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星河の覇皇

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第六十六部第三章 幸せの国その九

「さして大きくなく」
「殆ど気にならないまでに」
「連合各国間での貿易の比重が大きいです」
 それもかなりだ、連合の内需は相当なものだ。
「ですから」
「ブータンにとっても」
「特にです」
 それこそというのだ。
「気にすることもなく」
「どちらが皇帝でも違いはない」
「そういうものですね」
「確かに」
 こう結論が出た、そして。
 カルからだ、シュミールに言った。
「では」
「はい、これから」
「陛下の前に参りましょう」
「そしてお話をしましょう」
 準備が整ったということのだ、こう話してだった。
 二人は部屋を出て王の前に参上した、そして。
「全てはです」
「整いました」
「後はです」
「大統領がこの宮殿の中に入りです」
「応対をしてです」
「式典を最後まで行うだけです」
 こう二人で話す、そして。
 玉座に座る白髪の初老の痩せた顔の老人がだ、二人の大臣に答えた。着ている服はブータンの民族服である。 
「わかった、ではな」
「はい、間もなくです」
「アッディーン大統領がここにも参られます」
「その時はです」
「いつも通りです」
「大統領の礼で迎えることになるな」
 ブータン王ジグミ=ワンチョクはこう応えた。正式な名はかなり長いがよくこう略して呼ばれる。ただ公式では違う。
「思えばな」
「それは、ですね」
「どうもと仰るのですね」
「当然と言えば当然だが」
 しかしともだ、ブータン王は述べた。
「彼はまだ大統領だからな」
「はい、しかしです」
「彼は今は大統領なので」
「その儀礼で迎えることがです」
「当然のことなのです」
 それが打倒だとだ、カルとシュミールも話す。
「まだ大統領です」
「皇帝ではありません」
「サハラではまだです」
「お二人のうちどちらが皇帝になられるかわかっていません」
「皇帝の礼儀で迎えるのはです」
「あくまで皇帝に対してだけです」
 正式にだ、皇帝に即位した者だけだというのだ。
「陛下の仰る通りです」
「大統領の礼でお迎えするのです」
「そうだな、しかし私は思う」 
 ブータン王は考える顔でだ、二人の大臣にこうしたことを言った。
「彼、アッディーン大統領はだ」
「英雄ですね」
「まさにですね」
「そうだ、どう見てもだ」
 アッディーン、彼はというのである。
「サハラの英雄でカリスマがある」
「評判通りの人物であると」
「そう仰るのですね」
「しかも若い」
 ここでだ、ブータン王は少し苦笑いになって述べた。
「あの若さは眩しいまでだ」
「若き獅子、ですか」
「そうもですか」
「そうだな、あの御仁は獅子だ」
 ブータン王から見てもアッディーンは獅子だった、オムダーマン軍の青い軍服に身を包んだ獅子なのだ。 
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