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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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仇討ち

 
前書き
この感じから行くとしばらくシリルは出てこないかもしれません。
まぁ、彼がフェードアウトするなんてよくあることですが・・・ 

 
「ウルフヘイム様!!」

体のど真ん中を貫かれ地面を転がるウルフヘイム。彼に追撃しようとしたリュシーを見て、ジュラが岩鉄壁で止めに入る。

「無駄な足掻きよ」

目の前に現れた無数の岩の壁。リュシーはそれに飛び蹴りを放つと、まるで発泡スチロールを壊すように容易に突破してしまった。

「バカな!?」

軽々と自らの魔法を突破する女性に衝撃を受けずにはいられない。そのままリュシーは虫の息となっているウルフヘイムにトドメを刺しに行くが、ハイベリオンが割って入る。

「おっと」

手を向けてきた伯爵のような男性を見て空中で一回転して飛び越えるリュシー。彼女は一度距離を置きつつ、ウォーロッドとジュラの動きを確認する。

(こっちから始末するか)

左腕を突き上げ拳を固める。その手に魔力を集中させると、足元の地面を全力で叩き込む。

「アースブレイク」
「「!?」」

一瞬何をしようとしているのかわからなかったが、すぐに異変が襲ってきた。その場を襲う巨大な振動。それにより起きたのか、ジュラとウォーロッドの足元が浮き上がり、バランスを崩した彼らは元の高さにある地面へと落とされる。

「ウォーロッド!!ジュラ!!」

地面に頭から落下した彼らを心配してハイベリオンはそちらを向く。しかしそれは、やってはならない失態だった。

「ファイアブレイク」
「しまっ―――」

よそ見をしていた彼の腹部に手のひらを当てる。そこから吹き出した炎が、彼の体を焼き焦がした。

「うわあああああ!!」

押し飛ばされた格好になり地面を転がるハイベリオン。それにより炎は消すことができたが、ダメージは絶大だ。

「全ての物体に最小の力で最大の力を加えることができる魔法・・・『オ・マースアル』。さすがだな」
「持って生まれた高い魔力に力を余すことなく敵にぶつける能力・・・まさしく破壊の女神」

わずか数秒で4人に大きなダメージを与えたリュシーは、一切の疲れを感じさせないほど落ち着いていた。彼女は自分に最も近い場所にいるウルフヘイムの首に手をかける。

「リュシー・・・」
「安心しなさい、痛みを感じないほど一瞬で粉々にしてあげるわ」

憎悪の目で接収(テイクオーバー)が解けている老人を見据え、彼を粉砕するために魔法を放とうとする。その瞬間、彼女の足元から大木が突き上げてきた。

「キャッ!!」

現れた木々に体の動きを奪われる。しかしそれも束の間、すぐさま木々を粉砕すると、この魔法を繰り出した老人を睨み付ける。

「まだ痛め付け足りなかったかしら?ウォーロッド」

頭から出血している木のような老人。彼はフラフラしながら立ち上がると、険しい表情を崩さないリュシーに諭すように話しかけた。

「リュシー・・・君は勘違いをしている」
「勘・・・違い?」

彼が何を言おうとしているのかわからず首を傾げる。ウォーロッドは出血部を抑えながらある事実を告げた。

「君の妹は、生きているんじゃ」
「・・・え?」

予想だにしなかった言葉にキョトンとするリュシー。それを聞いていたジェイコブは驚愕し、オーガストはウォーロッドの方を静かに見つめていた。















イシュガルの四天王の戦う地から大きく離れた雪の舞う地、霊峰ゾニア。その麓では、アルバレス軍とセイバー、天馬の連合軍が戦っているわけなのだが・・・

「テメェが・・・ベリーを殺したのか?」
「まぁ、そう言うことになるでしょうね」

スプリガン16(セーズ)のメンバーであるブラッドマン、ゴッドセレナに見向きもせず、軍隊の隊長を務めているホッパーに対し、怒りが抑えられないグラシアン。平然としている敵の姿が、彼のそれを増幅させていく。

「感謝してほしいものだ。彼女を脱獄させてあげたのも私なのだから」

その瞬間、グラシアンはドラゴンフォースを解放した。それを見てホッパーも戦う姿勢に入ったが・・・

「お前があいつをそそのかしたんだろうが!!」

目にも止まらぬ速さで飛び込んできたグラシアン。彼の拳がホッパーの脇腹を完璧に捉えた。

「グハッ!!」

ホッパーは敵の動きを瞬時に見切る能力がある。それにより国王暗殺の際に一夜を始めとした青い天馬(ブルーペガサス)のメンバーを一掃したわけだが、グラシアンの攻撃に全く反応が追い付いていない。

「あいつは何もなければあと2年・・・あと2年で出てこれた!!そしたら何事もなく平穏に暮らしていたはずなんだ!!」

胸ぐらを掴み額を押し当てるグラシアン。ホッパーは怒れる竜に対し、笑いを堪えながら口を開く。

「そもそも彼女の自由を奪ったのは君だ。君が誰かを責めることなんかできないだろ?」
「ああそうだ!!その通りだよ!!」

思わぬ回答に目を見開くホッパー。グラシアンは顔を離すと、彼の頬にストレートパンチを喰らわせる。

「でも・・・なんであいつがこんな想いをしなきゃならなかったんだよ!!まだまだやり直すことなんてできたじゃねぇかよ!!」

自分とほぼ同い年である彼女ならば、刑が終わった後に真っ当な生活に戻ることができたはず。彼女の感じから察するに、恐らくそそのかされたから国王暗殺に加わってしまったのだとグラシアンは感じていたのだ。

「それは私に言っても意味がないよ」
「うるせぇ!!」

ぶつかり合う2人の拳。魔力の大きさは同等なのに、それでもグラシアンの攻めは収まることを知らない。

「なんであいつを・・・仲間を巻き込んだ!?逃げてぇなら無事に逃げる方法なんていくらでもあっただろうが!!」

彼がもっとも怒っているのはホッパーが志を共にしていた仲間を巻き込んでまで評議院の険束部隊を爆発させた死なせたこと。彼はそれを聞き、深いタメ息をついた。

「彼女たちは私のことを知りすぎた。生かしておいては、アルバレスの情報が渡ってしまいかねない」

元々彼の中で国王暗殺の優先順位は高くない。むしろ、ただ騒ぎを起こすための虚言に過ぎなかったこともあり、計画自体はかなり手抜きなものだった。それに、いずれ殺してしまう大陸の人間・・・死ぬのがわずかに早くなるだけで大した問題ではない。それが、仲間を巻き込んでまで爆発を起こした理由。

「俺は・・・お前を許さねぇ!!」

その声と共に放たれたブレス。ホッパーはそれをギリギリで回避するが、周囲にいた兵隊たちはかなりの数が凪ぎ払われていた。

「いいでしょう、あなたもイザベリーの元に私が送ってあげますよ」
「お前が・・・」

反撃に出ようとしたホッパーだったが、彼のすぐ目の前に怒れる竜が飛んできていた。それに彼は驚き動きが止まってしまう。

「あいつの名前を呼ぶんじゃねぇ!!」

魔力を帯びた拳が顔面に突き刺さる。そのまま飛ばされそうになった青年の腕を掴むと、引き寄せて強烈な頭突きを喰らわせる。

「ぐっ・・・」

今の頭突きにより右のまぶたを切ったホッパーは視界の半分が失われてしまう。グラシアンはそれに気付いているのかいないのか、手を休めることなく攻撃を繰り出していた。

















「ありゃりゃ、こりゃもうダメだな」

霊峰ゾニアの中腹からその様子を見ていた黒装束の男。彼は意識を失いかけている部下を見ても平然としていた。

「助けてやらないのか?」
「助ける?なんで?」

隣にいた緋色の髪をした女性に質問されると、彼はさも不思議そうに返事をした。

「お前の部隊の隊長だろ?」
「あれ?そうだっけ?」

ティオス隊隊長ホッパー、その上長であるはずのティオスは記憶にないと言いたげな表情。彼はしばらく記憶を辿っていると、その場に立ち上がる。

「しゃあねぇ、助けてやるか」
「そうしてやれ。私はもうしばらく見させてもらう」

渋々といった感じで山を降りていくティオス。アイリーンは彼を見送ると、戦っている部下たちを観察していた。

「さてさて、どうやって助けてやるかな?」

フードによってほとんど顔が見えないティオス。その中で口元がわずかに緩んでいるのが見えたが、それは悪意があるようにしか見えなかった。














ハルジオン港では、アルバレス軍に占拠されたこの場所を解放するため、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)人魚の踵(マーメイドヒール)の連合軍が戦っていた。

「アイスメイク・・・タイタンフィート!!」
「天神の北風(ボレアス)!!」
「ハァァッ!!」
「回るよ~!!」

氷で作った巨大な足でアルバレスの兵隊たちを踏み潰すリオン。シェリアは黒い風で敵を凪ぎ払い、サクラとオーバはそれぞれの魔法を駆使して敵を蹴散らしていた。

「こいつら・・・意外とやるぞ!!」

人数で劣っている彼らの猛攻に押され気味のアルバレス軍の兵隊たちは驚いている。そこにやって来たヨザイネは、目を閉じ、額に指を当てる。

「天を舞いし数多の輝きよ、この地に降り注げ!!」

カッと目を開くと、明るかった上空がどんどん雲に覆われていく。何事かと空を見上げると、渦を巻いている雲の中心から光輝く何かが降ってくる。

「何あれ!?」
「「「きゃああああ!!」」」
「「「うわあああああ!!」」」
「ベス!!」

次々と落ちてくるのは恐らく隕石。大きさ自体は決して大きくはないのだが、その威力は絶大でラミアやマーメイド、さらにはアルバレス軍も次々と倒されていく。

「何仲間まで巻き込んでるの!?」

ヨザイネの無差別攻撃に飛び出したのはソフィア。彼女は、地面にもっとも近づいてきていた隕石に返し魔法(カウンター)を仕掛け、降ってきていたその他の隕石へ打ち返す。

ドォォンッ

1つが壊されると破片が飛び散り、相当数降ってきていたそれらを全て粉砕した。

「ソフィアいいよ!!」
「ナイスソフィア!!」

ミリアーナとラウルを始めとした一同が彼女に称賛の声を送る。それを受けたソフィアはドヤ顔をし、ヨザイネに向き直った。

「綺麗だからって何をしてもいいわけじゃないのよ!!でもお尻はすごく良さそう!!」
「何言いたいのかわかんねぇぞ」

建前と本音が入り乱れている彼女に冷静に突っ込みを入れる氷の神。ヨザイネは自分を指さす少女を見て、何かに気が付いた。

「あら、あなたもしかして・・・」
「・・・?」

ソフィアを見て何かに気が付いたヨザイネ。彼女は笑みを浮かべると、再び足元に魔法陣を展開させる。

「全てを焼き尽くす大火よ、この地を地獄とせよ!!」

魔法陣がオレンジ色に光ったかと思うと、ソフィアの周囲が炎で包まれる。

「え!?何これ!?」

逃げ場などどこにもない火の海。ソフィアはそれに慌て逃げ道を探していると、背後から抱き締められた。

「!?」
「はい、お休みなさい」

抵抗しようとするよりも早く腹部を突かれ意識を失うソフィア。ヨザイネはそれを見て炎を弱めると、船がある海岸の方へと歩いていく。

「ソフィア!!」
「あんた!!どこに行くつもりだい!!」

仲間が連れていかれようとしていることに気が付いたカグラとリズリーが追い掛けようとする。しかし、その前に1人の男が立ち塞がった。

「久しぶりだな、カグラ」

筋骨隆々の肉体をし、顔を冑で隠している彼を見て、カグラは思わず立ち止まり、涙を流した。

「お兄・・・ちゃん・・・?」

それは以前楽園の塔で命を落としたはずのカグラの兄、シモンだったからだ。

















ヒュゥゥゥゥゥ

「なんだ?この冷気は・・・」

急激に気温が下がってきた戦場にリオンが違和感を覚える。彼は空気が冷えてきている方を振り向くと、そこにいる人物を見て目を見開いた。

「さぁ、修行の時間だ、リオン」
「・・・ウル?」

仲間たちを凍らせながら歩いてくるのは彼とグレイの師匠であり、デリオラとの戦いで命を落としたウルだったからだ。
















「お久しぶりですね、レオンさん」
「!?」

聞き覚えのない声に馴れ馴れしく声をかけられたレオンは相手を地面に沈めていた魔法を中断する。彼が向いたそこにいたのは鎧に身を包んだ優男と、その前にいる見覚えのある猫。

「ラウルの・・・お母さん?」

それは自身がかつて殺めてしまった、相棒であるラウルのお母さんだった。

「これこそ屍のヒストリア。そう、実に美しいヒストリアだよ」

精神の暗殺者ナインハルト。彼は相手の心の中を見通すことができる。そしてそこから生み出されるのは、本来交わることができなかった記憶の中の者たち。

「ラウルをずっと、育ててくれたんですね」
「いえ・・・」

彼女が幻であることはおおよそわかっていた。でも、心の中でどこか、もしかしたらという想いがあったのかもしれない。彼は1歩1歩ラウラの方へと歩いていく。

「さぁ、その手を取りたまえ。その瞬間、私が君を彼女の元へと誘ってあげよう」

彼の手の中にはナイフが握られていた。レオンは自分に向けられている殺意に気が付かずにラウラに近付いていく。

「レオンさん、来てください」

手を差し出すラウラのそれを思わずレオンは取りそうになった。しかし、その瞬間に彼の思考が蘇る。

(これは現実なのか?いや、そもそもラウルのお母さんがなぜ俺のことを知っている?)

動きが固まった彼を見てナインハルトは訝しげな表情を浮かべる。もう1歩、あとわずかで敵の最大の脅威を排除することができる。

(この手を掴めば俺もラウルも・・・幸せになれるのかな?)

止まっていた手が再び動き出す。目の前の猫の手を取ろうとしたレオン。だが・・・

『ラウルのこと・・・よろしくお願いします』

彼の中でこの言葉を上回るものはない。

もしこのまま手を取れば自分が戦えなくなってしまうことは確実。混乱していた頭をフル稼働させ彼が取った行動・・・それは・・・

「ゆっくり眠ってください」

右手で彼女の幻覚を払うことだった。

「なっ・・・」

信じられないような彼の判断に唖然とするナインハルト。カグラやリオンといった、目の前に死者が蘇ったものたちも、脇目に見えた彼の行動に驚愕していた。

「えぇ、お休みなさい」

目の前から消されたラウラは笑顔だった。レオンは視界から消えた彼女のことを思い出し心苦しくなるが、すぐに目の前の優男を見据える。

「貴様・・・なぜ何も思わない!?かつて自分が殺めた相手に、謝罪の気持ちもないのか!?それでも人間なのか!?」
「人間だと、れっきとした」

声のトーンが1つ下がった少年。ナインハルトは彼の周りの空気の温度がみるみる低下していくことに気が付いた。

「俺はあの子を殺してしまった。それで心を病んだこともあった。でも、生きている限り先に進まなければならない。それが死んでいった者へできる唯一の弔いだから」

かつて魔法が使えなくなるほどに心を病んでしまったことがある彼だからこそ説得力がある。彼の過去を知っているリオンやカグラはその言葉を聞き、目の前の人物に動揺していた自分たちが恥ずかしくなった。

「ごめん!!お兄ちゃん!!」
「ウル・・・俺はあなたを越えなければならない!!」

シモンを、ウルを目の前から消し去る。消された彼らはかつての出来事を乗り越えた妹を、弟子を見て安心したような笑みを浮かべて天に召されていった。

「覚悟はできてるんだろうな?人の過去を引きずり出してきたことに対する罰を受ける覚悟が」

ジリジリと迫ってくる少年を見て足を震わせる青年。彼は自分を遥かに越える魔力を持っている少年を見て、ある人物を思い出した。

「この感じ・・・まるであいつと―――」

黒い冷気を纏った拳が顔面に突き刺さる。まともにそれを受けた彼は砲弾のように飛んでいき、地面に突き刺さった。

「そんなバカな!?」
「ナインハルト様がやられるなんて!?」

16(セーズ)の1人であるナインハルトが倒されたことでアルバレス軍に動揺が走る。明らかに他とは違う魔力を持っていた人物を倒したレオンは、高々と拳を突き上げる。

「このままハルジオンを奪還する!!行くぞお前ら!!」

勢いに乗りどんどん敵を押し込んでいく蛇姫の鱗(ラミアスケイル)人魚の踵(マーメイドヒール)の連合軍。それを見ていた天海は、思わず舌なめずりしていた。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
原作ではカットされていたこともありオリジナル要素を盛り込みやすい現在。
次は以前前書きで書いていたレオンがカグラを落としてしまうかもしれない要素が入ってくるかもです。 
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