョイス准将が民間人を売り渡そうとして、リンチ司令官を銃撃した事が何処からか表に出てしまった為に、国防委員会も統合作戦本部も宇宙艦隊司令部も、任命責任を受ける可能性が出た為に、ヤン達4人をエル・ファシルの英雄達として、大々的に宣伝する事にしたのである。

ヤンやラップはマスコミの攻勢を避ける為に命令で避難民と共に輸送船団で、ハイネセンに6月8日に旅立っていた。シャンプールに到着した、第8艦隊もマスコミの攻勢にさらされて、シトレがエル・ファシルの英雄の1人としてインタビューを受けたときいった言葉に国民が感動を得たのである。

「皆さんは、私をエル・ファシルの英雄と言うが、私だけが英雄ではないのです。第8艦隊員達、エル・ファシルの方々、シャンプールで整備や補給をしてくれた人々、途中の星系の方々、戦死した兵達、そして救援を直ぐに許してくれた上層部も皆が皆英雄なのです」

その放送を聞く、国防委員会も統合作戦本部も宇宙艦隊司令部もホッとして居たのである。多くの者が、シトレ司令官のお陰で軍の面子が保たれたと思い感謝したのである。第8艦隊は補給艦と合流と整備後の6月20日にハイネセンへの帰途についた。

帰りもリーファプランの航路を取った結果、ハイネセン到着が7月15日前後に到着予定であり、通常航路を使う、ヤン達輸送船団もほぼ同じ時に到着予定であった。

帰投中の6月30日士官学校卒業式があり、リーファは艦上からTV電話で参加したが、顔の包帯を見られて恥ずかしかったそうである、皆とは次回会おうと言ったが、数㌫がそのまま永遠の別れになったのである。

リーファの怪我に対して、ロボス校長とシトレ司令官と夜遅くまで話し合いをしており、シトレ司令官がロボス校長に頭を下げて、娘を怪我させ済まないと謝っていた。
ロボスは先にリーファから話を聞いていたので、シトレを笑って許したのである。

「ロボス、娘さんの顔に怪我をさせて本当に済まなかった」
「シトレ、リーファの根性が見えたんだろ、あの子ならそれぐらい大丈夫だ、お前のせいでは無いのだから気にするな」
「済まないな」
此により久しぶりにシトレとロボスの蟠りが多少なりとも消えたのである。

リーファは艦上で少尉に任官したのである。
リーファ自身は秘匿の為に、エル・ファシルの英雄には含まない事が決まったが、平気の平左であった。ヤンやラップに英雄を擦り付けたのをほくそ笑んでいたのである。

 
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