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天体の観測者 - 凍結 -

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諸君、敵襲だ

 リアスを華麗にスルーし二度寝を決め込んだウィス。
 狸寝入りである。

「何普通に寝ようとしているのよ!」

 だが容赦なく布団をリアスに剝ぎ取られてしまう。

おのれ、我が快眠の邪魔をするとは。
リアス、許すまじ。

「……何なんですか、一体?こんな真夜中に?非常識ですよ。」

 恨めし気に半眼でリアスを見つめるウィス。
 普段のフランクな口調とは異なり、今のウィスは丁寧口調へと変化していた。
 静かに怒っている証拠だ。

「だから私の処女を貰ってほしいと言っているのよ!」

 夜這いであろうか。
 見れば彼女は尋常ならざる様子で此方に懇願している。

 リアスは時間が惜しいとばかりにウィスの膝の上に跨り、服を脱ぎ始めた。
 瞬く間に下着だけの姿になり、ブラに手をかけ始めている。

いや早いよ、展開が。

「……それでご用件は一体何なんですか?」

 聞き間違いの可能性を考え、ウィスは彼女の奇行の理由をもう一度尋ねる。

「だから私の処っ!《small》処ッ《/small》…《xsmall》処女を《/xsmall》……。」

 彼女の声は最後になるにつれて徐々に尻すぼみに弱々しいものになっていく。
 本当に何しに来たのだろうか。

「─。」

 眠たげな意識のなかウィスは現状の理解を試みた。


 処女、とどのつまり既成事実。

 悪魔世界でも有数の貴族であるリアス。

 このことから連想されるのは貴族社会絡みの政略結婚。

 彼女のなりふり構わない様子を見るに縁談相手が相当毛嫌いしている相手なのだろうか。


「政略結婚絡みですか?」

 ウィスは容易に物事の核心を突く。

 途端リアスは狼狽え、実に分かりやすい反応をしてみせた。
 驚きのあまりリアスの胸を覆っていたブラは彼女の手から滑り落ち、彼女の大きな果実がウィスの眼前へと晒し出される。

「その様子を見るにどうやら当たりらしいですね。」
「う…うん。」

 リアスはしおらしくうなだれる。
 対するウィスは変わらず仏頂面を浮かべている状態だが。

「つまり私の元に赴いた理由は既成事実を作るためであり……」

「政略結婚を阻止するために今夜は夜這いに来たというところでしょうか?」

「アッハイ。その通りです。」

 一周回って冷静になるリアス。

「だからと言って何故私の家に来るんですか?貴方には木場や一誠という眷属がいるでしょう?」

 そんな彼女に構わずウィスは正論に正論を重ねる。

「そっ…それは、その…。」

 途端しどろもどろな様子を浮かべるリアス。

「─。」

 どうも解せない。
 ただの知人関係である男の寝床へ深夜の時間帯に夜這いに来る理由が。
 それともそういった常識に頭が回らない程に彼女は追い詰められているのだろうか。
 眷属でもない自分に頼る程に。
 それともリアスと彼女の眷属では解決できない程に縁談相手の悪魔との実力が隔絶しているのか。

 疑問は尽きない。
 思案気にリアスを見据えるウィスの知覚範囲内に突如魔力が出現した。



 室内に迸る魔力。
 先程と同様に寝室の床に魔法陣が現れる。
 寝室は再び光に満たされ、ウィスとリアスの2人を照らし出した。 

 光が収まり、魔法陣が光っていた場所には一人の女性の悪魔の姿が。
 奇行に走ったリアスを止めるべく遣わされた使者であろうか。

「リアスお嬢様。婚約を破断させるために眷属でもない見ず知らずの下賤な男に操を立てるおつもりですか?」

 メイド服越しでも伺える魅力的なプロポーション。
 銀の髪に、此方を鋭く射抜く銀の瞳。
 その佇まいは洗練され、その身には莫大なまでの魔力が宿っている。

 このことから彼女が余程の手練れであることは間違いないだろう。

「貴方は?」

 "下賤"と出会い頭に呼ばれ、何も感じないわけではないがウィスは彼女が誰なのかを尋ねた。

「申し遅れました。私はグレモリー家にお仕えするグレイフィアと申します。この度はリアス王女様がご迷惑をおかけました。」

 グレイフィアと呼ばれる女性悪魔はウィスへと深々と頭を下げる。
 見知らぬ男性にさせメイドとしての本分を尽くすその心意気、正にメイドの鑑である。

 だが一見冷静沈着な様子のグレイフィアの内心は荒れに荒れていた。

 そう、眼前の男の存在そのものに。
 彼からは全くと言っていいほど何も(・・)感じないのだ。
 魔力も、光力も、神機所有者特有の気配も感じない。
 ましてや生きとし生ける全ての生物が有する生命の躍動さえも。

 本来ならばいくら力を抑えていたとしても何も感じないことなどありえない。
 故にグレイフィアは眼前の男の存在を御しきることができなかった。

 己の主であるリアスと何らかの関係を持っているのならばただの一般人である可能性は低い。
 何らかの特別な力を有しているはずだ。

 恐らく悪魔でも、天使でも、堕天使でもないだろう。ましてや人間でもない。
 ならば本当に眼前の男は何者なのだろうか。

 疑問が尽きることはない。
 ただ一つ言えることはこの男の存在は未知数であり、自身の一存で判断していいことではないということだ。
 
 故にグレイフィアがこの男の存在を早急に自身の主であり、最愛の夫であるサーゼクスへと報告する決意をするのにそう時間はかからなかった。



 リアスはその後グレイフィアと共に魔法陣の転移を用いることでこの部屋から立ち去って行く。
 今夜の奇行の謝罪の言葉を残して。

 明日オカルト研究部に来るよう頼まれたのは予想外であったが。

 ウィスは静けさを取り戻した自室で再び寝息を立て始めた。







▽△▽△▽△▽△







 翌日、オカルト研究部

 室内にはリアスを含む眷属が全員集結していた。
 無論、ウィスの姿も。

 オカルト研究部の室内を見渡せば昨夜出会ったグレイフィアの姿も見える。

 昨夜の主犯であるリアスは何故か怒り心頭の朱乃に笑顔のまま頬をつねられていた。

 リアスは涙目である。
 かなり痛そうだ。

「あの…部長、どうしたんですか?」

 室内のこの何とも言えない雰囲気を打開しようと眷属の一人である兵藤一誠が己の主であるリアスへとよそよそしい様子で尋ねた。

「実はね……」

 部長であるリアスが今回の一連の出来事の説明をしようとした刹那─

 オカルト研究部の部室全体に大きく広がる魔法陣が現れた。
 この紋様はグレモリー家の魔法陣ではない。

「……フェニックス」

 騎士である木場が呟く。

 部屋全体を熱する程の熱気が魔法陣から放出され、炎が巻き起こる。

「ふー、やはり人間界の空気は不味いな。」

 火炎陣から現れたのはホスト崩れの男であった。

 赤いスーツを着こなし、胸元を大きく開いている。
 ワイルド系のイケメンである。

「さて、会いに来たぜ。愛しのリアス。」

 その男は実に馴れ馴れし気な様子でリアスの肩を抱き、自身の元に引き寄せる。

「離して、ライザー!」
「おいおい、何をするんだ、リアス?」

 嫌悪感を隠そうともしないリアス。

「言ったはずよ、ライザー!私は私が好きな人と結婚する!勿論婿養子だって受け入れるわ!」
「おお!それなら俺も!」
「貴方だけはごめんだわ、ライザー!」

 口論に口論を重ねるリアスとライザーという男という名の悪魔。

「あのグレイフィアさん……。あのライザーとかいう奴と部長の関係は一体何なのでしょうか?」

 この混沌とした雰囲気の中一誠は先程から悠然とその場に佇むグレイフィアへと尋ねる。

「あの方は純血の上級悪魔であるフェニックス家の三男であるライザー・フェニックス様です。そして時期グレモリー家当主であるリアスお嬢様の婚約者であらせられる方でもあります。」

「はああぁぁ!?婚約者──!?」

 一誠の驚きの声が部室内に大きく響いた。












「やはりリアスの女王の入れたお茶は美味しいな。」
「あらあら、ありがとうございます。」

 笑みを浮かべながらライザーの称賛に対して言葉を返す朱乃。
 だが彼女の目は全く笑っていなかった。
 このことから彼女もライザーのことを毛嫌いしていることが伺える。

 彼女は即座にソファーに座すウィスの隣へと腰を降ろした。
 
 ウィスはオカルト研究部の混沌とした空気をものともせずに先程から自作のデラックスストロベリーパフェを口に運ぶ。
 膝上で無言の催促を促す小猫には餌付けを行っている。
 小猫からはちきれんばかりの尻尾と猫耳を幻視した。

 同じく無言の催促を行う朱乃にも「はい、あーん」を行う。
 ウィスは朱乃からも小猫と同じく尻尾と猫耳を幻視した。

 だがウィスは終始、ライザーを射抜いていた。
 
「─。」

─弱い。余りにも。彼らと比肩するまでもない程に─

 余りにもこの世界の悪魔は弱い存在であることを再認識させられる。
 一体この世界の悪魔とはどのような存在なのだろうか。

 膝上の小猫の頭を優し気に撫でながら、感慨深けにライザーという悪魔を値踏みしていた。


あっ、一誠が吹き飛ばされた。 





 




 双方の主張を踏まえ、リアスの政略結婚騒動はレーティングゲームにて決着を行うことが決められた。

 どう考えてもリアス達が不利なのだが。
 あの焼き鳥ライザーくんは既に自身の眷属を全駒揃え、レーティングゲームの経験も豊富とのこと。
 加えてフェニックスの不死性ならぬ再生能力をあの焼き鳥くんは有しているのだ。
 現状のリアス達の力では到底彼らに勝つことは不可能だろう。

 リアス達はどこか縋るような目で此方を見ている。
 ライザーという格上の相手がこの場から立ち去ったことで緊張の糸が切れたのだろう。

 部室を静寂が支配する。
 誰もが言葉を発さない。
 否、発せない。

 ウィスは変わらずデラックスストロベリーパフェを優雅に食していたが。

ん~、我ながら上品な出来ばえ

「ウィス、その、昨日のことなんだけど……。」

 目線を弱々し気に床に下げ、覇気のない声で此方に話しかけてくるリアス。
 言うまでもなく今の彼女は彼女らしくなかった。

 そんな彼女に対してウィスは─

「そうだな。だが先ずは──









──紅茶でも淹れようか。」

 紅茶を所望した。
 
 

 
後書き
で も 自 分 で 淹 れ な い


出し切った。元気と執筆の気力を出し切ったぞ…。チカレタ…
連続投稿です。

感想、評価を待ってまーす 
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