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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第八十二話 ボウ倒しで矯正を


ボウ倒し後編です。

銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けませんシリーズの外伝や各種設定に、
別伝 アンネローゼとキルヒアイスの最後 後編UPしました。

ネタ捏ねるのに時間が掛かりました。
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第八十二話 ボウ倒しで矯正を

帝国暦480年8月2日

■オーディン 帝国軍士官学校

オフレッサーが居残りをさせた、3号生をジロリと見渡しながら説明を続ける。
「お前達は、校門前から走り出し校舎に入れれば食事に行って宜しい!」
一見簡単そうであるが、その途中にある得体の知れない箱の山は恐ろしさを感じる。

更にボウ倒しと言っている意味がわからない、フレーゲル達には不気味なだけである。
「誰か、ボウ倒しを判るものはおらんのか!」
フレーゲルが聞き出そうとするが、普段からサボってばかりの3号生では判るはずもなかった。

惚けている3号生を見てオフレッサーが部下達に命令を出し人形を2体出してきた。
その人形の顔はフレーゲルとクラーマーによく似ていた。
人形を見て3号生がざわめき出す。

「何故私に似ているのだ!」
「私もです」

フレーゲルとクラーマーが騒ぎ出すが、オフレッサーの一睨みで静かになる。
「3号生総代と副総代の姿を模した人形でボウ倒しを説明する!」
クレーマー君人形が校庭中央に設置される。

この映像は全館放送で食堂でも流されていた。
食事を取りながらTVを見るのは本来禁止であるが、
今回は校長のお達しで放送を見るようにと流されていた。

実際はオフレッサーが校長にOHANASHIした結果であるが。
そんな些細なことは関係ないのであった。
まあ、校長の胃炎と禿が進行したのは確かである。

クラーマー君は中央に置かれた後、オフレッサーが号令を出す。
「ボウ倒し開始!発射ー!!」
オフレッサーのかけ声と共に連弩から矢が次々に発射される。

なんだー、わーなどの悲鳴などが3号生から聞こえ始める。
次の瞬間、全身に矢が刺さり完全にハリネズミ状態のクラーマー君が出来ていた。
クラーマー本人が蒼くなり今にも気絶しそうである。

全校中に驚愕が走る、校長は泡を吹きかけている。
フレーゲル以下3号生は完全に真っ青である。
校舎で見ている他の生徒は絶対にサボらずに真面目にやろうと心の底から誓った。

「おい、フェルナー、こんな馬鹿なことをするのか?」
「ああ、あれがボウ倒しだよ」
「恐ろしいな」

その後の話であるが、オフレッサー以下装甲擲弾兵が臨時教官をしている間は、
生徒の門限破りが一切起こらず、上級生巡邏が暇で仕方が無かったのである。

「フン、この矢の雨を走り抜けるのが、装甲擲弾兵名物ボウ倒しだ!」
オフレッサーがニヤリと話す。
「無茶だ。そんな事出来るわけがない!」
3号生の誰かが叫ぶ。

「無茶かどうか、お前等では判らんだろうから、儂がやり方を見せてやろう!」
オフレッサーが準備の為に装甲服を着て、愛用の戦斧を手にする。

「お前等、良ーく見ていろ。発射用意」
オフレッサーがスタートラインに立ち、スタートの合図を行う。
「撃てー!!」

次々に矢が発射される。
その中心をオフレッサーが走り始める。
「うをーーー!」

走るオフレッサーに矢が次々と向かっていく。
TVで見ている4号生、2号生、1号生は固唾を呑んで見ている。
一部生徒は食事もそっちのけで、屋上などから見学している。

3号生は驚く者、何も言えない者、オフレッサー死ねと祈る者など色々であった。
矢を避けながら走り、身を捩りジグザグ走行を行う。
しかし、オフレッサーの元へ多数の矢が迫る。

避けられない当たると皆が見ていると、
オフレッサーは持っている戦斧を旋回させ矢をたたき落とし始めた。
「ウォーーーー」

次々に向かってくる矢がたたき落とされる。
そのたたき飛ばした流れ矢が3号生の方まで飛んでくる。

コルプトの足下に数本が纏まって飛んできて刺さる。
「ひえーーーーーー!!」
コルプトは倒れて気絶する。

シャイド男爵の足下にも刺さるが意外に動じていない様に見える、
実は既に立ったまま気絶状態であった。

ヒルデスハイム伯は失禁していた。
フレーゲルは、普段の傲慢さは何処へ行ったやら、
他人の後ろに隠れている。

オフレッサーは矢をたたき落として悠々とゴールへ到着し、ヘルメットを脱いだ。
「フゥ、どうだボウ倒しとはこうやるんだ!」
オフレッサーが3号生の前に帰ってきた。

無茶だ、無理ダー、死ぬー。次々に出る否定の言葉。
「フン、お前等に此は些かきつすぎるからな、少々遣り易いモノを用意した」

そう言いながら、新たな矢を連弩に補給し準備を終える。
今度は、フレーゲル君人形が中央に置かれる。

「この鏃は丸くなっていて少量の火薬が詰めてある、
当たると赤い塗料が散布されるのでそれにより死傷率を計る。
これぐらいならお前等でも出来るだろう!」

ホッとし始める3号生達、そうだいくら何でも死ぬような事はしないよなと思い始めていた。
「お前等、安全だと思うな。矢の速度は速いんだ、当たり所が悪ければ怪我をするぞ!」
オフレッサーの言葉に再度震え出す3号生。

「ではその矢で人形を撃つぞ」
オフレッサーが号令を出す。
「ボウ倒し開始!発射ー!!」
オフレッサーのかけ声と共に再度、連弩から矢が次々に発射される。

次の瞬間、矢を食らったフレーゲル君が大爆発をして木っ端微塵になった。
3号生からまた悲鳴が起こる。
シーンとするその他の生徒。

3号生は最早完全に泣き始めている。
「ガハハハ、火薬の量を間違えたか」
オフレッサーがあっけらかんに言う。

「仕方ない、今日はボウ倒しを中止とする。
次回行うかどうかはお前等の態度次第だ!」

オフレッサーの怒気は凄まじく、
3号生の殆どが頷き此から真面目にやりますと、
泣いて宣言するのであった。

その後軍隊式運動でしごかれた3号生達は食事も余り喉を通らずに授業を受けたが。
昨日までの不真面目さが嘘のように勉学に励んでいた。
一部の馬鹿を除いては。


■オーディン 帝国軍士官学校寮 フレーゲル男爵部屋

今日も又懲りない面々が集まっていた。
メイドのアリーセはヒルデスハイム伯のメイドのアーニャと共にヒルデスハイム伯の部屋で待機している。

「フレーゲル男爵、今日のような屈辱耐えられません!」
「クラーマー、私もそうだが、未だ返事は来ないのか」
「未だ今日の朝ですから、あと数日はかかりますよ」

「あと数日が恐ろしいが、暫くは大人しく従う振りをしているしかあるまい」
「ですな、それしか有りません」
コルプトは完全にびびっていた。

「フレーゲル男爵、止めるわけには行かないのですか?」
「なぜだ」
「知れたら、きっと殺されます」

「大丈夫だ、親父に頼んであるし気がつかれないさ、
いざとなれば、憲兵を出して揉み消すから」
「はあ」

■オーデイン 士官学校内グリンメルスハウゼン特務隊盗撮盗聴部屋

 数人の男女が士官学校内の映像や音声を記録している。
その方法は無線式だと探知機で探られる為に有線で巧みに隠されているのである。

またしても懲りない悪巧みを話し合う馬鹿達に些か呆れ始めている隊員達であった。
そして、憲兵隊を使うというニュースはテレーゼ達にもの凄い恩恵を与えることになるとは、
この時点で判るものは居なかったのである。
 
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