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儚き想い、されど永遠の想い

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85部分:第八話 進むだけその二


第八話 進むだけその二

「それがよい相手ならば永遠の幸福となる」
「ソクラテスの言葉ですね」
「そうだ。ただしだ」
 義愛はここで悪戯っぽい笑顔になった。そうしてだ。
 あらためてだ。義正だけでなく義智にもだ。こう話した。
「悪い相手なら哲学者になるかというとだ」
「そうではない」
「違うのですか」
「それもまた幸せとなる」
 そうなるというのである。そしてであった。
 それが何故かをだ。彼は話したのだった。
「幸せを見つけようとするからだ」
「その悪い相手に対してですか」
「そうなると」
「人は誰でも幸せを求める」
 義智の言葉だ。
「誰でもだ」
「それは当然のことですね」
「他人に迷惑をかけない限りはだ」
 そうしていいとだ。義智は話すのである。
「そうしていいのだ」
「むしろですね」
「そうしなければならない」
 絶対にだとだ。次兄は末弟に話す。
「人間ならだ」
「人間なら幸せにならなければならない」
「最近言われてきた話ではあるがな」
 所謂西洋からの考えだ。自由主義や民主主義という考えだ。
「そうするべきだな」
「わかりました。それでは」
「義正は真面目だからな」
 義愛がだ。また笑ってみせて彼に言ってきた。
「こう話すとな」
「どうしてもそのことに集中してしまいますね」
「しかも一直線にな」
「それはよくないことでしょうか」
「いや、それでいい」
 義愛は末弟のその考えや行動を否定しなかった。
 そしてだ。こうも話したのだった。
「若いうちはな」
「一直線でいいのですか」
「人生の経験は。とはいっても私もまだ若いが」
 軽い苦笑いも少し入れて話す。
「それでもだ。人生の経験は嫌でも学んでいく」
「だから今はですか」
「そうだ。一直線でいい」
 また話す義愛だった。
「今の義正はな」
「わかりました。それでは」
「幸せを一直線に追い求めることだ」
「はい」
「そしてその幸せを手に入れる」
 追い求めるならだ。そうあるべきだというのだ。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
 こんな話をしたのであった。そしてだ。
 その日曜にだった。真理と共にその砂浜に行くことにしたのであった。
 真理もだ。笑顔でだ。喜久子と麻実子にこう話すのだった。
「源氏物語ですけれど」
「紫式部のですか」
「あの古典ですね」
「そうです。あのお話です」
 須磨のことを考えながらだ。二人に話す。
 今彼女達は図書館のロビーにいる。そこのイギリス風の椅子とテーブルに座り本を広げながらだ。二人に話をしているのである。
 彼女はだ。こうも話した。
「あの源氏物語で源氏の君が流されて」
「この神戸のですね」
「須磨にですね」
「はい、そのことです」
 そのだ。須磨の話をするのだった。
 
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