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ソードアート・オンライン 宙と虹

作者:ほろもこ
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6

ルール違反をしたら殺す。ゲームで死んでも殺す。つまり、これはデスゲーム。命を懸けた、遊び。いや遊びではない。文字通りのサバイバル。

そんな状況で、誰がゲームの攻略をするというのだろう。プレイヤー全員がはじまりの街に籠るだけだ。
しかし、その思考を読み取ったかのように次なる託宣が、この世界における神の存在から降りた。

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層までたどり着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

無理だ、と思った。現実世界で、SAOのベータテストの時の話を、いろんな情報サイトで見て回ったが、攻略できたのは百ある内の九層、到達できたのは十層までだったと聞く。
そんな無茶なゲームを、最後まで攻略する?それが終わるまで、現実に戻れない?

つい数時間前まで、電源を入れていたパソコンや読みかけの小説、書きかけていた小説などが思い出される。それらに、今後少なくとも一年は触れることはないと、そう言ったのか。

「馬鹿馬鹿しいにも程があるだろう……」

しかし、現実を否定しようとも、時は流れる。茅場の言葉は続いていく。

『それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

それを聞いてすぐに、右手を振った。他のプレイヤーも同じように右手を振ってメニューを呼びだしたのだろう。広場中に、軽やかな鈴の音が響く。

ストレージにあったのは、《手鏡》。オブジェクト化すると、それは特に何の変哲もない、ただの手鏡だった。覗き込んでも、そこに映るのは俺が苦労してログイン前に組み上げたアバターだけだ。

次の瞬間に、アバターを白い光の柱が包み込む。何事か、と思う間もなく光は消滅し、周りの光も消え去ったようだった。

しかし、周りを見渡すと、そこには先ほどまでの美男美女の群れはなかった。明らかに平均身長は下がっているし、プレイヤーの男女比も変化している。

何が起こったのか、直感的に悟った。もう一度鏡を覗き込むと、限りなく白に近い銀髪に、青と黒が混じり合った不思議な色の瞳。紛れも無い、現実世界の俺がそこにいた。

「やっぱり……」

一体どうやったらこんな芸当が可能なのか。いや、考えても詮無きことだ。今は、ただ、茅場の言葉に耳を傾ける方が利口だろう。

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は――SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と』

今まで何も読み取れなかった声色が、わずかな感情を帯びるがそれが何かは分からない。

『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

短い間をおいて、無機質さを取り戻した茅場の声が響いた。

『以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君の――健闘を祈る』

次の瞬間に、広場上空から赤ローブは消えて、赤く塗りつぶされた空は、橙の閃光を引いて、夜に近づきつつあった。

消え去った赤ローブは、どれだけ待っても二度と、現れなかった。

今更ながらに状況を理解した(無論俺もだった)プレイヤー達は、本来もっと早く取るだろう行動を、遅まきながらに起こした。

「嘘だろ!? ログアウトさせろよ!」
「いやあああ!!」
「ふざけるなよ! これから約束があるんだ!」
「出してよ!! ここから出してぇ!!」

俺は、叫びこそしなかったものの、かなりの恐慌状態に陥っていた。今後当分の間、現実世界に帰ることは出来ない。その認識が確定したものとなって、膝が震えだした。

しかし、取るべき行動は、早かった。今のうちに宿を取っておかないと、寝床はあっという間に埋め尽くされる。いくら街が広いといっても宿屋の場所は限られている。ならば早めに宿を取るべきと、焦りながらもそう思った。

恐慌状態にある他のプレイヤー達を尻目に、広場からもっとも近い宿を探して、しばらくそこで過ごすことにした。


俺は、最初に覚えたソードスキルの快感も忘れて、ひたすら約二週間、宿屋に閉じこもっていた。

外部からの助けは、どれだけ待ってもこなかった。
 
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