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NEIGHBOR EATER

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EATING 4

歩き初めて数時間、これ迄に数々のネイバーを倒し、喰らった。

既に夜の8時を回っている。

「ねぇ、迅」

「何だ?天使ちゃん?」

その天使ちゃんってやめて欲しい。

でも名前を教えたくはない。

「お前等って何処から来たの?」

「俺達は一応こっちの世界の人間だ」

「あっそ」

なら、何故コイツらはネイバーを知ってるのだろう。

「お前等はなんでネイバーと戦うんだ?」

「なんで戦うか、か…力があるから、かな」

「そう…俺は板…トリオン器官が喰えればいい」

板はトリオン器官というらしい。

「天使ちゃんはどれくらいトリオン器官を食べたんだ?」

どれくらい?

ん…迅と歩き初めてからは数えてないからな…

迅と合流する前は…

巨体のネイバーが10から20位で今まで30体近く

光のネイバーが5から10で40体くらいだから…

「迅に会うまでにたぶん600くらい?
後は数えてない」

「な!?」

迅の眼に浮かぶのは、驚愕、恐怖。

「俺が怖い?」

「………」

迅は答えない。

「ふふ、迅も一度食べてみるといいよ」

「……遠慮しとく」

ふぅん…

「俺が喰うことには何も言わないんだね」

「………」

「ねぇ、なんで?俺を怒らせたら怖いから?俺ってそんなに怖い?」

自分でも異常だとは思う、でも、あの全能感を味わえばもどれない。

「俺達の武器はトリガーって言うんだ」

迅は唐突に語りだした。

「普通、トリガーっていうのは機械なんだ。
だけど稀に人がトリガーになる事がある。
そういう、人からできたトリガーを特別に
ブラックトリガーって言う」

トリガー…ネイバーの武器…

ブラックトリガー…人がトリガーになったもの。

「天使ちゃんの力は多分ブラックトリガーだ」

この力がブラックトリガー…

「ブラックトリガーは元々人だから癖が出る。
天使ちゃんがトリオン器官を食べてるのはそのせいだろ?」

え?

「ふふ、はは!アハハハハ!」

ブラックトリガーのせい?

「いいよ、迅は俺に教えてくれたから俺も話すよ。
迅はブラックトリガーのせいって言ったけど、逆だよ」

「逆?」

「トリオン器官を食べてたらたまたまブラックトリガーを食べたのさ」

「ど、どういう事だ?」

「学校の帰りにネイバーに襲われてさ、鎌をもぎ取って帰り打ちにしたんだ」

「あ、ありえない…」

「ありえない?迅『ありえない、なんて事はありえない』だぜ」

図書館で読んだ漫画のセリフだ。

「そしたら倒した筈のネイバーが動いてさ、びっくりして何度も鎌で突き刺してたら中からトリオン器官が出てきてさ」

それから…

「俺の中の何かがそれを喰えっていうんだ。
そして従ったら何かが溢れてきてさ!
それから小さいのも大きいのも狩ったんだ!」

やがて巨体のネイバーを倒し…

「そしたら黒い板が出てきてさ、食べたらこの有り様だよ。
結構苦しかったんだよ?」

「じゃぁ、最初のトリオン兵は素手で倒したって言うのか?」

「うん、目の前にバリアみたいなのが出てさ、鎌が逸れたから引き千切ったんだ」

「そうか…そうか…そういう事か…」

ん?

「そういう事?」

「天使ちゃんは、死に際にトリオンの壁を作ったのさ。
トリオン能力が高いとトリガーを使わなくてもバリア等を張れる…可能性が無くも無いらしい。
そして枯渇したトリオンを回復したくてトリオン器官を食べたんだろう」

ふぅん。

「まぁ今となってはどうでもいいけどね」

至極どうでもいい。

「そうかい、ん?」

迅が耳の機械に触った。

上司からだろう。

「はい、………はい………一緒です……了解」

今度の通話は短かった。

「なんて?」

「もうネイバーの増援は無さそうだって。
これからは殲滅戦だ」

せんめつせん?

「どういう事?」

「これ以上ネイバーは増えないから今居るのを全力で潰せってさ」

「わかった…少し飛んで来る」

俺は空へ空へと向かう。

「わんさか居るなー」

夜の闇の中、ネイバーの眼が星のように散らばっている。

「全力で潰せ、だろう?」

掌を天に掲げる。

「力を、もっと力を!」

俺の中だけじゃなく、地上からもトリオンが集まって来る。

直径2メートルの大珠。

圧縮率はビー玉やサッカーボールと一緒。

「消えて無くなれ!」

幾百、幾千の光がネイバーの眼の輝き目掛けて直進する。

ズドォォォォォォォッオオオオオン!!!!!

大地が揺れる。

煙が晴れた跡には点々と光が有った。

直撃を避けたネイバーだろう。

「ま、後はボーダーに任せよ」

迅の下へと降り立つ。

「殲滅戦、やって来たよ」

迅は頭を押さえている。

「やり過ぎだ」

「人は死んでないよ。目だけ狙ったから。
建物もここまで壊れてたら後は一緒さ」

近くに人が居ない事は視えていた。

「はぁ…」

中途半端に壊れてるよりぶっ壊した方が楽って聞くし。

「じゃぁ、後はボーダーに任せるよ」

「帰るのか?」

「いや、帰る場所は吹っ飛ばされたし、家なんて呼べるものは元々無いよ」

「………わるいな」

「謝んないでよ。でさぁ迅」

「なんだ?」

「迅の上司の所に連れて行って?」
 
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