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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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ほーじょーのおんなしゅじん

「お爺ちゃんをバカにするな!
貴女こそファミリアに属してる癖に一匹狼気取りですか!
そういうのダサいんですよ!
ばーかばーか!」

時は少し遡る。







「ベル、ここが豊饒の女主人だ」

リヴェリアはベルとアイズを連れて酒場へ来ていた。

活気に溢れ、中から喧騒が聞こえてくる酒場だ。

「おっきな酒場ですねー…
買い出しですか?」

「いや、我々は遠征に行っていてな。
今日はその打ち上げだ」

「え、そんな所に僕が居たらマズイ気が…」

小心者の彼は遠慮するが、その手はアイズに握られているので逃げられない。

「ベル、お前の歓迎会も兼ねているんだ。
お前が居なくてどうする?」

「そ、そんなの畏れ多いですよ!」

「気にするな。
主神がアレだからな。宴会はよくあるんだ。
今のうちに馴れておけ」

「は、はい」

リヴェリアを先頭に、酒場へ入る。

その瞬間皆の視線が三人に集まり、ベルは思わずアイズの背中に隠れてしまった。

「あれ?アイズ、その子誰?」

とアマゾネスの少女が問う。

「ベル?なんでかくれてるの?」

「や、だって、こんなにみられるのは初めてなんです…」

「彼はベル・クラネル。
我々ロキファミリアの新たなメンバーだ。
あと、こんなナリだがしっかり男だ。
そこら辺はレフィーヤがよく知っている」

レフィーヤ・ウィリディスは顔を真っ赤にして俯くが、その意味を知る者は居なかった。

「僕は何も聞いていないよロキ?」

「ああ、ベルにファルナ刻んだんは今日の昼やからな」

「良いではないかフィン」

上からフィン、ロキ、ガレスだ。

「えぇ!?僕って団長の許可もらってないの!?」

と会話を聞いていたベルがたじろいだ。

「ベル、安心していい。主神が許したのだ。
団長が許さない訳がないだろう」

「そ、そういうものですか?」

「ああ、とにかく座ろう」

リヴェリアはベルとアイズを連れて幹部らの座るテーブルの椅子へ座った。

その隣にアイズが座り、ベルはリヴェリアの膝の上だ。

「なんやリヴェリア。ベルを膝の上に乗せるの気に入ったんかいな?」

「うむ。なかなかにいいぞ」

その光景に他の面々は目を丸くしていた。

エルフは基本的に異性との接触を避ける傾向がある。

ハイエルフともなれば潔癖症と呼べるレベルだ。

長年冒険者をしているとはいえリヴェリアはハイエルフの王族だ。

そんな彼女が膝の上に乗せる者というのは、それだけで皆の興味を引くのだ。

くぅ~ 、という音が聞こえた。

ベルの顔が真っ赤になる。

「まずは食べようか。話はそれからだよベル・クラネル」

「は、はい」

運ばれてきた料理をリヴェリアの膝の上で食べているベルは、その容貌を相成って、小動物のような可愛らしさを醸し出していた。

ほとんどの者がその様子を微笑ましく眺めていた。

「うゆ?どうかされましたか皆さん?」

「ベル・クラネル君」

「はい!」

「じゃぁ、入団試験と行こう」

「わ、わかりました」

ここで幹部の面々はフィンが悪戯をする気だと思い至った。

ロキファミリアは基本的にロキのスカウトで集められた集団だ。

入団試験なぞある筈もない。

だがそこはかの悪神ロキの子。

毒されているのだろう。

「ではまず一つ目だ」

「はい」

「ここに居る女性の中で誰が一番魅力的にうつっているんだい?」

「ふぇ!?」

フィンはニコニコしながらベルを見つめていた。

このテーブルにいる女性はロキ、リヴェリア、アイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ、ともう一人の六人だ。

「え、えぇっと。あの、その、えっと…」

顔を赤くするベルを『可愛い』等と思っている面々。

するとベルがポツリと答えた。

「え、えっと…アイズさん…です」

ベルがチラチラとアイズの方を見る。

「それは何故だい?」

「そ、その…宝石みたいに綺麗な瞳だなぁって…」

それを聞いて、アイズが少し照れくさそうにしていた。

もっともアイズ自身その感情が如何なる物かはわかっていないのだが。

「うんうん。じゃぁ二つ目、君の年は?」

「今年で14歳になります」

「ベルは嘘ついてへんでぇ。
なぁなぁ、リヴェリアの胸の感触はぁ?
さっきは聞きそびれたからなぁ…」

「のっのののノーコメントで!」

ベルとしては意識しないよう努力していたのをロキの一言で意識してしまったのだ。

「では最後だ」

「はい」

「君は、どうしてオラリオに来たんだい?」

「冒険者になるためです」

「どうして冒険者に?危ないよ?」

ベルは、フィンの目を真っ直ぐに見据えた。

「僕は、僕は、英雄になりたいんです。
僕は、小さい頃、祖父に救われました。
その背中が、僕には英雄に見えた。
だから、僕は、英雄譚に出てくるような英雄じゃなくてもいい。
誰かを救える。
誰かの為の英雄になりたい」

ベルの真っ直ぐな瞳。

フィンは、その紅い瞳に呑まれそうになった。

フィンが口を開きかけた時…

「あっはっはっはっはっは!
ひゃはははははははは!」

誰かが感情の無い笑い声を上げた。

「くくく…」

笑っているのは、ベート・ローガ。

ヴァナルガンドと呼ばれる『女』だった。

「おいガキ。悪い事ぁ言わねぇ。さっさと帰れ」

「おいベート」

リヴェリアの注意を無視して、彼女は続けた。

「お前みたいなのじゃぁ英雄なんて無理だよ」

「やってみなくちゃわからないじゃないですか!」

「っは!弱い奴の逃げ文句だな」

そして、ベートは言ってはならない言葉を、ベルのプライドを、根幹を傷付ける言葉を、吐いてしまった。

「どうせお前の爺さんもよわっちぃんだろう?」

ベルの瞳に、涙が溢れる。

斯くして。

「お爺ちゃんをバカにするな!
貴女こそファミリアに属してる癖に一匹狼気取りですか!
そういうのダサいんですよ!
ばーかばーか!」

そう言い残したベルは、リヴェリアの膝から降り、豊饒の女主人から出ていった。
 
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