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相談役毒蛙の日常

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十二日目

「やはり…ラフィン・コフィン!」

奴の刺青を見たキリトは驚いた声を上げた。

「キリト、知り合いか?」

剣を杖に立ち上がりながら問いかける。

「あぁ…まぁな」

「そうさ!俺たちゃ殺しあいをした仲なのさ!」

殺しあい…SAOでか?

「奴はラフィン・コフィン…殺人ギルドの生き残りだ…」

ほーう?

「オイ!黒の剣士!構えろよ!あの日の続きだ!
じゃねぇとそのガキを犯してテメェの前で殺すぞ!」

チャキ…とキリトが二刀を構える。

その目には怒りと敵意が浮かんでいた。

バカが…

「抑えろ…キリト」

「だが!」

あぁ!もう!

「キリト、ユイちゃん、ここは俺が持つ。先に行け」

「なっ!」

お前はお姫様を助けないといけないんだろう?

「さぁ!行け!お姫様を助けて来い!」

「わかった!先に行く!」

キリトとユイちゃんは駆け出した。

「待て!黒の剣士!」

「行かせるか!」

ガキィン!

それを追おうとする奴を止める。

奴と俺の剣が交差し、ギチギチと音を経てる。

そのスキに二人は通路を曲がり、見えなくなった。

「邪魔してんじゃねぇぞガキィ!」

「悪いが俺は主人公じゃないのでね…
勇者を先に行かせるのは当然だ」

「嘗めてんじゃねぇ!」

俺は奴に圧し負けて、後退した。

俺は気になっていた事を聞く。

「なぁ…アンタ何者だ?運営か?」

「そんな所だ…黒の剣士と殺れるってぇから受けたのによぉ…
テメェのせいでメチャクチャだ!
ぶっ殺す!ぶっ殺してやる!」

ヘルムの間から見える奴の目には狂気と呼ぶべきモノが写っていた。

「はっ!だったら俺を倒して二人を追えよ。
無論、粘らせて貰うぜ」

この戦い、俺の方が有利だ。

何故ならそもそもの勝利条件が違う。

奴は俺を倒して進む事。

俺は奴を行かせない事。

奴は俺を殺して…つまり無力化しなければ行けないのに対し、俺は奴を足止めすればいい。

「なぁ、アンタもSAOサバイバーなんだよな?」

「ああ、SAOは最高のゲームだった…例え人を殺そうと犯そうと物を奪おうと自由…最高のゲームだ!」

「アンタは…人を殺した事は有るのか?」

「ああ!あるぜ!あの命乞いをされるのを斬るのはたまらない!」

あぁ…コイツは…


外道だ。


やり過ぎても、文句は言われない類いの存在だ…

「そうか、ならば失せろ下衆が!」

「あぁ?嘗めた口きいてんじゃねぇぞ…」

さっきからそればっかり…どうせ学のないニートとかだろコイツ?

だが…そんな事は関係ない。

今現在、俺が居るのはリアルではなくバーチャルだ…

「はっ!だったら殺ってみろ!SAOとやらで培った剣技を見せてみろよ!」

「絶対に殺す!」

奴が再び地を蹴った。

奴は真っ直ぐに俺に向かってくる。

奴が振り上げたロングソードを…

ギャリリィィィィィィ!

大剣で受ける…事なく受け流す。

キィン!

奴の剣が床に当たって跳ね返った。

そのスキを付き…

「さっきの礼だ!」

ガスッ!

奴の顔を蹴った。

カァァァン!

と奴のヘルムと俺の脚甲が音を経てた。

「あがっ!?」

ヴァーチャルに於いて、反射と言う物は存在しない。

信号が脊椎に行かないから当たり前だ。

しかし反射が無いと言え、顔を蹴られれば怯む。

ガッシャァン!

奴は通路の壁に激突し耳障りな音を発てた。

「う…ぐ…」

「オラオラ!どうしたぁ!俺を殺してアイツら追うんじゃねぇのか!」

「んのガキィ…!」

奴はこちらに掌を向けた。

「パラライズアロー!」

掌にはクリスタルがあり、そこから矢が放たれた。

キン!

それを剣で叩き落とす。

アイアンマンかよ…

それにしても飛び道具…か。

「おいおい、アンタSAOプレイヤーだったんだろう?
ならそんな小道具使うなよ…
あぁ!そうか!アンタって殺人ギルドのメンバーだったね!
だったらさぞ卑怯な方法で殺して来たんだろうねぇ…
なるほどなるほど!弱い訳だ!」

コレは予想だ。

だが当たってると思う。

コイツのパワーは厄介だ。

しかし、それだけだ。

恐らく運営が用意した高レベルアバターを使っているのだろうが…

テクニックがない。

さっきの攻撃だってフェイントのフの字も無かった。

「なぁ…アンタさぁ、キリトとの戦い続き云々言ってたけど…
多分、負けるぜ?弱いもん、アンタ」

キリトが『斬る』のを躊躇ったか、キリトの仲間が止めたか、奴の仲間が止めたか…

まぁ、そんな所だろうな…

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!俺は強い!黒の剣士だって殺せた!」

「事実、キリトは生きている。アンタにゃ無理だ」

「このガキィ!」

奴は立ち上がり、再び俺に突進してきた。

剣を前に付き出し、腰だめで…

それを…

カァァァン!

奴の剣を跳ね上げさせる。

そして…

奴の剣を跳ね上げさせた大剣を…振り下ろす!

ガァァァァァァァン!

クッソ!斬れない!なんて硬い鎧だ!

肩に振り下ろした剣は奴に触れたまま進まない。

しかし、それは十分なダメージを奴に与えた。

奴は俺の一撃の勢いによって膝まずいた。

好機!

大剣を引き戻し…

ズドシュゥ!

奴のゴルゲットごと貫いた。

「アンタ、動きを見るに本来の得物って短刀だろ?そんな慣れない長物じゃぁ俺は倒せない。
あと、悪いがアンタがリポップする前に全部終わらせるぜ」

「殺す…!」

殺意の言葉を残し、奴はポリゴンとなって消えた。

「さて…追うか…」

俺は二人が行った通路を追った。

「おいおい、エレベーターかよ…」

妖精郷に似つかわしくない文明の利器に苦笑しつつも、なんとか外に出れた。

「空中都市…ねぇじゃねぇか」

上を向くとキラリと光る物があった。

「あれが鳥籠か…ならあそこか?」

アルン大通りほどある枝を登り、鳥籠へ向かった。

鳥籠には誰も居なかった。

「あれ?違ったか?」

と他の枝先を見回すが他に変わった物は無い…

そう思っていると…

「ユイ!」

「パパ!」

鳥籠の中から声がした。

キリトとユイちゃんだ。

口振りからしてお姫様は助けられたみたいだ。

会話が一段落した所で声をかける。

「よう上手く行ったか?」

「トード!アイツは!?」

「倒した。リポップされる前に逃げたい…」

「そうか…」

あ、そういえば…

「なぁ、真実は…どうだった?」

「時間が無いから端的に言うぞ」

「わかった」

コレで…この世界で俺が求めてきたモノが…

「この一件の主犯は須郷伸之。このゲームを運営してる奴だ。
須郷はSAOの回線細工をしてSAOサバイバーの意識をこの世界樹に閉じ込め、感情や記憶を操る違法実験をしていた…
こんな所かな…」

そうか…そうなると…

「なぁ…キリト」

「ん?」

「この世界、どうなっちまうのかな?
運営がそれだと…おわっちまうのかな…」

この世界は…俺にとって、もう一つの現実だ…

それがなくなる。

アバターだってそうだ。

ポイズン・トード…俺の半身…

それが消えるかもしれない。

「キリト、俺はその真実を持ち帰る…悪いが行かせてもらうぞ」

「ああ、俺もアスナに会いたい」

チッ…のろけかよ…

俺はメニューを開いてログアウトした。

そして直ぐにダイブする。

それで俺は混沌の館の自室にもどれる。

目を開けると…

「お前ら…」

俺の部屋にイクシードが集結していた。

その中からテルキスが一歩出てきた。

「"真実"は見つかったか?」

「ああ、最悪なのがな…」

俺はキリトから伝えられた真実を、イクシードに説明した。

「テルキス、議会を開いている暇は無い。
全員、部下にメッセージ。
それとアルン全域に伝えろ」

「トード…それは…」

「仕方無いだろう…この世界が終わるかもしれないんだ」

イクシードは押し黙ってしまっている…

「わかった…
カオスブレイブズギルドマスターの名に於いて、イクシーズに命ずる。
"真実"を各団員及び一般プレイヤーに通達せよ!」

「我等イクシード!ギルドマスターの命により、各団員及び一般プレイヤーに"真実"を通達します!」

そして、この"真実"は瞬く間にネットを駆け巡り…

翌朝、アルヴヘイム・オンラインはその運営を停止した。
 
 

 
後書き
はてさてこのラフコフ残党はどうなることやら。 
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