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とある3年4組の卑怯者

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120 攻撃(いじめ)

 
前書き
 嘗て独りぼっちかつ泣き虫だったみどりと仲良くなる堀が気に食わなくなった江尻小学校3年1組の小倉こうへいと熊谷まなぶ。彼らは堀を徹底的に潰す事を計略する。そして翌日、堀の机が誰かに落書きされていた!! 

 
 机の落書きのせいで堀は終始授業に集中できなかった。みどりは隣の席に座っているため、彼女の様子がおかしいことが分かった。堀の手が震えていたのだ。
(堀さん・・・)
 みどりはかつて独りぼっちだった頃の時でさえここまで陰湿ないじめはされなかった。むしろ、無視されていた。無視されるのもつらいが、こんな嫌がらせされる方がもっと辛いだろうと思った。

 休み時間、堀は自分の机にいられず、窓辺にいた。みどりは矢部や麦田、滝頭美樹(たきがしらみき)と共に彼女を慰めようとした。
「堀さん、大丈夫ですよ。落書きなら落とせますよ。ですから安心してください」
「う、うん・・・」
「でもなんで堀さんにこんな事するのかしら?何か変な悪戯もしないし、怒らせるような事もしないし・・・」
 麦田は堀を信用していた。このクラスには堀の悪口を言う者はいない上、仲が悪い者もいないのだ。
「やっぱり西原さんが言うように、他のクラスの誰かかもしれないね・・・」
 滝頭は推測した。そしてみどりに聞いた。
「吉川さん、貴女堀さんと仲良いから何か心当たりある?」
「そうですね・・・。1組の小倉さんと熊谷さんかもしれません・・・。昨日私が日直やっていた時、二人がぶつかって来て漢字ドリルを落としてしまって、そしたら堀さんがその二人がぶつかるふりをして蹴っていたのを見たんです。その時、その二人は堀さんに文句を言っていたんです」
「小倉に熊谷・・・。確かに怪しいわね」

 その頃、1組の教室にて小倉と熊谷はにやにやしていた。
「へへっ、あいつ奇声発しちゃってたぜ!」
「ぶははは!笑っちゃうね!!」
 二人は教室を出て、4組の教室へと向かった。そして一人の男子を呼んだ。
「よお、栄張」
「なんダ、おめえらカ」
 4組の栄張崢治(さかえばりそうじ)。暴力的な男子で、何らかそりがあわない者は殴ったり蹴ったりと暴力で解決しようとする男である。小倉や熊谷とは別のクラスだが、1、2年の頃は彼らと同じクラスだった事もあり、仲は良い方である。
「お前、3組の堀ってどう思うんだ?」
「堀?俺には関係ねえナ。クラスが違うからそんなに話してねえゾ」
「だがよお、あいつムカつかねえか。吉川なんかと友達になっちまってよ。あんなのとは友達になるなとか言ったのに、俺達の言う事聞かねえ上にあいつの味方しやがってんの。あんなゴミクズみてえな奴と友達になるなんてあいつもクズの一種だぜ。あいつボコしてくんねえか?」
「あア、そんなに嫌な奴なのカ?」
「ウエッ、もちろんだ!」
「よシ、ならやってやるゼ!」
「へへ、面白くなるぜ!」
 小倉と熊谷は嬉しい表情で自分のクラスの教室へと戻った。

 午後の授業、みどりら3組は音楽室へと向かって行った。みどりはトイレに行っていたので準備が少し遅れた。急いで教材とリコーダーを出し、教室を出た途端、「何すんの!?」という声が聞こえた。これは間違いなく堀の声だった。みどりは駆け付けると、堀は4組の栄張と対面していた。
「何って挨拶の代わりだヨ!」
「そんな挨拶あるの?」
「るせえナ!!」
 栄張は堀の腕を掴むと彼女の後頭部を手の甲で殴った。そして壁に叩きつけて手を離した。みどりは思わずに声を掛けた。
「ちょっと、堀さんが何かしたんですか!?」
「るせえナ、挨拶の代わりに決まってんだロ!」
 栄張はそのまま自分のクラスの教室へと帰った。みどりは堀の元へと寄る。
「堀さん、大丈夫ですか!?」
「う、うん・・・」
「最低ですね!あんなの!」
 みどりは堀と共に音楽室へと向かって行った。

 みどりは自分のクラスの学級委員である倉山と西原に堀が挨拶の代わりとして栄張から殴られたことを報告した。
「何だと!?落書きといい、その暴力といい、何かあるぞ・・・」
「倉山君、とにかく帰りは堀さんと一緒に行動させた方がいいんじゃない?このままだと危ないわ」
「そうだな」
 音楽の授業の終了後、倉山と西原はみどり、堀と共に教室へ戻る事にした。

 堀を一人にするのは危険と見たため、みどりはクラスメイトの女子達と帰る事になった。
「それにしても酷いわね!一体何の恨みがあるのかしら!」
 日山が怒りをぶつけていた。
「堀さんは嫌な事するように見えないのにね・・・」
 桐畑も堀に同情した。みどりは嘗て泣き虫で独りぼっちだった頃の自分を思い出した。転校してきた当初の堀は初めて自分の学校の友達になってくれ、泣き虫を治すと共に、クラスに馴染めるよう手を差し伸べてくれた。
(あの時の私は堀さんに助けられていた・・・。今度は私がこの手で堀さんを助けないと!)
 みどりは堀をいじめから救う事を決意した。

 阪手はクラスメイトの都島明奈(みやこじまあきな)深江(ふかえ)ひとみに3組の教室を確認させた。
「誰も居なかった?」
「うん」
「じゃあ、やるか!懲らしめてやるぞ!」


 翌日、3組は体育の授業のため、体操着に着替えていた。堀が体操着を入れている袋を開けて体操着を取り出すと、悲鳴をあげた。
「キャーーー!!」
「ど、どうしたんですか!?」
 みどりは驚いた。
「私の体操着が・・・」
 堀は椅子に座り、手で顔を覆った。
「体操着ですか・・・?」
 みどりが堀の体操着を見た。堀の体操着はハサミかカッターを入れられたようで上衣もブルマもあちこち切り裂かれていた。皆が集まって来た。皆もまた驚くしかできなかった。
「こんなの酷すぎるぜ!」
「やりすぎよ、これ!」
 みどりは怒りがこみ上がった。
(ゆ、許せない・・・。こんなの最低だわ・・・。残酷だわ・・・!!)
 堀は体育の授業を見学する羽目になった。走り幅跳びをしているクラスメイト達を見ながら堀はなぜ攻撃されるのかを考えた。
(なんで私こんな事になるの・・・?私何か悪い事したのかな・・・?)
 体育の授業が終わり、みどりは誰よりも真っ先に堀の元へ向かった。
「堀さん、帰りましょう」
「うん、そうね・・・。あの、吉川さん・・・」
「はい?」
「私、何か悪い事したのかしら?だからあんな事されるの・・・?」
「堀さん・・・。いいえ、堀さんは何も悪くありません!堀さんが皆の迷惑をかけるような事一切していないんですから!勝手に恨む方が悪いんです!だから堀さんは何も悩む事はありません!!」
「吉川さん・・・。うん、ありがとう」
 確かにそうだ。堀は困っている者を助けようとしてきた。孤独だった自分をクラスの一員として受け入れて貰えるようにしてくれた。不幸の手紙で責められた藤木を慰め、立ち直らせた。そんな彼女がいじめられる筋合いはないのだ。みどりはそう思っていた。

 みどりと堀がクラスメイトと共に教室へ帰ろうとする途中、みどりは反対側から歩いてくる二人組の男子が目に入った。1組の小倉と熊谷だ。
「ちょっと!貴方達!!」
 みどりは思わず二人に叫んだ。
「ウエッ?」
「何だよ?」
「堀さんの机に落書きしたり、体操着をめちゃくちゃにしたの貴方達でしょ!!」
「ウエッ?知るかよ!」
「証拠でもあんのか?」
「証拠なんてなくてもわかります!貴方達、堀さんに私と友達になるなとか言ったそうじゃないですか!それで堀さんを恨むなんて!」
「うるせえな!そんな事で勝手に決めつけんなよ!迷惑な奴めが!てめてはワーワー泣いてろ!!」
 熊谷が言い返した。
「何ですって!?私はもう泣き虫なんかじゃありません!!」
 みどりは激怒して二人に襲いかかろうとする。しかし、桐畑と滝頭がみどりを止めた。
「吉川さん、今ここで喧嘩したってダメだよ!」
「でもこの人達は・・・!!」
「吉川さん、先生達に相談しないと解決しないよ!」
 二人はみどりを自分達の教室へと引っ張った。その際、みどりは二人に「もう許しませんからね!!」と吠えた。
 倉山と西原はこの話を聞き、賢島先生に報告した。賢島先生は堀が栄張から挨拶の代わりという理由で殴られた事も併せて職員で会議をする事にした。

「倉山君、また堀さんが何されるかわかんないわね」
「うん、まずは下校時間まで誰かを残らせて彼女の物に誰も触らせないように監視させよう。あと、靴に悪戯する事も考えて昇降口にも見張りだ。そして他のクラスの生徒達にもこの事を話していじめをやめさせるように伝えないとな!」
「うん、分かったわ。連絡網で皆に伝えるようにするわ!」
「ああ、そうしてくれ」
 倉山と西原はこのままでは堀が学校に来れなくなるかもしれないと思い、いじめを抑えなければと徹底的に動いた。この日は茅原と栗木寿彦(くりきとしひこ)に教室に残ってもらい、昇降口の堀の下駄箱の監視は倉山が自ら行う事になった。 
 

 
後書き
次回:「防衛」
 堀をいじめから守るために3組の皆が堀を守ろうとし、さらに他のクラスにもいじめの阻止に協力する者がでた。彼女の攻撃する者と防衛する者との戦いの激しさが増す・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語が始まる・・・!! 
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