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名探偵と料理人

作者:げんじー
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第十三話 -月いちプレゼント脅迫事件後-

 
前書き
このお話は 原作3巻 が元にしています。

すみません、この話ってこういう介入の仕方くらいしか思いつきませんでした。

今回、「トリコ」の世界を経由して、という設定で執筆した理由をふんだんに盛り込んでいます。ご注意ください。 

 
「SP透影?」
「ああ、俺が前世で透影という蛇と人に極めて友好的なSPカメレオン、様々な毒を体内で調合するポイズンバードという3種類を掛け合わせて品種改良した護衛用の動物だよ。護衛対象、この場合は紅葉だね。紅葉に危機が迫れば瞬時に紅葉を異空間に退避させる。例え、目の前で核爆弾が爆発したとしても無傷で生還できるし、食べ物の毒物が入っていたらポイズンバードの遺伝子から引き継いだ能力で気づき紅葉がそれを食べるのを防いでくれるよ。それに普段はカメレオンの特性で全く見えないから紅葉も護衛してくれていることを忘れるんじゃないかな?」
「へえ。なんかすごい動物なんやな。こんなにちっさくて可愛いのに。それでなんでウチに?」

ひよこほどの大きさのSP透影を撫でながら、紅葉は俺にそう言った。
とある日の放課後、帰宅してすぐ俺はトリコ世界に行きとある生き物由来の製品と俺が品種改良したモンスターを二匹連れて帰り紅葉に渡した。蘭ちゃんと高校で話すと、頻繁に事件に遭遇するようになったと言っていたのでまあ過剰戦力だが護衛として渡すことにした。唯こいつには一つこの世界で渡すには欠点がある。

「こいつは普段は透明になって護衛してくれるのだけど、とあることを毎日しないと拗ねて二度と護衛してくれなくなるんだよ。それが一日に最低10分は姿を現して、護衛対象に撫でてもらうこと」
「あら、可愛らしい性格しとるんやね。でも……ああ、だからウチにだけ渡すんやね」
「そう、結構奇怪な動物だからね。トリコ世界のことを知っている人にしか渡せないんだ」

俺がこの掛け合わせをした時、人が好きで守っているのにその相手から忘れられるのは可愛そうすぎるということで何とかこの習性を植え付けるのに苦心した。
そのことに関しては後悔はないし、産み出した後もそのことに対して文句を貰ったこともなかった……が、こっちで護衛してもらうには障害になるとはね。

「こいつは頭もいいから、人目につくところでは出来ないことを教えておけばそこは考慮してくれるよ。撫でてほしい時は頬を突いて教えてくれるから忘れることもないだろうし」
「そやなあ、この子を可愛がるのはいくらでもかまへんけどこの子について聞かれるのはかんべんやね」

とりあえず、これで俺がいないところで事件に巻き込まれることもないだろう。料理関係で自重を捨てたんだし、好きな女を守ることに自重なんていらないだろう。

「これ、新一君とか蘭ちゃんにこそ必要やと思うんやけど今は無理かなあ」
「まあ、いずれね」

―ピンポーン!-

「お?」
「あら、来客?誰か来る予定やったん?」
「いや、今日は仕事も入れてないし。そもそも紅葉と夕飯作るっていう約束だったろ?」
「知っとるよ、龍斗がウチとの約束と他の約束を黙ってブッキングしたりせえへんことはね。けどちょこっと話すくらいはできるやろ?」
「まあそうか。今日は伊織さんもいないし出てくるかな」

そう言い、俺は玄関に向かった。向かっている最中にもインターホンはなり続いている。はてさて?

「はいはい、どちら様?」
「龍斗!わりいが助けてくれ!」
おや?

「新ちゃん?どうしたん?こんな日も暮れかかった時間に」
「ちょっとどじっちまってオレが新一じゃないかって蘭に疑われてるんだ!この変声機を使ってオレのふりをして蘭に電話してくれ!」
「おいおい。調子に乗って推理を披露したんでしょ?まったくもう。いいよ?新ちゃんの口調で電話すればいいんだね?時間は?」
「ああ、頼むぜ!時間は一時間後くらいに!!」

そういうと、蝶ネクタイを渡してさっさと帰って行った。……あ、しまった。あれ使えばよかった。

「誰やったん?」
「新ちゃんだよ。蘭ちゃんにバレそうになったから電話で新ちゃんの演技をしてくれって」
「なにやっとるんや新一君は……それでその蝶ネクタイが?」
「ああ、変声機だよ『どうだ?紅葉』」
「うわっ!新一君の声になった!すっごいなあ、その機械」
「なんだかんだ、阿笠博士ってすごい発明家なんだよ。まあ今回は使わないけど」
「へ?つかわへんの?」
「丁度、SP透影を持ってくる時にいずれ奴らをおちょくってやろうって思って買ってきた変装道具があるからね。そっちを使うよ」
「変装道具?」









「今度、体育の岸田先生結婚するらしいわよ」
「へえ、あのゴリラ結婚ねえ」
―――――ガチャ!!

「へ?」
「どうしてあなたが私の高校の先生の事知ってるのよ?」
「へ?あ、いや。蘭ねーちゃんいつも言ってるよ?ゴリラゴリラって」
「嘘おっしゃい!おかしーおかしーと思ってたけど、あなたやっぱり新一ね!!?」
「だ、だからそれは……」
「さあ、白状しなさい!新一!!」
「ちょ、あ……」

しまった!やっぱり蘭の奴!!くっそ、龍斗!もう一時間経ってるぞ、なんで電話してこねーんだよ!!このままじゃオレは……

――コンコンコンー

「ら、蘭ねーちゃん?お客さんだよ?」
「ほっときなさい!お父さんもいないし閉店よ閉店!」
「でも、電気ついて声もするのに出なかったら評判悪くなっちゃうよ?」
「っち」

舌打ちをし、探偵事務所の扉に向かう蘭。くそ、少しだけ猶予は伸びたけどやべーのは変わりねえ!龍斗ぉ、早く電話をしてきてくれよ!!

「はい!!申し訳ありませんが、今日はもう閉……て…ん…」

なんだ?蘭の様子がっ!!?!?!?

「別にオレはオメーの父さんに依頼しに来たわけじゃねーぜ?蘭」
「新一!!?」

オレ!!?









「だって、新一はあそこに……」
「あそこって……コナンのことか?」
「え、どうして?」
「博士の親戚の子だろ?オレんちで預かれねーかって相談に来てたから知ってんだよ。ほら、あのトロピカルランドの日に。オレは事件の調査ですぐでねーといけなかったら無理だって言って出たけどな。久しぶりだなコナン?」
「あ、え、は?い?」

おーおー、混乱してる混乱してる。そりゃあ、そうか自分が目の前にいるんだからな。
俺は、トリコ世界で買ってきた「メタモルアメーバ」を被り「詐欺鷺」の声帯筋を喉にはっつけて新ちゃんに変装したってわけだ。俺の方が新ちゃんより10cmほど身長は高いが美食會の「ボギーウッズ」のように関節と筋肉を外し、身を縮めた。その様子を見ていた紅葉には「二度とウチの前でせんといて!」と珍しく怒られてしまった。まあボキボキ骨鳴らして人が縮むんだから当たり前か。

「なんか騒いでたみてーだけどなんかあったか?」
「あ、いやなんでもないわよ?それにしても、いつ帰ってきたのよ!?新一!」
「ついさっきさ。だけど着替えと資料とったらまたもどんねーといけねーんだ」
「ま、また!?」
「おうよ。龍斗から蘭が寂しがってるっていうから会いに来てやったんだぞ?」
「べ、別に寂しがってなんかないわよ!変なこと言わないでよね!!」

……こ、こんな感じだよな?電話よりいいと思ってやってみたが誰かを演じるってのは思ったより神経使うな。新ちゃん、よくもまあいつもできるもんだ。

「じゃあ、オレもうもどっから!」
「え?もう!!?」
「わりーな蘭。今回のはちと厄介でな、全身全霊をかけなきゃ解けそーにねーんだ。でもぜってー、オメーの元に帰ってくるから待っててくれよな」
「な、なによ!そんなこと言って。ばっかじゃないの!?」
「じゃあ……っと、なんかコナンの奴がオレと話したがってるみたいだな?オレんちに行く道すがら話して、帰りはもうおせーし博士の家にでも泊めさせるぜ」
「え?ちょ、いきなり」
「いいよな?コナン」
「え、あ。……うん!僕新一にーちゃんとお話ししたい!」
「じゃあまたな、蘭」
「もう、勝手にしなさい!」

俺に手を引かれて黙っている新ちゃんを連れて工藤邸まで来た。そのまま家の前を通り過ぎ博士の家に着いた。俺がインターホンを鳴らすと

「誰じゃこんな時間に?……新一!?元の姿に戻れたのか!!?って、へ?こ、コナン君?し、新一が二人!??」
「……とりあえず、中に入れてくれ博士」

「……母さんか?もしかして龍斗にオレの事聞いて?でも母さんたちはロスにいるはずじゃあ?」

あちゃあ、そうきたか。そういえば有希子さん他人の顔を作るのは全然だめだけど身内の顔はそっくりに作れるだっけね。
ずっと黙っていた新ちゃんがそう語ってきたので。

「違うよ?有希子さんならブーツで身長を誤魔化さないといけないだろ?俺が履いてたのは普通の靴だったろ?」
「じゃあ、オメーは誰なんだよ!?龍斗は俺より身長がたけえし!」

そう言われたので種明かしをすることにした。人の身長がボキボキ骨の音を鳴らしながら一気に10cm伸びるのは気持ち悪かったのか、二人ともドン引きしてた。そしてマスクを外すと

「オメーかよ!龍斗!!なんなんだよ一体!」
「龍斗君!!ワシにも説明してほしい!」

詰め寄られたので、俺は何とかありえそうな言い訳―まあ有希子さんに習ったってことだけど―をして納得してもらった。声は声帯模写はできると言い張った。

「しっかし、なんだよさっきのは。くねくねしてたら身長伸びるってオメーは全国ビックリ人間か」
「150cmまでは縮めるぞー、やってみるか?」
「やらんでいい!!」
「ま、まあ新一君。君が小さくなってから龍斗君の非常識加減が天井知らずになってきてる気がせんでもないが君を助けるためにやってくれたことなんじゃし」
「あ、新ちゃんに化けんのはもうしないよ?俺に演者の才能はないってわかったから。まあしばらくは誤魔化せるだろ?蘭ちゃんが有希子さんの変装術に気づくまでは」
「……あ。蘭も知ってるんだっけか。まあ、確かに変装術に気づいてもう一度オレに疑いを持つってプロセスを経るには相当難易度が高い。後はオレが……」
「新ちゃんがボロを出さなければいい話、だろ?」
「うぐ。わーってるよ。気を付ける」
「ホント気を付けてくれよ?今夜紅葉と料理作る予定だったのにキャンセルしちまったんだから。おかげで暫く共同料理はおあずけだ」
「ははは、相変わらずお熱いこって」
「じゃあ、俺は帰るね。新ちゃんはコナン君として博士の家に一泊することになってるから博士、よろしくお願いします」
「ああ。またいつでもきなさい」

そうして、俺は阿笠邸から自宅に戻った。

「おかえり、龍斗。お疲れ様でした」
「ただいま、紅葉。俺に俳優は向いてないみたいだ。すごく疲れた」
「ふふ、ウチも見て見たかったなあ、龍斗の演技」
「あー。あれは見せられたもんじゃないよ。恥ずかしいしこれっきりさ」
「機会なんていつ来るかわかったもんじゃあらへんよ?ひょんなことからまた演技、する必要になるかもしれへんし」
「そうならないことを祈るよ」
「それじゃあ、龍斗?お夕食を先に済ます?お風呂の準備もできとるから先に入ってくる?」
「じゃあ、先に食べようかな」
「わかった、じゃあ一緒にいこ」
「ああ。今日はごめんな。一緒に料理作るはずだったのに」
「ええよ。こういう事態やし。でも楽しみにしてたんですよ?だから罰としてしばらくはなし、です。それとウチの食べたいもん、しばらく作ってな?」
「はいはい、おおせのままに我がお姫様」
「なんやそれ?……よきにはからえ?あかん、ウチも演技の才能ないみたいや」
「似た者同士ってことかな?」

そう笑顔で言い合い、俺達の夜は更けていった。 
 

 
後書き
はい、なんかすみませんでした。
透影以外は全部オリジナルの動物です。これで紅葉の守りはばっちりです。
・因みに「メタモルアメーバ」は生きていて、対象の写真を見せるとその顔に変身してくれます。(という設定です)
・「詐欺鷺」は声真似で人をだます鷺でその声帯はとある手順を行って声を聞かせるとその声を覚え、喉に貼るとその声が出せるようになる(という設定です)
名前から想像できそうなのは想像にお任せしますがいやこれは無理だろってのだけは後書きで触れたいと思います。

トリコの世界を経由させたのは、「毒殺、その他有害事象を無効化できる見えない護衛」という存在を魔法以外で出したかったためです。
ネーミングセンスについては触れないでください。へこむので。 
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