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相談役毒蛙の日常

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二十二日目

ゴーグルをかける。

「位置について」

飛び込み台に昇り、台の縁に足の指を引っ掻ける。

「よーい…」

両手を合わせ、腕を伸ばす。

膝を曲げ、指先を水面に向ける。

ピー!とホイッスルが鳴り響いた。

曲げていた膝を伸ばし、跳躍する。

ザッパァァン!と後方と両サイドで水飛沫が上がる。

一発だけのドルフィンキックの後、両腕を交互に動かす。

同時に伸ばした足首で水を打つ…

「ぷはぁ!?」

「19秒!」

25メートルで19秒!?遅い!やはり一年のブランクは…

しかし周りは俺の内心と裏腹に、歓声が上がっていた。

「君速いね!中学でやってたのかい?」

「あー…週二でスイミングスクールに…」

「そうかそうか!期待しているよ!」

高校に入学してはや二週間。

俺は水泳部に入部したのだった。










「よー、待たせたな葵」

「遅せぇよ。どんだけ待たせる気だ?」

「そこは普通"今来た所"じゃねぇの?」

「はっ!オレが待ってたのは事実だろうが」

現在時刻18:03、現在地部活棟玄関前。

待っていてくれた葵と共に、帰路につく。

「で、弓道部はどうよ?」

「あー…なんか…かったるいな…。
ALOのと違って作法とかいろいろ…
当たりはするんだがなぁ…」

おぉう…当てれるのかよ…いくらALOで少し弓を扱ったとはいえ…

やべぇ…葵ってチートじゃね?

「で、そっちはどうなんだ?テルキスも一緒なんだろ?」

「流石に俺も昭秋も受験勉強分のブランクはあったな…」

「ほーん…どのくらいだ?」

「俺が中二の時には50メートルを32秒で行けたんだが…
今は25メートルを19秒が精一杯だな
昭秋もだいたい同じくらいだ」

俺は、中二でスイミングスクールをやめた。

建前は受験勉強の為…

「ゲームばっかりしてるからだろ。
知ってるんだぜ、お前がスイミングスクールやめた本当の理由」

「へー?ぜひ聞かせて貰おうじゃないか」

ま、知ってる筈無いか。

「メティとサンディ…いや、林檎と蜜柑の為だろう?」

「な!?」

何故知っている!?

「お前がプールに行かなくなったのは二人のケアの為。
仮想世界でも、リアルでも。
カールターナーに聞いたぜ。まったく、オレの幼馴染は優しいなぁ」

あんのアバズレ…!よくもバラしやがったな…!

「いや、おかしいと思ってたんだよ。
あんなに水泳に打ち込んでたお前が受験勉強ごときで止める筈ねぇってな」

「てゆーか!なんであの二人のRN知ってるんだよ!?」

「慧奈に聞いた」

チキショー…カールターナーめ…自分のRNもバラしたのか…

「で、お前慧奈と付き合ってるのか?」

は?

俺が?慧奈と?

「無い無い。どこをどう考えたらそうなる?」

「だってお前達二人って林檎と蜜柑の親みたいじゃん?」

「いやいや、お前はカオスブレイブズに入って日が浅いからそう思うだけだろ。
イクシードは全員があの二人を気にかけてるぞ」

「ふーん…なら…いいや」

そう呟いた葵は、幼げで、嬉しげで、可愛らしかった。

「なんだ?やけにご機嫌だな。
林檎と蜜柑に会えてそんなに嬉しかったのか?」

「まぁな。それにしてもビビったぜ…あの二人リアルの方が可愛いのな」

「あー…だな」

「チッ…ロリコンが…」

「お前が振った話だろうが」

「あ、そう言えば慧奈も同じ学校だぜ」

「マジで!?」

「だって昨日会ったし」

マジか……世界って狭いなぁ…

「つー事はあのアバズレが先輩かぁ…クソだな」

「そうなのか?」

「ああ、意気揚々と先輩面するあの女の顔が浮かぶぜ」

きっとニヤニヤしてるんだろうなぁ…

「あ、灯俊」

「んだよ?」

「今日母さん夜勤だから」

「はいはい」

要するに俺の家に来るって事だ。

食材は…まぁ…足りるか…

「今日、親、帰ってこないんだ…///」

……………

「へー」

俺はそれだけ返し、葵を放置した。

「わぁ!待てよ!ジョークだよジョーク!」

「そうかジョークか」

「ごめんって!」

キュッと制服の袖を引っ張られる。

あぁ…もう…

「じゃぁ、俺が今からする事もジョークで済むんだよな?」

「へ?」

通学路の歩道の塀。

そこに、優しく葵を押し付ける。

「え?え?は?灯俊?」

葵の顔のすぐ横に、右手を…

所謂、壁ドンである。

「お、おい!何を!」

葵の耳に、フッと息を吹き掛ける。

「ひゃわ!?」

おお、案外可愛いじゃないか。

そんな事を思っていると…

「調子に乗るな変態!」

ズドゥオム!

「あ…!が…!」

葵の、黄金の右ストレートが、俺の、溝尾に、直撃した。

「はっ!ザマァ見やがれ!」

「ぐおぉぉぉぉ…」

あぁ…いてぇ…

「腹筋しててよかったぁ…」

一分程で回復、その間葵は律儀に待っていてくれた。

「ったく…右で溝尾はねぇだろ」

「黙れ変態」

はぁ…

「おい、葵」

「んだよ変態?」

「男は皆変態という名の紳士だ!」

葵が俺をジト目で睨んだ後…

「イクシードに報告な」

「やめてくださいしんでしまいます」

特にエリアスあたり。

「そもそもお前が始めた事だろうが…」

「チッ…」

「何だ?そのあからさまな舌打ちは?」

「幼馴染が変態でショックだっただけだよ」

「お前今日の晩飯ウル〇ラデス入りのレトルトカレーでいいか?」

「せめてアフター」

アフターなら食うのかよ…

「じゃ、早く帰ろうぜ」

葵と共に通学路を歩く。

この変わらない日常が、とても心地良い。

その夜。

「ぎゃぁぁ!なんだこれ!?何入れた!?」

「御望み通りアフター入れといた。
全部食えよ」

「覚えてろよ…!」

翌日、寝起きで口にサ〇ンデス突っ込まれたので、取り合えずアイツの弁当にウ〇トラデスを仕込んだ。
 
 

 
後書き
慧奈(カールターナー)
武装 ザート(魔弾の王と戦姫)
灯俊と葵の学校の先輩であり、カオスブレイブズヒーラー隊隊長。
 
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