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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第二十八話 -世紀末の魔術師(1/6)-

 
前書き
このお話は 劇場版 世紀末の魔術師 が元になっています。 

 
「楽しみだねー、大阪!」
「せやねえ、ウチは実家の都合でよう大阪に行ってますど皆で行くとそれだけでちゃいますなあ」
「まったく……紅葉ちゃんと龍斗君はともかく、なーんでお前らまで。遊びじゃねーんだぞ?」
「えー、いいじゃない!キッドの予告もそうだけど、今度オープンする大阪城公園内にある鈴木近代美術館をこけら落とし前に園子が見学してもいいよって言ってるんだし。キッドの予告だけじゃないのよ?一応」
「ボク達は美術館の方を見学するからオジサンはお仕事がんばってね!」
「ったく。しょーがねえな…」
「まあまあ、小五郎さん。大阪に着いてもいないのにそんなに気を張っていたらインペリアル・イースター・エッグを守るどころじゃないですよ?もっと気楽に気楽に」
「そうはいうがなあ、龍斗君…」

俺達五人は東京から大阪に向かう新幹線の中にいた。元々は史郎さんが小五郎さんに怪盗キッドからインペリアル・イースター・エッグの1つ、メモリーズ・エッグを守ってほしいとの依頼を受けた所からだった。その話から蘭ちゃんもついていきたいと言い、小五郎さんは断ったのだが園子ちゃんがせっかくだし大阪観光と美術館見学においでという事となり俺と紅葉も遊びに来ないかというお誘いを受けた。俺達はそれに乗って今大阪に向かっているというわけだ。
新大阪駅に着いた。話によると園子ちゃんが迎えに来てくれているとのことだったが。

「おーい、らーん、みんなーこっちよー!」
「あ、園子!」

改札口には園子ちゃんがすでに待っていた。改札を通り、俺達は鈴木家が用意してくれたリムジンに乗り鈴木近代美術館に向かうことになった。

「ほお、リムジンか。流石鈴木財閥」
「だって今日は特別なんだもの」
「特別?」
「だって、憧れの怪盗キッド様に会うにはこれくらいじゃないとね」
(憧れのキッド様、だあ?おいおい、このお嬢様大丈夫か?)
「ははは……」
「なによう、蘭は前に会ってるからいいんでしょうけど私は会ったことないんだから!」
「会ったことがあるって…私もすぐに眠らされちゃってキッドの顔なんて見てないわよ。顔を見たって言うならコナン君よ、「漆黒の星」を取り戻したときに見たんじゃないの?」
「ぼ、ぼくも蘭ねーちゃんに変装した姿しか見てないから……」
「園子ちゃんはその怪盗にお熱なんやねえ。ウチからしたらはた迷惑な泥棒だとしか思えへんのやけど。警備するにもタダでありませんし」
「敢えて言うのなら死傷者が出さないって所だけは評価するけどね。史郎さんに変装したとき釘刺しといたしまあ大丈夫でしょ」
「え?なにそれ初耳なんだけど!龍斗君も会ったことあるの!?」
「え、そうなの龍斗にいちゃん!?」
「ん、ああ。鈴木財閥60周年記念式典の時にね。史郎さんに挨拶に行ったときに、いつもの史郎さんと違う体臭だったから問い詰めたら案の定でね」
「な、なんですぐに教えてくれなかったんだ!…たの?」
「まあ、警察の方や探偵もいたし朋子さんがキッドが来ること前提でパーティを組み立てていたみたいだから。ちょっと迷ったけど一料理人が手を出すことじゃないかなって。まあもし史郎さんに危害が加えられているようだったら今頃活動は出来てないだろうけどね…」
「そ、そうなんだ。で、どんな感じだった?顔は?見たの?」
「変装を解いたのは見てないけれど。多分あれはまだ10代の子だね、匂い的に。あのあとちょっと調べたけどおそらく彼は二代目じゃないかな?」
「な、なんだって!?そんなの警察も手に入れてない情報じゃないか?」
「さあ……流石にそこは分かっているんじゃないでしょうか。ああ、でも変装の名人だから顔では判断がつかないですかね?」
「じゃあ、私とキッド様はお似合いなカップルになるわね!ああ、泥棒とその泥棒のターゲットのお屋敷のお嬢様のラブロマンス…素敵だわあ」
「もう、いい加減にしなさいよ園子」
「ま、まあ言うだけならなんら問題はあらへんて、蘭ちゃん」
「…あ、そうそう。紹介し忘れてたけどこの車の運転をしてくれてるの、パパの秘書の西野真人さんよ」
「よろしく」

そう言って軽く会釈をする西野さん。

「彼ってずっと海外のあちこち旅をしていて英語、フランス語、ドイツ語がペラペラなのよ」
「へえ、すごい!」
「そういえば龍斗も色々喋れるんやったんやなかったっけ?」
「んー?英、仏、独、中、葡、西、露、あとはアラビア語にトルコ語かな。料理の本を読むために勉強した成果だから発音とかはちょっと怪しいかも知れないけどね」
「ええ~そんなに喋れるの!?」

白玉に貰った言語チートは伊達じゃなかった。今言った言葉以外もいくつか修得したものはあるし、驚いたのは聞いた事の無い言語でも法則性や会話を2時間程聞けば簡単なものを理解できるようになってしまうのだ。
そんな感じに雑談をしているとリムジンは順調に道程を消化し無事鈴木近代美術館に到着した。入り口には警察の機動隊の人が数名警備にあたっているのが見える。
全員が降車し、あたりを見渡してみると入り口だけでなく敷地内には制服の警察官が所狭しと立って警戒に当たっていた。…おいおい、100人以上いるぞ。

「すごい警戒ね」
「まさに蟻の入る隙間もねえって感じだな」
「あったりまえよ、相手はあの怪盗キッド様。なんたって彼は…」
「神出鬼没で変幻自在の怪盗紳士。固い警備もごっつい金庫もその奇術まがいの早業でぶち破り、おまけに顔どころか声や性格まで正確に模写してしまう変装の名人ときとる。は、ほんまに厄介な相手を敵にまわしたのう…」

そういって、園子ちゃんのセリフに割り込んだバイクに乗った青年はヘルメットをとる。まあ青年って言うけど…

「なあ、工藤?」
(は、服部!?)

平ちゃんの事なんだけどね。後ろにはちゃんと和葉ちゃんもいる。

「まーた、こいつか」
「もう、なんで服部君いっつもコナン君の事工藤って呼ぶの?」
「ああ、すまんすまん。こいつの目の付け所が工藤にようにとるからな」
「それにしたって病気やで。今日も朝はようから『工藤が来る工藤が来る』いうて。ほんまいっぺん病院で見てもらった方がええんとちゃう?」
「ああん?」

そう言うと、平ちゃんと和葉ちゃんは言い合いを始めてしまった。平ちゃんの工藤呼びは言っても直らないからなあ。関西組の二人の言い合いを尻目に関東組も彼らについて話をしていた。

「ねえ、あれが西の高校生探偵の服部平次君?結構いい男じゃない?」
「だめだめ、服部君には幼馴染みの和葉ちゃんがいるんだから。今はあんなふうに喧嘩してるけどホントはすっごく仲がいいんだから」
「はいはい、それは私と龍斗君には見たらよーっく分かるってもんよ。ねえ龍斗君?」
「そうだねえ、俺らがいっつも見てた蘭ちゃんと新ちゃんのやり取りそっくりだよ」
「え……」

そういって二人を見て徐々に頬を染める蘭ちゃん。自分と新ちゃんを重ね合わせてるのかな?それにしてもよく二人の言い合いは途切れないなあ。

「あーあー。私にも幼馴染みの男の子…龍斗君と新一君以外にもう一人いたらなあ」
「まあまあ、園子ちゃんにも絶対良い縁があるって」
「せやで、園子ちゃん。ウチと龍斗を見てみ?普通ならありえへん縁でつながった二人や。まあその縁を繋いでくれたのはあの和葉ちゃんなんやけどね」
「え?それってどういう?」
「彼ら、実は俺が長期休みで関西の方に行っていたときにいつも遊んでた幼馴染みなんだよ。だから今日は俺の幼馴染みが全員…まあ新ちゃんはいないけどほぼ全員顔を合わせたってわけ」
「へええ。なんだかすごいわね。蘭って龍斗君経由で二人にあったわけじゃないでしょ?」
「平ちゃんが新ちゃんに会いに来て…が最初だったかな。そこからポンポンと会う感じだよ。それで縁を繋いだって言うのは」
「ウチと龍斗が出会ったかるた大会に龍斗を誘ってくれたのが和葉ちゃんだったんです。彼女がいなければウチは龍斗と出会う事すらなかったんよ」
「ええええ、じゃあ二人にとって和葉ちゃんはキューピッドなのね!はあ、私にも良い縁連れてきてくれないかな…」

そんなこんなを話していると、俺達は西野さんの案内で美術館の会長室に案内された。

「ん?おお、毛利さん!よくぞ来てくださいました。蘭さんやコナン君も。それに龍斗君と紅葉さんも今日は存分に見て行ってくださいね。…園子、あとの二人は?」
「服部平次君と遠山和葉さんよ。服部君は西の高校生探偵って呼ばれてて関西じゃ有名なんだってさ」
「おお。それは頼りになりますな」
「おおぅ。任せとき、おっちゃん」
「おまえなあ!鈴木財閥の会長に向かっておっちゃん「平ちゃん?」と…は…」
「な、なにかな?龍斗君?」
「初対面の目上の人に「おっちゃん」はないんじゃ、ないかな…?」
「せ、せやな。すまんかったのう、会長ハン」
「(ねえねえ、もしかして服部君って)」
「(蘭ちゃんの思ってる通りや。小さい時から龍斗君が失礼な行動をするたんびに矯正されとってな。今でもちょっとしたトラウマになっててん。まあ平次の両親は躾してくれてありがとーってわらっとったけど)」
「いや、いや気にしていないよ。ああ、紹介しましょう。こちらロシア大使館・一等書記官、セルゲイ・オフチンニコフさんです」
「よろしく」
「お隣が早くもエッグの商談でいらした美術商の乾将一さん。そして彼女はロマノフ王朝研究家の浦思青蘭さんです」
「ニーハオ」
「そしてこちらがエッグの取材・撮影を申し込んできたフリーの映像作家の寒川竜さん」
「よろしく~」
「しかし、商談とは。いくらくらいの値を?」
「八億だよ」
「は、八億ぅ!?」
「譲ってくれるならもっと出してもいいぞ」
「会長さん、インペリアル・イースター・エッグは元々ロシアの物。こんな怪しいブローカーに売るくらいなら我々ロシアの美術館に寄贈してください!」
「怪しいだと!?」
「いいよいいよー、こりゃエッグ撮るより人を撮ってる方がいい画が撮れるな。…中国人のあんた、他人事みたいな顔してるけどロマノフ王朝研究家ならエッグは喉から手が出るほど欲しいんじゃないの?」
「ええ。でも私には八億なんてお金はとても…」
「そうだな、俺もかき集めて2億がやっとだ」
「(おいおい、キッドだけじゃなくて皆エッグを狙ってるのかよ)」

何とも香ばしい人たちが集まってるなあ。しっかし八億ねえ。

「八億か、あるところにはあるんやねえお金。そんだけあればウチのお小遣いももっと増えるのに~」
「和葉ちゃん…この場じゃ出せる人間が過半数があるっていう珍しい場になってるけどね」
「え?」

この場にいるロシアがバックにいるセルゲイさんと乾さんは出せる、青蘭さんと寒川さんは出せない。そして俺達の中でも鈴木財閥、大岡家、新ちゃんも優作さんの資産を考えれば余裕で出せるし、服部家、遠山家も家の規模を考えればいけるだろう。毛利家も小五郎さんと英理さんの人脈は寒川さんの比じゃない。かき集めればたぶん行けるだろう。
そして人脈といえばうちはワールドワイドだからね。そして俺個人としても。

「俺も、中東の王族から1年契約で数億って言われたこともあるしね」
「そ、そら豪勢なこって。流石はオイルマネーで潤ってるだけはあるんやなぁ」

まあ、家の両親はもっと高額だったみたいだけども。

「とにかく、エッグの話はまた後日改めてということで」
「分かりました」
「仕方ない、今日の所は引き上げるとするか」

セルゲイさんと乾さんがそう言い、四人は席を立った。彼らが帰る際に西野さんが桐箱を抱えて会長室に入ってきた。彼らが帰ることに気付き、西野さんは立ち止まりお辞儀をしていた。

「!?」

ん?寒川さん、西野さんを見てぎょっとしてたけど知り合いか?

「会長、エッグをお持ちしました」
「ああ、ご苦労さん。テーブルに置いてくれたまえ」
「はい」

そう返事をした西野さんはさっきまでセルゲイさんたちが囲んでいた机に桐箱を置いた。

「さあ、みなさん。どうぞ」
「わあ、エッグ見せてもらえるんだ!」
「見た目は大したもんじゃないよ」
「そうなんです?」
「ええ、だって私が子供の頃知らないでおもちゃにしてたから。もしかしたら蘭や龍斗君も見覚えあるかもしれないわよ。うちに遊びに来た時に見てるかも」
「んー?どうだろうね」
「とりあえず、見せてもらお?」

そう言いあいながら、俺達は机を囲んだ。史郎さんが桐箱を留めていた青い紐をとき、蓋を持ち上げエッグが姿を現した。

 
 

 
後書き
…劇場版ゲストキャラで夏美さんが一番好きです。
cv篠原恵美さんの癒しボイスが似合いすぎ 
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