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とある3年4組の卑怯者

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107 絶望

 
前書き
 スケート大会で金賞を獲った藤木はそれを土産に清水へと帰った。そして両親からすき焼きを御馳走になるのだった!!そして藤木は最高の気分で学校に向かうが、教室では重い雰囲気となっていた!!

 スケート大会だの永沢家抹殺未遂事件だの遠回りしてしまいましたが、そろそろ不幸の手紙事件のケリをつけようと思います。 

 
 藤木は長山に聞いた。
「長山君、一体何があったんだい?」
「藤木君、君は知らないのかい!?」
「え?」
「昨日、永沢君の家族が昔町内会長をやってた人の息子に命を狙われたんだ。連絡網で回ってきたけど知らなかったのかい?」
 長山はもう一度確認した。
「う、うん・・・。僕出かけてたんだ・・・」
 その時、ナベちゃんと内藤が藤木に寄って来た。
「おい、藤木!お前なんで電話出なかったんだよ!」
「そうだぞ!いくら不幸の手紙で嫌われたからって電話まで拒否するなんて卑怯者だな!」
「え・・・ええ!?そんな、誤解だよ!!」
 藤木は慌てた。全ての皆が藤木の方を見た。
「そうそう、藤木の家には電話しても全然出なかったのよ」
「本当、無視するなんて卑怯よね」
「この前不幸の手紙出して文句言われたのにまだ卑怯な事やってんだな!」
 皆が藤木を批判していく。
(な、何だよ!せっかく大会で金賞獲ったのにこんな前と変わらない目に遭わなきゃいけないんだ!!)
 そして、藤木は我慢ができなくなった。
「う、うるさーーーい!!」
 藤木は逆切れした。皆が黙った。
「僕は出かけてて知らなかったんだ!!一々卑怯呼ばわりするなあーーー!!!」
「はあ!?開き直ってんじゃねえぞ!じゃあお前はどこへ行ってたんだよ!」
「う・・・、それは・・・」
 藤木はスケートの大会に参加していた事を最後まで隠しておきたかったが、理由をここで本当の事を言ってしまおうかと思った。しかし、この空気で言ったって誰も褒めたりはしないと思った。
「ご、御殿場へ行ってたんだ!」
「はあ、御殿場!?何しにだよ!?」
「そ、それは・・・、し、親戚の結婚式に行ってたんだよ!」
 藤木は嘘を付いた。結局自分から卑怯を治したいと言っていたのにまた卑怯な事をしてしまった。藤木は自分が情けなく、そして皆が憎たらしく思った。
「何だと!?お前永沢がどんな目に遭ったか分かってんのか!?」
「知るもんか!僕は永沢君と絶交したんだ!関係ないさ!!」
 ナベちゃんと内藤が藤木に掴みかかった。
「てめえ!!」
 
 笹山は昇降口に到着し、下駄箱から上履きを取り出した。その時、上履きを見て、「キャー!」と悲鳴を挙げた。
「さ、笹山さん、どうしたの!?」
 まる子とたまえが現れて聞いた。
「わ、私の上履きが落書きされてる・・・!!」
「ええ!?」
 まる子とたまえが笹山の上履きを見た。そこには「クソ女」とか、「ひきょうもののかのじょ」、さらには相合い傘のマークで両側には「藤木」「笹山」とあった。
「たまちゃん、これ酷いね・・・」
「うん、誰がこんな事を・・・」
「まさか藤木!?」
「確かに藤木なら卑怯だからやりそうだよね・・・。いくら笹山さんが好きだからってこんな事・・・」
 笹山は二人が藤木を犯人扱いして反論する。
「藤木君の事を悪く言わないで!」
「・・・え?」
「藤木君がそんな事するわけないわ!」
「う、うん。とにかく先生に言おうか・・・」
 三人は教室へと向かった。その時、騒ぎ声が聞こえ、何事かと思い、入ると、藤木が内藤、ナベちゃんと乱闘を起こし、大野と杉山が鎮めようとしていた。
「おい、やめろ!!」
「落ち着けよ!!」
 まる子はその場にいたリリィに聞いた。
「ちょっとリリィ、これ何があったの?」
「藤木君が昨日の電話が繋がらなくて、出掛けてたって言う事で卑怯って言われて喧嘩になっちゃって・・・」
「藤木?そういえば昨日の電話に出なかったね」
 たまえが思い出すように言った。
「ねえ、やめてよ!!」
 笹山が止めに入った。
「笹山さん・・・」
「何だよ、笹山、こいつは親戚の結婚式で御殿場言ってて電話に気づかなかったんだぜ」
 内藤が言った。そしてナベちゃんが笹山の上履きを見た。
「おいおい、その上履き、落書きされてんじゃねえか。これももしかして藤木か!?」
「え!?」
 藤木は驚いて笹山の上履きを見た。確かに落書きされている。
「お前ならやりそうだな」
 内藤が決めつけた。
「し、知らないよ!」
 藤木は否定する。
「ふん、信じるもんか。卑怯者だから直ぐ嘘を付くからな!」
 そして周りも藤木に対して非難の声が挙がる。藤木は我慢が出来なくなった。
「な、何だよ・・・!たかが出掛けてて電話に出なかったからって卑怯者呼ばわりして、勝手に決めつけて・・・!!もういいさ、どうせ俺は最低な奴だよ!!」
 藤木は泣き喚き、教室から逃げ出した。皆が放置する中、笹山は藤木を心配し、ランドセルを置くと直ぐに藤木を追いかけた。

 藤木は体育館裏に隠れて泣き続けた。学校が嫌になり、帰ってしまおうかと思った。
「何だよ、くそったれ・・・!!僕は大会で金を獲ったんだぞ・・・!なのになんで責められなきゃいけないんだよ・・・!!」
 その時、笹山が追い駈けてきた。
「藤木君!」
「笹山さん・・・。連絡網が繋がらなかった事や上履きの落書きの事で文句を言いに来たのかい!?連絡網はともかく、上履きは僕じゃないぞ!信じないだろうけど!もう軽蔑でも卑怯呼ばわりでも何でもやってくれ!!どうせ俺は卑怯者なんだから!!」
「ううん、私藤木君はそんな事するような人じゃないって信じてるわ!不幸の手紙の時だって好きで出した訳じゃないでしょ?それに藤木君は親戚の結婚式に行ってたんでしょ?それは仕方ないわよ」
「いや、それは嘘なんだ・・・」
「・・・え?」
「結婚式じゃないんだ・・・」
「じゃあ、何なの!?」
「本当は皆を驚かすために直ぐには言いたくなかったけど、今は笹山さんだけに教えてあげるよ・・・」
 笹山は藤木が嘘を付いていた事に動揺したが、皆を驚かすためと言う事なら怒る気になれなかった。
「昨日、実は御殿場でスケートの大会があったんだ。僕はそれに参加して金賞を獲ったんだ。だから学校にその連絡が来るまで隠しておきたかったんだ・・・」
「え?大会で金賞を獲ったの?凄いわ」
「あ、ありがとう・・・。やっぱり僕、本当の事を隠すのは卑怯かな?」
「ううん、そんな事ないわよ。だからいつも急いで帰ってスケートしに行ってたのね。でも大会に出ようってよく考えたわね」
「実は大会に出る事、堀さんが勧めてくれたんだ」
「堀さんって藤木君がスケート場で仲良くなったあの子の事?」
「うん、不幸の手紙の事で責めた皆を見返して、卑怯を治したいなら大会に出るべきだって言ってたんだ。笹山さん、この事は皆に黙っといてくれるかい?」
「うん、いいよ。皆もきっと見返せるわよ。私がいるから教室に戻ろう。もう朝の会が始まるわ」
「うん」
 二人は教室へと戻った。

 朝の会が始まった。戸川先生が話を始めた。
「昨日、永沢君の家族が昔町内会長をやっていた人に襲われ、永沢君と城ヶ崎さんが大怪我を負い、暫く入院する事になりました。また、その人は暴力団と繋がりがあったとの事です。今後皆さんも事件に巻き込まれないよう注意してくださいね」
 藤木は驚いた。
(何だって!?永沢君が大怪我だって!?う、でも、僕は永沢君と絶交したんだった・・・)
 藤木は永沢の見舞いに行っても絶交したから断れられるだけだと考えた。 
 

 
後書き
次回:「栄光(みかえし)
 放課後の学級会、戸川先生より藤木がスケートの大会にて金賞を受賞したというお知らせが流された。だがこれに対して男子達の怒りが収まるわけがなく、詰め寄られた藤木は更なる野心を抱く。そして丸尾は各クラスの学級委員と共に無差別な嫌がらせが起きていると知り・・・!?

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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