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相談役毒蛙の日常

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二十五日目

「ボッチのお兄ちゃんが友達を連れてきたと聞いて!」

「なぁキリト、この子誰?」

まぁ、予想はついてるけど。

「妹の直葉。プレイヤーネームは、相談役も知ってるだろ?」

「あぁ、成る程、リーファか」

「え?へ?なんで私のキャラネームを…ってあれ?」

リーファの視線が俺の顔に突き刺さる。

「やっ、リアルでは初めましてだなリーファ。
俺は明日葉灯俊。ALOではポイズン・トードと名乗ってる」

「な、なんでアバターと同じ顔なの?」

「あれ?知らなかった?ALOの最初期プレイヤーはキャリブレーションのフィードバックと全く同じ顔だぞ」

「へ、へー…そうなんだ…」

ふむ、それにしても…

「うん。君もちゃんとキャリブレーションのフィードバックが出てるみたいだね」

「「「?」」」

すると気づいたのか、リーファは顔を赤くしてこちらへ近付き手を大きく振りかぶった。

「この変態蛙!」

あーあ、そんなに大きく振りかぶったら…

急いで翠さんが持ってきた盆をずらしつつ避ける。

「あ、あれ!?ちょっ!?」

渾身の一撃を回避され、バランスを崩すリーファ。

そこへ…

「あらよっと」

膝裏をやさーしく蹴ってあげる。

「嘘っ!?」

「ちょっスグっ!?」

それは見事に決まった。

「ユイちゃん、撮った?」

「ログはありますが…」

「じゃぁ、ソレをお姫様…ママにおくってあげて。
旦那と義妹の仲の良さを教えてあげなよ」

「はいっ!わかりました!」

純真だなぁ…

「いてて…すぐ…どいて…」

「ご、ごめんお兄ちゃん…」

現在の二人の状況。

リーファがキリトを押し倒してます。

しかもキリトの顔はリーファの胸に…

「リーファ、キリトのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が暴発する前に退いてやれよ」

「ねおあーむ…?」

「しねぇよ!」

え?と言うことは…

「ED?」

「ちげーよ!」

「ED?…エンディング?」

おぉう…リーファも純真だねぇ…

リーファの下敷きになっていたキリトがボソッと呟いた。

「すぐ……重い…」

あ…アカン…

リーファがシュバッとたちあがり…

「ふんっ!」

「いでぇ!?」

うーわ…えげつねぇ…

体重の事を言われて余程腹に来たようで、リーファはキリトにモモカンかまして去っていった。

フローリングでのたうち回るキリト。

「ふぉぉぉぉぉぉ…太腿がぁ…」

「あー…うん。なんか、ごめん」

五分後。

「もう大丈夫なのか?」

「大丈夫な訳ないだろう…」

「あ、そう言えばさっきの奴ってなんて呼んでる?」

「チャランポ?」

「成る程成る程…」

「いや、これ地域で呼び方違う奴だろ。
あと…『モモカン』って呼んでる奴も居たな」

「あ、俺らの学校モモカンって言ってた。
ほかにも『ホンコン』とか『ももち』とか」

そう言えば九州には『ももち浜』なる恐ろしい名前の浜辺があるらしい。

泳いだら太腿蹴られたりして…

「ALOでも痛ぇのかな…」

「痛くはないけど痺れて歩けないってオチに一票」

「今度試そうぜ」

「やだよ。あぁでも、相談役が食らう側ならいいぞ」

「はぁ?やだよ」

「つかさっきの元はと言えば相談役のせいだろ」

「記憶にございません」

「政治家かよ…」

「しょうがねぇじゃん。ロッキード事件以降、日本の政治家の記憶力は後退する一方なんだから」

「話をそらすな」

「記憶にございません」

「ユイ、ログあるか?」

「はい、あります」

「ジーザス…!」

「じゃぁ相談役で試すのは無しにしよう」

「『じゃぁ』ってなんだよ不穏な匂いしかしねぇよ」

「今度相談役がユージーン将軍で試すっていうのは?」

「サラマンダーとガチの戦争になるから却下」

「勝算は?」

「三ヶ月前までならあったけど世界樹攻略戦で資金ほぼつかったし。
どこぞの誰かの彼女を助ける為にな」

「そ、ソレはお互い様だろう」

「確かにお前の突破力無しに行けたかっつーとNOだな」

「そら見ろ」

「うーん…あと蹴って良さそうなのは…」

「クラインはどうだ?」

「キリト、お前時々クラインの扱い雑だよな。
いい加減あいつ泣くぞ」

「……………」

「ん?どうした?」

「クラインの泣き顔かぁ…」

「あぁ…聞いたら不味い事?」

「…………たぶん」

「なら聞かんよ」

「相談役ってそう言うところ優しいよな…」

「止してくれよ気持ちわりぃ。
そう言うのは女子に言え、女子に」

「俺がそんな軟派に見えるか?」

「うん」

「え…それはショックだな…」

「事実モテてるじゃんお前」

「え、あ、えっと…うん」

「認めやがったなこのハーレム野郎。
爆発しろ」

足でキリトの太腿をつつく。

「あっ!痛い!痛いから!」

「うるせー!俺達モテない男の恨みを思い知れ!」

「八つ当たりかよ!?」

「リア充は…敵!」

「どこぞの強化人間か!?」

とキリトとじゃれあっていると…

ピロン! とキリトのPCから音が聞こえた。

「キリト」

「メール?」

キリトがモモカンを食らった足を引きずりながら、机にすわった。

そうして、キリトの後ろから画面を覗き込むと…

【 from ASUNA
 to KAZUTO
件名 説明して
画像※※※※※※※※※※※】

さっきユイちゃんが送った写真についてのメールだった。

「「…………」」

するとキリトは直ぐに返信を打ち込んだ。

【from KAZUTO
to ASUNA
件名 理由
相談役が全部悪い。これ以上は会って説明する】

そしてキリトが送信をクリックしようとし…

「待てや黒の剣士ぃ…!」

その手を掴み、強制停止。

「何をする相談役ぅ…!」

「テメェ、この野郎、バーサクヒーラーに殺されるじゃねぇか…!」

「殺されろぉ…!」

キリトの両手を掴んで、ゆっくりとホールドアップさせた。

だが、俺はこの部屋にいる三人目の存在を忘れていた。

「ユイ!アスナの所に行って全部話して来てくれ!」

「はい、パパ」

「あぁ!狡いぞキリト!」

「相談役だってさっきユイにメール送らせたじゃないか!」

「記憶にございません!」

「ログあるからな」

はぁ…アホらし…

キリトの両手を離す。

「まぁ、諦めろ相談役。どのみち直葉を通してアスナの耳に入るから」

「ファック、まじファック」

「ユイの前では言うなよ」

「前向きに善処しよう」

「やったら俺ら全員が敵になるからな」

「むしろそっちの方がいい気がする」

「その心は?」

「フレンドリーファイアってあるじゃん?」

「訂正、相談役は鬼畜」

「おいおい、俺のような聖人君子を前にして鬼畜とはなんだね鬼畜とは」

「相談役が聖人君子だったらこの世の八割は聖人君子だな」

「お?ケンカなら買うぞ?」

ディスプレイの中で、ユイちゃんのグラフィックが構築された。

「トードさん。ママから伝言です」

「聞かなきゃだめ?」

「聞いておいた方がいいです」

ユイちゃんが一つの音声ファイルを起動。

「『トード君。今日の二十時にリズの店ね。
来なかったらどうなるかわかってるわよね?』」

「以上です」

うーわ、お姫様ぶち切れてんじゃん…

「相談役、勿論いくよな?」

「はっはっはっは!行くに決まってるじゃないか。
美少女からのお誘いに乗らなかったら紳士失格だろ?」

「あぁ、変態という名の紳士か」

「ちょっと何言ってるかわからない」











ユグドラシル・シティ リズベット武具店前
日本時間20:00

「ううぇーい…マジかよ」

そこで俺が見たのは、ぼろぼろになったキリトと、その襟を掴んで引き摺るお姫様だった。

しかもリズベット武具店…此方へ歩いてくる。

「こんばんは、トード君」

「ああ、こんばんはアスナさん」

「ちょっとキリト君を中に入れるから待ってて貰える?」

「あっはい」

さて、逃げるか…

そう思った刹那。

「逃げたら殺すわよ」

「っ!?」

すれ違い様に呟かれた一言で、背筋が凍った。

一分程でお姫様が出てきた。

そうして、無言でデュエル申請。

仕方ない…YES。

10カウントが始まった。

9…8…7…6…5…4…3…2…1…

DUEL START ‼

お姫様が一直線の流星のように突撃してくる。

対する俺は…

「逃げるんだよォーーーーーッ‼」

逃走だ。

逃走の他あるまい?

「ま ち な さ い」

まるで地獄から聞こえて来るような声が、後ろから聞こえた。

「うはははは!アスナさんまじ阿修羅さんwww」

タラリアや翅をも使い逃走する。

未だにALOに馴れていないお姫様になら勝てる。

そう思った俺が馬鹿でした。

人混みを縫い、全力疾走していると…

がっ!

えぇぇ…?

誰かに足を引っかけられた。

振り向くと…

ジーザス…

滅茶苦茶いい笑顔のリーファが足をつきだしていた。

そうして、そのまま俺はずっこけた。

「へぶっ‼」

急いで体を起こし、走ろうとした時。

「ツ カ マ エ タ」

目の前の地面にレイピアが突き刺さった。

上を見ると…

\(^o^)/オワタ










串刺しにされた挙げ句、誰も世界樹の雫くれなかった。

泣きそう。
 
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