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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第24話



~”忘れ去られし村”ハーメル~



「………………」

「ここが……”ハーメル村”………」

「ここにレーヴェさんやヨシュアさん、それに転生前のプリネ様が……」

「……どうしてだろう。こんなに哀しい風景なのに。」

「綺麗……だね。」

「ああ……一種の絵画にも見えるな……絵描きの一人として許される事なら、この風景を絵にしたいくらいだ。」

「……美しい(むら)だったのだろう。この地に眠る魂が今は安らいでいる証拠かもしれぬ。」

「……そうだといいんだが。」

「ま……あながち間違っちゃいないかもな。」

「……そうね。」

ハーメル村に到着したリィン達がハーメル村の風景に様々な思いを抱えている中アガットとレンは静かな表情でラウラが呟いた言葉を肯定した。



「ヨシュア達……さっき言った俺の後輩たちやレーヴェも一度、里帰りしているはずだ。それで安心したのかもしれん。」

「それと後は、”空の女神”によって自分達が存在していた事を世間の人達にようやく知ってもらえたのかもしれないわね。」

「その、ヨシュアさんというのが……」

「リベールの若手遊撃士の一人で、エレボニア出身みたいだね。」

「そして、ヨシュアさんもレオンハルト准将と同じこのハーメル村の遺児というわけですか……」

アガットとレンの説明を聞いたエリオットの言葉に続くようにフィーが答え、リィンは溜息を吐いてかつてクロスベル動乱で共に戦った仲間の一人――ヨシュアの顔を思い浮かべた。

「ああ………―――”ハーメルの惨劇”については既に世間にも公表されたし、お前達は内戦の最中にレンから”七日戦役”の和解条約の説明を受けた際に、あのスチャラカ皇子から”百日戦役”の真実である”ハーメルの惨劇”を聞いたとの事だから、それについては説明は省略する。」

「で。ここからの説明がリィンお兄さん達も知らない”ハーメルの惨劇”を公表しても、今もなお頑なに”ハーメル”の存在を隠そうとしているエレボニアの”事情”よ。」

「わたくし達も知らない”ハーメルの惨劇を公表しても、今もなお頑なにハーメルの存在を隠そうとしているエレボニアの事情”、ですか……」

「リグバルド要塞でレン皇女殿下の口から少しだけ話に出ましたね……」

「ま、この村の状況を見たら俺でも何となくわかってきたけどな。」

「え……ハーメル村の今の状況を見て、フォルデさんは何がわかったのですか?」

アガットの後に説明したレンの説明を聞いたセレーネは考え込み、ステラは静かな表情で呟き、呆れた表情で溜息を吐いたフォルデの言葉を聞いたエリオットは不思議そうな表情でフォルデに訊ねた。



「――――村の状況をよく見てみろ。1年半前の和解条約の際に現れた”空の女神”に誓った皇女さんのエレボニアの”贖罪”の一つである”惨劇で亡くなったハーメル村の村人達の墓がどこにあるんだ?”」

「!!」

「……言われてみれば、どこにもない――――というか、”ハーメルの惨劇が起こった後の状態のまま”だね。」

「一体どういう事なのだ……!?まさかとは思うが……エレボニア帝国政府はアルフィン皇女殿下が”空の女神”に誓ったエレボニアの贖罪の一つである”惨劇で亡くなったハーメル村の村人達全員の墓を建造する事”を実行していないのか……!?」

フォルデの指摘を聞いたリィンは目を見開き、フィーは静かな表情で呟き、ラウラは厳しい表情で自身の疑問を口にし

「一つどころか、エレボニアはアルフィン夫人が”空の女神”に誓った”贖罪”を全て実行していないわよ。」

「す、”全て”って……!」

そしてレンの説明を聞いたエリオットは信じられない表情をした。



「……お前達も知っての通り、エレボニアは一年半前のメンフィルとの戦争、メンフィルの介入による内戦終結、そして領土問題で旧共和国と揉めていた”自治州”だったクロスベルによる下克上で戦力や国力が大きく衰退した事に加えて、皇族―――特に現エレボニア皇帝であるユーゲント皇帝と政府に対するエレボニアの民達の信頼が失墜し、更にはゼムリア大陸での国際的な立場は地の底に堕ちた。」

「そんなあらゆる意味でボロボロになったエレボニアだけど、エレボニア帝国政府に復帰した”鉄血宰相”がボロボロになったエレボニアの復興だけで満足する訳がないでしょう?で、政府やユーゲント皇帝に対して落ちたエレボニアの民達の信頼を回復し、エレボニアを再びゼムリア大陸の覇者に戻してエレボニアの国際的立場の地位回復の為の手っ取り早い方法として、メンフィル・クロスベル連合の侵略によって滅びた長年の宿敵――――旧カルバード共和国の代わりに”宗主国”である自分達に歯向かった挙句、下克上までした新興の大国―――”クロスベル帝国”との戦争に勝つ事を考えたのよ。」

「だが、内戦や”七日戦役”の”和解条約”によって国力――――特に財政方面で深刻なダメージを受けた状態で、とてもエレボニアの一部の領土に加えてカルバードの大半を領土としているクロスベルに戦争を仕掛けた所で結果は”エレボニアの敗戦”が目に見えている。そして一日でも早くクロスベルに対抗できる戦力を整える為に帝国政府は内戦勃発前よりも軍拡を再開した。――――それこそギルド総本部が”異常”とまで思う程のな。」

「で、軍拡――――内戦やメンフィルとの戦争で失った戦力を回復・増強する為には当然たくさんのお金が必要な事は誰でもわかるでしょう?そしてそのお金を集める為に帝国政府はアルフィン夫人が”空の女神”に誓った”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”を”エレボニアがアルフィン皇女が空の女神に誓った贖罪は帝国政府内では何の権力もないアルフィン皇女の独断の為、贖罪を実行する必要はない事を決定したのよ。”」

「ま、”空の女神”がエレボニアに要求した”贖罪”の中にはリベールに”百日戦役”の賠償金を払わなければならない挙句自国の領土の一部までリベールに贈与しなければならない事になっているからな。クロスベルとの戦争に向けての軍拡を最優先で行っているのに、自国の皇女―――ましてや他国に嫁いだ皇女が独断で決めた虐殺された村人達の墓の建造費も含めた”無駄な出費”を帝国政府が許す訳がない。だが、本人はもはや今のゼムリア大陸から去ったとはいえ、ゼムリア大陸全土で崇められている”空の女神”に自国の皇女が”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”を必ず実行する事を和解条約時に出席していたリベール、ギルド、七耀教会、そしてメンフィルの代表者達の前で宣言しちまった以上、その宣言を撤回してしまえば、エレボニアはクロスベルに加えてリベールや七耀教会、更には内戦終結に最も貢献した事からエレボニア皇族の中で最も人気があったスチャラカ皇子の妹を慕っている自国の民や貴族達まで敵に回しちまう事になるからな。そうならない為に、帝国政府は”贖罪”を実行していない件でのリベールや七耀教会の指摘に対しては”未だに国力が回復していない為、贖罪を実行する余裕がない事”を理由に、”贖罪”の実行を延期し続けている。」

「クロスベルに加えていざとなったら無条件でメンフィルに軍を出して貰える上”不戦条約”の件でクロスベルとの関係も悪くない―――いえ、むしろ良好な関係を結んでいるリベールは当然として、自国の民達を含めたゼムリア大陸に多くの信者を抱え、”外法を殺す事”が認められている”星杯騎士団”を有する七耀教会まで敵に回す事やエレボニアから去って1年半経った今でも根強い人気を誇るアルフィン夫人を慕う平民や貴族達を敵に回す事はさすがに今のエレボニアだと”無謀”である事くらいは帝国政府も理解しているわ。だから、アルフィン夫人が”空の女神”に誓った”贖罪”はあくまで”延期”という理由で実行せず、リベールや七耀教会に対して誤魔化し続けているのよ。」

「そして帝国政府はエレボニアの民達に”贖罪”の件を忘れるように徹底した情報工作を行った。―――――かつてハーメルの虐殺を未来永劫、闇に葬った時のようにな。これが――――ハーメルの惨劇を公表したエレボニアが今もなお、ハーメルの存在を隠し続けている”事情”だ。」

「…………………」

「そんな……そんな事が………」

「レーヴェが言っていたっていう『エレボニアは何も変わらない――――変わる事を期待するだけ時間の無駄だ』って言う言葉はそういう意味だったんだね。」

「そうですね……ハーメルの惨劇を闇に葬った時から、何も変わっていませんね。」

「そしてハイアームズ侯が言っていたエレボニアはアルフィンの”想い”をも無下にしようとしているという意味はエレボニアは一からやり直して欲しいと願っていたアルフィンの”想い”をも無下にしようとしている事だったのか………」

「やれやれ……あの皇女さんが知ったら、冗談抜きでエレボニアの政府どころか政府の意向を認めた父親――――ユーゲント皇帝に対しても失望するかもしれないな。」

「はい…………そして、アルフィンさんの事ですからきっと悲しまれるでしょうね……」

アガットとレンからエレボニアがハーメルの存在を隠ぺいし続ける事情を知ったラウラは信じられない表情で絶句し、エリオットは悲しそうな表情で呟き、複雑そうな表情で呟いたフィーの言葉にステラは静かな怒りを纏って頷き、リィンは静かな表情で呟き、呆れた表情で溜息を吐いたフォルデの推測にセレーネは辛そうな表情で頷いた。



「……レン皇女殿下。メンフィル帝国はエレボニア帝国がアルフィン皇女殿下が”空の女神”に誓った”贖罪”を実行していない事について抗議等はしなかったのですか?メンフィル帝国の貴族であるリィンに降嫁なされたアルフィン皇女殿下はメンフィル帝国に所属されている事になりますし、和解条約には”空の女神”の希望である”ハーメルの惨劇の公表”が組み込まれたとの事ですから、”贖罪”とも間接的に関係があるように思えるのですが……」

「まあ、アルフィン皇女自身がリィンお兄さんに嫁いだ事でアルフィン皇女がメンフィル帝国の所属になったから全く関係がないとは言えないけど、エレボニアは”和解条約”を全てちゃんと実行したし、”贖罪”はあくまで”アルフィン皇女と空の女神を含めた七耀教会との間で結ばれた条約”の為、”和解条約ではなく別の条約”になるから、幾ら戦争で勝ったとはいえ、”メンフィルとは関係のない別組織同士で決めた出来事”に口出しする”権利”なんてないわよ。第一、もし抗議なんかして七耀教会の肩を持ったら、メンフィルが理想として掲げる”光と闇の共存”を破る事になるもの。」

「え………それって、どういう事なんですか?」

ラウラの質問に答えたレンの答えを聞いて疑問を抱いたエリオットは困惑の表情でレンに訊ねた。

「………メンフィルは”光と闇の共存”を理想として掲げている以上、”光”の勢力として見られている七耀教会に一方的に肩入れをしてしまえば、メンフィルの民達に”示し”がつかないからだと思いますわ。」

「―――加えてリウイ前皇帝陛下の側室の一人であられるペテレーネ神官長は”闇”の勢力である混沌の女神(アーライナ)教の”神格者”です。しかもペテレーネ神官長はゼムリア大陸に存在する混沌の女神(アーライナ)教の長でもありますから、ペテレーネ神官長個人はともかく、メンフィル建国時より協力関係を結んでいた混沌の女神(アーライナ)教にも”メンフィルが光と闇の共存を理想として掲げている事”に対して疑問を抱かれる可能性も考えられます。」

「それは…………」

「光と闇―――相反する存在の”共存”を謳っているからこそ、異世界では”光”と、”闇”、それぞれの勢力に”宗教”があるメンフィルは宗教関係でどちらかの肩入れはできないって事か。」

レンとステラの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情をし、フィーは静かな表情で呟いた。

「………それと”贖罪”をエレボニアが実行するつもりがない事に気づいたリベールや七耀教会のエレボニアとの関係を悪化させてエレボニアを孤立させる事で、エレボニアがメンフィル、もしくはクロスベルとの戦争に敗戦して滅亡の危機に陥った際、エレボニアの懇願に応えてエレボニアを存続させる為のリベールや七耀教会の仲裁の意志を無くす事も含まれているのでしょう?」

「あ………」

「確かにエレボニアの皇女が自分達が崇め続けている”空の女神”自身と約束をしたって言うのに、それを破れば七耀教会は当然エレボニアが再び滅亡の危機に陥っても和解条約や西ゼムリア同盟の時のようにエレボニアに味方しないだろうし、幾らオリヴァルト皇子と親交があり、慈悲深いアリシア女王やクローディア王太女とは言え、王国政府やリベールの民達の”贖罪”を実行しないエレボニアに対する感情を考えればエレボニアの味方はし辛いだろうな。」

リィンの推測を聞いたエリオットは呆けた声を出し、フォルデは疲れた表情で呟き

「……そして、エレボニア皇族――――それも帝位継承権を持つ自分がエレボニアを代表して”空の女神”に誓った”贖罪”すらも実行しない事を決めたエレボニア帝国政府やユーゲント皇帝陛下に失望したアルフィン自身のエレボニアに対する”想い”を断ち切る事で、エレボニアの帝位継承権を持つアルフィンがいつか起こるかもしれないメンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争によって敗戦したエレボニアの統治者に選ばれ、エレボニアへの想いを断ち切ったアルフィン自身がその決定に従って受け入れる意志を作る為………――――違いますか?」

「それは………」

更なるリィンの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情をした。

「へえ?”そこまで気づく”なんて、驚いたわ♪リィンお兄さんの予想外の成長の早さに、一日でも早くレン達をお役御免にして欲しい臨時クロイツェン統括領主の一人として、嬉しい誤算だわ♪」

一方レンは意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめ、リィンの推測を肯定したレンの答えにエリオット達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「ったく、案の定ロクでもねぇ事を考えていやがったようだな……」

「うふふ、”ロクでもない”とは失敬ね。レン達メンフィルはエレボニアの”ハーメルの惨劇”に対する”贖罪”について口出しする”権利”はリベールや七耀教会程持ち合わせていない事は事実だし、別に内戦や”七日戦役”の時と違って何らかの暗躍もしていないわよ?要するにエレボニア自身が自滅しようとしているから、それを上手く利用しようとしているだけよ。」

「……確かにレン皇女殿下の仰る通り、その件に関しては完全にエレボニアの自業自得ですね。」

「……だな。帝国政府も”贖罪”を無視し続ければ、いずれエレボニアは孤立する事くらいは予想できているのに、そんな選択を取るという事はいつかクロスベルやメンフィルどころか、リベールを含めた各国に戦争を吹っ掛けるつもりなのかね?」

呆れた表情で溜息を吐いたアガットに小悪魔な笑みを浮かべて指摘したレンの指摘にステラと共に頷いたフォルデは呆れた表情で溜息を吐き

「……確かに今のエレボニアの軍拡を考えれば、フォルデの推測も当たっているかもね。」

「い、幾ら何でも1年半前の件で衰退したエレボニアがゼムリア大陸全土の国家に戦争を吹っ掛けるなんて、ありえないと思うけど……」

「だが………エレボニアは自ら破滅の道を歩もうとしている事は今の話で思い知らされたな………」

「あの……レン教官。もしお兄様の仰るような出来事が本当に実現したら、アルフィンさんをエレボニアの統治者にするつもりなのですか……?1年半前のエレボニアの内戦終結によって”七日戦役”勃発に対する”償い”とようやく皇族の重荷を捨てる事ができて、お兄様に嫁いだ事で平穏な生活を送っていたアルフィンさんを今更政治の世界に再び連れ戻す事は酷な事だと思われるのですが……」

「………………」

静かな表情で呟いたフィーがフォルデの推測を肯定している中エリオットは不安そうな表情で呟き、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、セレーネは心配そうな表情でレンに問いかけ、リィンは真剣な表情で黙ってレンを見つめていた。

「うふふ、”万が一”メンフィル・クロスベル連合とエレボニアが戦争状態になり、エレボニアを降した時に考えているエレボニアの統治者は正確に言えば”リィンお兄さんとアルフィン夫人の子供”だから、アルフィン夫人自身を今更政治の世界に連れ戻すつもりはないから、安心していいわよ。」

「リ、リィンとアルフィン皇女殿下の子供って………」

「確かに帝位継承権を持つ皇女殿下の血を引く御子ならば、当然エレボニアの帝位継承権はあるだろうな。」

「………―――なるほど。”幻燐戦争”の時のように、元々その国を治めていた皇族の血を引く子供を統治者にする事で、エレボニアの民達の反感を抑えてエレボニアの統治をしやすくする為ですか。」

レンの答えを聞いたエリオットが困惑している中ラウラは真剣な表情で呟き、リィンは静かな表情で呟いてレンを見つめた。

「”幻燐戦争”………以前レンがレグラムに”ガランシャール”を返しに来てくれた時に少しだけ話に出た事がある異世界の戦争だね。」

「俺も”影の国”で少しだけだが、当事者――――”英雄王”達本人から聞いた事がある。大陸全土の国家を敵に回したその戦争に勝利した事によって建国当時は小国だったメンフィルが大国へと成りあがった戦争で、戦後占領した皇族を生かしてそのまま占領した領土の統治を続けさせて”英雄王”がラピス皇女さん達――――各国の皇女を側室にして、その子供を占領したそれぞれの国の統治者にしたって話だったな。」

リィンの話を聞いたフィーとアガットはそれぞれかつての出来事を思い出し

「またまた大正解♪―――まあ、”幻燐戦争”の時と違ってあくまで案の一つなだけだから、リィンお兄さんとアルフィン夫人の子供がエレボニアの統治者になる事が決定している訳ではないわよ?リィンお兄さん達が拒否するんだったら、当然他の案を考えるつもりだもの。1年半前の件が切っ掛けで大出世した今のシュバルツァー家はエフラムお兄様達を始めとしたメンフィル皇家の分家と同格と言ってもおかしくないのだから、そんなシュバルツァー家の意志を”無下”にはできないわよ。」

「……寛大なお心遣い、ありがとうございます。ですが、さすがにマーシルン皇家や各国の皇家の血を引く分家の方々と”同格”は過剰評価かと。」

レンの答えにリィンは静かな表情で会釈をした後苦笑しながら指摘し

「シュ、シュバルツァー家がメンフィル皇家の分家と同格って………」

「フム、強ち間違ってはいないだろう。1年半前の件でシュバルツァー家は広大なクロイツェン州の大半の部分の統括領主に任命される事が内定しているのだからな。正直、エレボニアで例えるのならば”四大名門”と同格と言ってもおかしくないと私は思っている。」

「ハ、ハハ……」

表情を引き攣らせているエリオットの言葉に続くように呟いたラウラの言葉を聞いたリィンは乾いた声で苦笑していた。

「―――ま、話は戻すけどエレボニアがメンフィルやクロスベルに限らず他国に戦争を仕掛ける事をしなければ、リィンお兄さんの当たって欲しくない推測は見事に外れる事になるけどね♪」

「ったく、このクソガキは………―――まあいい。とりあえず、さっきの花を供えに行くぞ。たしか、村の奥の方に14年前の慰霊碑があるはずだ。」

小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットは呆れた表情で溜息を吐いた後気を取り直して答えた。

「……わかりました。行きましょう。」

「一応、警戒した方がよさそうだね。」

そしてアガットの提案にフィーと共に頷いたリィンが仲間達と共に先へと進もうとしたその時、リィンの頭の中に一瞬だけ惨劇が起こる前のハーメル村の平和な光景の一端―――黒髪の姉弟と銀髪の少年の普段の生活、そして幼い自分を背負った若い頃のオズボーン宰相の姿が浮かんだ。

「………!?(……今のは……?)」

一瞬の出来事に驚いたリィンは周囲を見回し

(間違いない……ここに来るのは初めてのはずだ。だが……何か関係があるのか?)

少しの間考えて困惑の表情をしたが気を取り直して仲間の後を追った――――――


 
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