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ロボスの娘で行ってみよう!

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第10話 エル・ファシルへ


ヤンが渋々エル・ファシルへ向かいます。
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第10話 エル・ファシルへ

宇宙暦788年4月16日

■自由惑星同盟首都星ハイネセン テルヌーゼン市 同盟軍士官学校

ヤン・ウェンリー中尉は昨日上司グリンーヒル少将に命じられた、士官学校へ訪問をしていた。
「ヤン・ウェンリー中尉であります」
「入りたまえ」

ヤンが校長室へ入るとそこには、案の定リーファが妙に神妙な顔をして校長と共に待っていた。
「ヤン中尉、いきなりの事で驚いているだろうが、貴官にエル・ファシルへの出張をしてきて貰う事に成った。明後日に巡航艦ミランダがハイネセンを立つので、それに乗り向かって貰うよ。詳しい事はロボス候補生に聞いてくれたまえ」

ヤンはえーっという感じで渋々返事をした。
「はぁ、謹んでお受け致します」
そしてやっぱりリーファの策謀かよと思いつつ、エル・ファシルにはラップがいるから未だ良いかと思っていた。

「ヤン先輩、ご迷惑をおかけしますが宜しくお願いします。では応接室へ行きましょう」
「校長失礼ます」
「ヤン中尉、すまんが宜しく頼むよ」
「はっ」

リーファに連れられて、隣りの応接室へ入る。
「リーファ、何を私にさせたいんだい?単なる、同期会じゃないことは判るけどね」
「いやー先輩すみませんです、論文書いていたら、現地調査が必要になりましてね」

「エル・ファシルのかい?ラップに頼めば資料ぐらい手に入るだろう?」
「以前ラップ先輩に頼んで既に答えも貰ってるんですけどね」
「じゃあ、私が行く必要は無いんじゃないか?」

ヤンは、あくまで、面倒くさいから行きたくないらしい。
「先輩、面倒くさいと思ってるでしょ?」
ヤンは、流石リーファは鋭いと、ビクッとする。

「いやそんな事はないよ」
「判りますよ、何年付き合ってきたと思うんですか」
「リーファには敵わないな」

「フフフ、ラップ先輩からの答えだけでは現地の切迫した状態とかが判らないじゃないですか、ラップ先輩が悪いとかじゃなくて、やはり仕事中ですからエル・ファシル自体の細かいことがよく判らないですよね、そこで先輩に行ってきて貰おうと、親父とグリーンヒル少将にお願いしたんですよ」

ヤンはベレー帽を左手で取ると右手で頭を掻きだした。
「するとなにかい私は、リーファの卒論の為にエル・ファシルへ行かされるのか、校長も公私混同が甚だしいんじゃないか?しかも上司であるグリーンヒル少将まで巻き込んで」

「まあ、先輩そう言わないで、此には訳がありましてね。先輩の所からも参謀が此処へ出張できているのを聞いているでしょう。あれは統合作戦本部も同じなんですよ」
「士官学校に参謀連中が来るのはさほど珍しくはないけどね」

「何故集まったかが重要なのですよ」
「なんでだい?」
「私の卒論を読む為ですよ」

ヤンは。呆気にとられた後で、呆れた顔をする。
「おいおい、リーファ冗談はよしてくれ」
リーファはくそ真面目な表情でヤンに話しかける。

「先輩、冗談じゃありません。此を読んで頂ければ判りますが」
そう言って、閲覧可能な論文を見せる。
「どれどれ、ん・・・・・・・・・・これは」

ヤンが難しいか顔をし始めた。
「どうですか、先輩」
「ああ、凄いなたいした物だが、此がなにか関係があるのかい?」

「その論文だけじゃなくて、統合作戦本部と宇宙艦隊司令本部しか閲覧が出来ない論文が三個もありましてね、その為に自分自身がエル・ファシルへ行くことが出来なく成ったんですよ」
「つまり、機密漏洩を恐れたという訳か」

「そうですね、万が一捕虜にでも成ったら、大変な事に成る訳ですから。グリーンヒル少将に全力で止められましたよ」
「やれやれ。それで、私に白羽の矢がたったのかい」

困り顔のヤンとしたり顔のリーファである。
「先輩が一番暇だとお伺いしましたんで」
「何とも酷い後輩を持った物だよ」

「けど行って貰う代わりに、ナポレオン戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、日露戦争の記録ディスクを差し上げますよ」
リーファはニヤニヤし、ヤンは驚いて欲しそうな顔をする。

「リーファそれは本当かい?」
「あら先輩、私が嘘をついたことがありますか」
いや有りすぎだろうと思うが言わないでおくとヤンは思った。

「実物を此処へ持ってきてあるのでそのまま持って行って良いですよ」
リーファは、そう言いデスクの束を渡す。
「少し見て良いかな?」

「ええ、けど少しですからね、話を聞いて貰わないと行けないので」
「ああ、判ってるよ」
そう言いながらヤンは早速ディスクを卓上プレイヤーに入れて見始めた。



一時間ほど目を釘付けにして見続ける。その間にリーファは御茶を取りに行ってきた。
シロン製茶葉で入れた紅茶はまろやかな香りを醸し出している。
ヤンはやっと気がついて、紅茶を一杯飲んで見るのを止めた。

「気が済みましたか、ヤン先輩」
「すまないね、ついつい夢中になってしまった。しかし良い資料だな、モスクワ遠征とか良くできているよ、此は他のディスクも楽しみだね」

「と言うわけで先輩。エル・ファシルへ行って貰いますよ。いいですね」
「まあ此を貰っちゃ、行かないわけにはね。でどんな事を見て集めれば良いんだい?」
リーファは、どうせ行ったら直ぐに騒動に巻き込まれるのが判っているからと思いながらも、ある程度チャンとした物を頼まないと怪しまれると思い題材を上げるのであった。

「ぶっちゃけ、エル・ファシルの防衛、風土、地理、植生などの諸々の調べですね。
詳しい事はこの資料に書いてありますからお願いします。それとこの論文を持って行って下さい。
此が無いと出来ないんですよ、必ず持って行って下さいね」

「ああ、必ず持って行くよ」
「忘れたら、ジェシカさんに言いつけてやるから」
「おいおい、ジェシカは関係ないだろう」

「フフフ、先輩がジェシカさんに恋しているのはとっくに知ってるんですからね」
「うー、判ったよ、私の負けだよ」
「お願いしますね。ヤン先輩」

「じゃあ、そろそろ戻るよ」
「先輩ありがとうございました」
「こう言う時だけ礼儀正しいんだからな」

「女は化ける物ですよ」
「アッテンボローもそれにやられたのか」
「ええ、そうですよ」


ヤンが職場へ戻ると、リーファも寮へと帰った。

んーヤン先輩のたき付け終了。やはりあのディスクは効いたね。態々フェザーン経由で帝国から手に入れた甲斐があったよ、結構高かったからね。フェザーンがぼったくりやがって!まあ、エル・ファシルの英雄フラグなら安い物だけどね。

あとは、事件が起こったら親父と元校長とグリーンヒル少将の線でリンチ少将の名誉を汚さずに済むように工作しないとだ。ヤン先輩が司令官だけ逃げた宣言が一番厄介だけど、その辺は後で先輩に口止めしておけばOKだろうけど、元校長に確り言って貰った方が良いな。

さて此方も遠洋航海が5月始めだからそろそろ準備をしないとだね、遠洋航海は許可されたからOKだし、搭乗艦隊がシトレ提督の第八艦隊だから面白いね。
お風呂でも入ろう〜♪


宇宙暦788年4月18日

ヤン・ウェンリー中尉はハイネセンからシャトルで軌道上へと旅立つ。見送りにリーファだけでなく、ジェシカが来ていたので緊張しての出発だった。

ハイネセン第5軌道ステーションへ到着後、巡航艦ミランダにより、エル・ファシルへと向かった。ヤン・ウェンリー中尉がエル・ファシルへ向かうことが既定の路線で有ったかのように航海は順調に進むのであった。エル・ファシル到着は2週間後の予定である。

ヤンが出発後、リーファが呟いた。
エル・ファシルの英雄達か。
誰も聞こえない声で有った為、近くにいたジェシカも聞こえなかった。
 
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