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星河の覇皇

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第六十六部第三章 幸せの国その十二

「無論手抜きなぞありませんが」
「それでもだな」
「法皇猊下はカリスマです」
 その存在自体がというのだ。
「世襲ではありませんが」
「その受け継がれるものがあまりにも大きく」
「そして確かにバチカンはこれまで様々な悪を行ってきました」
 中世においてだ、バチカンが行った悪徳はそれこそ人類の歴史に特筆すべきものだった。腐敗を極めに極めたものとして。
「しかしそれ以上にです」
「神聖なものが強い」
「その神聖を受け継いでいるからこそ」
「カリスマになっているな」
「宗教のカリスマです」
 それがローマ教皇のカリスマだというのだ。
「まさにキリストから受け継がれている」
「その偉大な方が連合に入られてな」
「各国を歴訪されていてです」
「我が国にも来てくれた」
「光栄なことなので」
 こう考えられているからなのだ、連合ではこのことをよしとしてそのうえで法皇を歓待したのだ。このブータンでもそれは同じだ。
 しかしだ、アッディーンそしてシャイターンは。
「法皇猊下は皇帝と同格です、しかし」
「大統領であるしな」
「そこで大きく違いますし」
「しかも連合の者ではなく」
「そのこともありまして」
「カリスマは感じていてもか」
「今一つ静かなのです」
 法皇を迎えた時とは違いというのだ。
「そうなっています」
「そういうことだな、では」
「はい、では」
「私は間違っても気圧されずにだ」
「普段の陛下でおられれば」
 シュミールも言うのだった。
「私が願うのはそれだけです」
「ではな」
 こうしてだった、ブータン王はアッディーンを自身の部屋に迎え入れ彼を大統領の礼で迎え自らがホスト役としてだった。
 王宮の中を案内してだ、晩餐会にも招待した。その晩餐会の食事を食べて。
 そしてだ、アッディーンはホテルに戻った時にだ、共にいた妻のマルヤムに言った。
「ブータン王もな」
「王であられますね」
「まさにな、国家元首としてだ」
「素晴らしい資質の方で」
「連綿と受け継いだものがある」
「そうですね、ブータン王も」
「祭事を行うことにそつがない」 
 このこともだ、アッディーンは見抜いていて述べた。
「いい王だな」
「まことに」
「連合の王は祭事を行う世襲の国家元首だ」
「政治と祭事は違うものとして」
「連合では完全に分けられている」 
 政教分離の結果だ、祭事は宗教である。エウロパもそうだが連合はイスラエルの様な民族自体が特定の宗教への信仰で形成されている国は例外としてほぼ全ての国で政治と宗教が完全に分離させられている。
 その祭事についてだ、アッディーンも言う。
「この国においてもだ」
「国王は祭事を行い」
「政治はだ」
「首相を頂点とした行政府、立法府がですね」
「行う、そして裁判所もだ」
「司法もですね」
「三権に国家元首は関わらない」
 世襲によって国家元首となる場合はだ。
「共和制国家になると祭事すらだ、大統領は行わない」
「そこは完全に分けられていますね」
「王は司祭の長であった国も多かった、古来はな」
 まさに祭事を行う存在だからだ、そうした王権はメソポタミアをはじめ東西に存在する。
「皇帝教皇主義といいな」
「ビザンツ帝国ですね」
「そうだ、ビザンツ帝国の皇帝は世俗的な最高権力者でもありだ」
「宗教においても」
「最高権力者だった」
 そして世俗、宗教双方に強い影響を持っていたのだ。 
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