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相談役毒蛙の日常

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四日目

「俺の名はキリト!
スプリガン=ウィンディーネ同盟の大使だ!
この場を襲うからには、我々四種族との全面戦争を解釈していいんだな!」

「ヒュゥー!」

面白い事になってきたぜ!

「バカ!口笛なんて吹いてる場合か!」

「硬ぇ事言うなよサクヤ。あっちを見とけ」

と言ってキリトの方を指差す。

「ウィンディーネとスプリガンが同盟だと?
護衛の一人も居ない貴様がその大使だと言うのか?」

「ああ、そうだ、この場にはシルフ・ケットシーとの貿易交渉に来ただけだからな。
だが会談が襲われたとなればそれだけじゃ済まされないぞ。
同盟を組んでサラマンダーに対抗することになる」

そろそろ助け船を出すか…

「ソイツの言ってる事は事実だ。
俺はこの同盟及び貿易交渉の仲介役だ」

「フンッ、央都の根城に引き込もっているお前がか?」

「ああ、そうさ、今日はログインしないで家でアニメでも見てる積もりだったんだが、ギルマスに命じられてね。
さて、今の言葉の意味は分かるよな?
ユージーン」

ユージーンなら、今の言葉で俺が相談役として、権限を持った状態でここに居ると解釈するだろう。

「フッ、そこのスプリガン、オレの攻撃を三十秒耐えられたら貴様を大使だと認めてやろう」

とキリトに向かって言いはなった。

「ずいぶん気前がいいね」

さてキリト、お前の実力を見せて貰おうか。

「その後で貴様を殺すぞ、トード」

ほう、俺に喧嘩を売るのか…

「ではサラマンダーは俺達に喧嘩を売ったって事で…
世界樹攻略ギルド"カオスブレイブズ"相談役ポイズン・トード!
ギルドマスターの命に従い貴様等を駆逐する!」

ぷふっ! と後ろから吹き出す音が聞こえた。

「おいおい、笑うなよ」

見ると周りの殆どが笑っていた、ユージーンまでもだ。

いや、まぁ、理由は分かってるけどさ…

「く、くくっ、それを抱えた状態で言っても締まらないぞ…」

とサクヤ。

うん知ってる、俺の腕の中には銀色の毛玉がある、回廊を抜けてからずっと抱えっぱなしだ。

さて、想像して欲しい、175センチの男がモフモフした毛玉を抱えてすごむ様を。

シュールだ。

「玉藻、取り敢えずアリシャの所行きな」

「はーい」

トテトテと走って行った玉藻はアリシャに飛び付いた。

「モフモフ~」

アリシャは気に入ったようだ。

「さて…じゃぁ行こうか…おい、キリト、奴は多分三十秒経っても止めない。
斬っていいぞ。その間に俺は周りを殺る。OK?」

「ああ」

俺はウィンドウを開き装備を変更する。

空戦対人用装備の…ドロップアップエンチャント。

ハーフプレートアーマーは変わらず。

伝説級の靴と禍々しい両手剣と小盾、更にドロップアップのアクセサリーをありったけ…

両手剣はHPと引き替えにドロップ率を五割に上げるなんてアホみたいなスペックだ。

悪意に満ちた、否、悪意の塊のような装備である。

「フィーアで行くぞ」

「トードって性格悪いね」

お?分かってくれたか。

「それが分かるお前もなかなかだな」

「いいから行こう」

キリトが急かすので始める事にした。

「アインス!」

敵が身構える。

「ツヴァイ!」

敵が武器を握りしめ…

「ドライ!」

こちらが出ない事に驚く敵を…

「フィーア!」

叩く!

キリトはユージーンに向かって飛び出し俺はユージーンの後ろの軍勢に突っ込む。

あ、キリトにエセリアルシフトの事教えてなかった…まぁなんとかなるか。

そんな事を考えながらもサラマンダーを斬っていく。

先ずは飛び立った勢いのまま剣を振り二人撃破!

次に怯んだ奴の首を飛ばす!

血のような赤いライトエフェクトが迸る。

リザルトウィンドウが開き今倒した奴からのドロップアイテムが表示される。

敵が上から叩いてきたので盾で防ぐ。

更に左から来た奴のランスを脚甲で反らす

それと同時に盾で押さえ付けていた奴をSTRに物を言わせて弾く。

態勢を崩した両者を大剣で叩き斬る!

ここまでで二十秒…

「さぁさぁ!どうしたぁ!俺を討ち取ればユージーンのポケットマネーでなんか奢って貰えるぜぇ!」

あ、今サラマンダーズから『何故お前がそれを言う…』って視線が来た気が…

「来ねぇならこっちから行くぜぇ!
マイア!」

叫んだ俺を中空を<踏みしめた>。

中空を蹴って加速し飛び立つと共に剣を持つ手を左腰に持っていき…

「ぜぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

居合の如く振り抜いた。

一気に五つの炎が生まれる。

ここまでで三十五秒くらい…キリトの方は…

「悪いな、やっぱり斬りたくなった、首を取るまでに変更だ」

「この野郎…絶対泣かせてやる」

うわー、予想通り過ぎるにも程があるな。

「なぁ…お前等の指揮官って何時もあんな感じ?」

「「「「「「……………」」」」」」

あ、無言の肯定ってやつだコレ。

「じゃぁ……再開と行こうか」

俺は再び中空を蹴り飛び出した…










「悪いな、やっぱり斬りたくなった、首を取るまでに変更だ」

んの野郎…

「この野郎…絶対泣かせてやる」

今の打ち合いで分かった、あの剣は透過する…どうすれば…ヤバイ!

ユージーンがスラストを掛けて突進してきた。

俺はランダムに動き回避するが…

「ぐぅ!」

マズイ、被弾した!HPも半分を切った…どうすれば…

「パパ!幻惑魔法で視界を奪ってください!
スペルワードは…」

ナイス!ユイ!

俺は逃げながらスペルワードを唱え、ユージーンに向かって左手をつき出す。

ボボボボン!と黒い霧が辺りを覆う。

一つ、思い付いた事がある。

それを実行すべくリーファの元に向かう。

「リーファ、借りるぜ」

一言言ってリーファの直刀を拝借する。

その後霧の中を突っ切り太陽へ向かう。

下を見ると先程まで俺とユージーンが戦っていたエリアは黒い霧に覆われていた。

少し離れたエリアでは赤い炎が幾つも光っていた。

「あれを全部トードが殺ったのか?」

「そう、みたいですね…」

時折見える紫の光が迸るたびに一つ、また一つと炎が増えて行く。

「時間稼ぎの積もりかァ!」

霧の中から赤い光が迸り霧が晴れる。

「ユイ、ユージーンに突っ込む、よく掴まってろよ!」

「はい!パパ!」

戦闘機じみたサウンドエフェクトを鳴らしながらユージーンに突っ込む。

ユージーンがこちらを向くが太陽の眩しさに手をかざした。

普通ならここで太陽を直視しないため水平移動がセオリーなのだろう、だが…

「ドアアアアァァァァァ!!」

ユージーンはそのまま直進してきた。

そしてぶつかり、グラムの透過が発動する。

俺は後ろに構えていたリーファの直刀を大剣の下に潜り込ませた。

ギャイィィィィン!とグラムを弾かれユージーンは体勢を崩す

今だ!

「お……オアァァァァァァァ!!!」

スター…バースト…ストリィィィィィィム!

態勢を崩したユージーンに剣を叩き込む、俺がアインクラッドで得た剣技を。

最後のフィニッシュと同時にユージーンが斬り込んでくる。

カァン!カァン!キィン!

どれだけ透過を使っても俺の二本目の剣が防ぐ。

やがて打ち込んで居ると赤い防壁が現れた。

「ぬ……オォォォォォ!」

防壁の内側でユージーンが態勢を立て直し上段に構えた。

「オォォォォォ!」

烈迫の雄叫びと共に放たれた唐竹割を透過が発動する前に刃の腹を叩き阻止する。

逸れた刃は左肩を掠り再びユージーンが態勢を崩した。

すかさず剣を肩に寄せる、弓を引くかの如く。

「やぁぁ!」

ズドン!と引き絞った剣を放つ。

<片手直剣スキル最上位剣技ヴォーパル・ストライク>

「ぐあ!!」

ダメージに怯むユージーンに止めを刺すべく剣を握り直す。

放つ技は<片手直剣スキル上位剣技バーチカル・スクエア>

左右の切り上げと切り下ろしで正方形を描く。

一撃目で左肩。

二撃目で右足。

三撃目で右肩。

四撃目で左足。

ユージーンの周りを残像の正方形が覆い…四散した。

残ったのは赤いリメインライトだった。

「見事!見事!」

「すごーい!ナイスファイトだヨ!」

はは、領主からお褒めの言葉か…

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

「大丈夫ですかパパ!」

「ああ、大丈夫だ…」

強かった…グラムに頼りきりではなくユージーン自信の剣技がだ。

頼らず、それで居てグラムの力を引き出せるのは素晴らしいの一言に尽きる…

「そうだ!トードは!」

少し離れたエリアに目をやると三十はあるリメインライトが少しずつ減っていっっている…

「ははっ、マジかよ…」

あ、そうだ…

「誰か!蘇生魔法を頼む!」











「おい、カゲムネ、ユージーンが墜ちたぞ。まだやるか?」

キリトに向けられる拍手と歓声をBGMに問い掛ける。

「降参だ。大人しく話を聞くことにするよ」

そう言ったカゲムネは納刀しホールドアップする。

「他の奴等もか?」

「ああ」「仕方がないだろう」

満身創痍のサラマンダーが口々に応える。

その数わずか十一名。

「なら降りてこい」

俺とカゲムネが降り立つと同時にユージーンが蘇生される。

「見事な腕だな。俺が今まで見たなかで……最強のプレイヤーだ」

一瞬の間の間にこっちを一瞥したのがムカつくな。

「そりゃどーも」

「え~俺もユージーンに勝ったこと有るのになー?」

「黙れ、卑怯な手ばかり使う貴様に負けた事は一生の恥だ」

まだ根に持ってんのか…

「それにしても、貴様のような男がスプリガンに居たとは…世界は広いな」

「俺の話、信じて貰えたかな?」

まぁ、ぶっちゃけ認めなくてもいい。

この状況ならリーファと玉藻に領主を守らせキリトと俺と護衛十二人で抑え込める。

「ちょっといいかなジンさん」

「なんだ?カゲムネ」

「昨日、俺のパーティーが全滅させられたのはもう知っていると思う」

「ああ」

「その時の相手がこのスプリガンとシルフだったけど…確かにウィンディーネも居たよ」

ん?リーファとキリトが唖然としてるな、どういうことだ?

「それにSの情報でメイジ隊が追ってたのもこの男だ。
ここに居るってことはメイジ隊は撃退された様だけど」

へぇ…そんなことがね…

「そうか…そういう事にしておこう」

「分かってくれて嬉しいよ」

「確かに今スプリガン、ウィンディーネと事を構える気は俺にも領主にも無い。
ここは退くぞ」

そしてキリトを真っ直ぐ見据え、続けた。

「しかし、貴様とはいずれまた戦いたい」

「望むところだ」

キリトは応えると同時に握った右手を差し出す。

ゴツンと己が拳を打ち付けたユージーンが笑みを浮かべ身を翻した。

「あ~トードさん?」

「そんなに畏まってどうしたんだ?カゲムネ」

「さっきの戦闘でドロップしたアイテム、返して……もらえないですよねー…」

ふむ……

「七百二十二万四千二百三十二ユルド」

「は?」

「中立エリアにおけるサラマンダーの強襲で受けた被害総額」

「うぐぅ!」

「あと、5日前の中央ギルド脅迫事件の慰謝料」

「ぐぉぉ…」

「全部せしめて…今回のドロップ品ぐらいだな」

多分今回のドロップアイテムの総額は一千万超えるけどな。

今回襲撃してきたのは装備の質からみてユージーン麾下の世界樹攻略大隊だろう。

領主会談襲撃は格好のデモンストレーションになる、それは間違っていない。

でもデモンストレーションで引っ張り出す部隊じゃねぇだろ…

「OK?」

「うぐぅ…OK……」

負のオーラを撒き散らしながらカゲムネが飛び立った。

しかし帰り際に何故かリーファに視線をやった……キモッ!

「サラマンダーにも話の分かる奴が居るんだな…」

お話(物理)だけどな。

「アンタって無茶苦茶ね…そっちの妖獣使いもだけど…」

「よく言われるよ」

とキリトが応える。

「コレぞ《俺くおりちー》」

なんてふざけてるとサクヤが入ってきた。

「すまんが、状況を説明して貰えると助かる」

ああ、うん、いきなりだったもんね…

「実は…」

リーファが説明を始めた。

先程のキリトの剣の技、奴はやはり…
 
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