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星河の覇皇

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第六十六部第三章 幸せの国その十七

「ブータン王もだ」
「その生活そのものが仕事であり」
「私と会ったこともだ」
「仕事だったのですね」
「そのうちの一つだったのだ」
「だからあれだけ慣れた動きだったのですね」
「ご本人は緊張もあったかも知れないが」
 だが、だ。相手であったアッディーンから見るとだ。
「しかし私から見るとだ」
「そこには緊張はありませんでしたね」
「余裕があった」
 これがアッディーンから見たブータン王だ、彼はアッディーンに対して『いつもの』式典に出る様に振舞っていたのだ。
「あれは出来ない」
「旦那様には」
「とてもな、私は所詮普通の家に生まれただ」
 そしてというのだ。
「一軍人からはじまった者だ」
「大統領になられても」
「そこには私だけしかない」
 アッディーン自身しかというのだ。
「生きているだけで仕事になる様なこともだ」
「なかったと」
「そうだった、全くな」
「それを言いますと」  
 妻のマルヤムも言う、確かにサハラ南方で様々な表と裏の権謀と戦争、そして信仰を通じて大きくなり今はサハラを二分するティムールの主の家の者であるがだ。
「私もです」
「細君もというのか」
「はい、歴史と伝統を背負い」
「生きているだけで仕事になる様な状況ではか」
「ありませんでした」
 到底というのだ。
「そこまでは」
「そうなるか」
「はい、大統領も」
「大統領の仕事は多い」
 国家元首故にだ。
「サインをしなければならない書類だけでもな」
「相当な量がありますね」
「そうだ、しかしだ」
 それでもというのだ。
「生活自体が仕事かというと」
「そこまでは至りませんね」
「流石にな」
 こう述べるのだった。
「今の私にしてもな」
「左様ですね、確かに」
 マルヤムも大統領である夫の言葉に頷く。
「国家元首でありますが」
「プライベートもな」
「ありますね」
 例え僅かであってもだ。
「大統領なら」
「まだな、しかしだ」
「それでもですね」
「皇帝、そして王にはない」
「そのプライベートも」
「そうしたものだ、しかしだ」
 それでもというのだ。
「それが仕事ならな」
「やらなければなりませんね」
「そうしたものだ」
 それが君主、サハラでは皇帝だというのだ。そうしたことを話しつつだった。アッディーンはホテルでの一時を過ごしていた。
 そして彼と会ったブータン王は自身に侍従達にだ、彼のことを問うていた。
「アッディーン大統領だが」
「はい、あの方は」
「噂以上でしたね」
「覇気がありました」
「それも堂々たるものが」
「全身にオーラさえまとわれ」
「素晴らしいものがありましたね」
 侍従達も言うのだった、彼について。
「あれが青き獅子ですね」
「オムダーマンを統一に向かわせている英雄の一人ですね」
「まさに」
「あの方なのですね」
「そうだな、やはり彼はな」
 まさにとだ、ブータン王も言うのだった。 
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