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儚き想い、されど永遠の想い

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91部分:第八話 進むだけその八


第八話 進むだけその八

 そのうえで白い砂浜と青い海を見てだ。こう真理に話した。
「一つ思いついたのですが」
「何でしょうか」
「次は森に行きませんか」
「森にですか」
「街には行きましたね」
「はい」
 最初のだ。マジックに行った時のことだった。
「あの喫茶店に」
「そして今はこうして砂浜を歩いています」
「海辺を」
「それならです」 
 この二つの場所を踏まえてだ。それもあってだというのだ。
「森に行きますか」
「日本の森に」
「流石に独逸の森は無理ですが」
 それはだ。苦笑いで言うのだった。
「ですが日本の森ならです」
「行けますね」
「だからです。どうでしょうか」
 微笑んでだ。真理に尋ねるのだった。
「次は」
「そうですね。ですが」
「ですが?」
「それは最後に決めたいと思います」
「最後にですか」
「はい、今はこうして砂浜を歩いています」
 二人の足元に波が来る。その音を音楽としてだ。歩いているのだ。
「この砂浜を楽しんでから」
「そうしてですね」
「決めて宜しいでしょうか」
 義正に顔を向けてだ。そのうえでの言葉だった。
「そうして」
「わかりました」
 義正は笑顔でだ。真理のその言葉に頷いた。そうしてだ。
 彼もその波の静かで一定のだ。整った曲を聴きながら述べるのだった。
「それではその時に」
「はい、今の最後に」
「お話しましょう」
「そういうことで。それにしても」
 真理は今度は海を見た。その海は。 
 青く何処までも澄んでいる。そして空の青とだ。果てで一つになっている感じだった。二つの世界がだ。果てで一つになっている感じであった。
 濃い青と淡い青だ。だがどちらも青だ。その二つの青がなのだ。どちらも静かにそこにある。その二つを見て彼女は言うのであった。
「こうした場所を」
「この須磨を」
「見られるのは幸せですね」
 優雅で優しい微笑みでの言葉だった。
「本当にそう思います」
「ええ、確かにそれは」
「海がこれ程まで奇麗だとは思いませんでした」
「そうだったのですか」
「宝石を。溶かした様で」
 そこまでだ。美しいというのだ。
「空もあって」
「海だけではなく」
「しかもそれが一つになっていて」
「そうですね。果てで一つになっていますね」
「二つの青が一つの青になっていますね」
 こう言うのだった。
「それがいいですね」
「そうですね。一つの青に」
 また話す真理だった。
「こうした景色は。今までは」
「御覧になられたことはなかったですか?」
「あります。ただ」
「ただ?」
「ここまで意識したことはないです」 
 そうだというのだ。
「この空と海が一つになっている景色をここまで意識したことは」
「ないのですか」
「はい、ないです」
 また話す彼だった。
 
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