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【アンコもどき小説】やる夫は叢雲と共に過剰戦力で宇宙戦艦ヤマトの旅路を支援するようです

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閑話 研究会

「要するに、俺達は何を作れば良いのかという話なのさ」

 真田志郎少佐は淡々と行き詰まっていた話題を口にしてため息をついた。
 退役間近のゴップ提督の私設研究会と言えば聞こえが悪いが、その実態は今後の対ガミラス戦の戦争指導会議である。
 政治の方に足を移すゴップ提督としては、ここでその方向性だけは固めておく必要があった。
 そんな研究会に昇進の上に呼ばれた真田と古代守少佐と新見薫大尉の三人は、間違いなく漂流者艦隊のコネという分かりやすい理由がかった。

「何をって、放浪者艦隊もらった新型戦艦を作るんじゃないの?」

 オブザーバー参加という事になっている東雲愛歌の質問に真田志郎は答えつつ、耳目が自分に集まっている事を自覚せざるを得ない。
 彼らと放浪者艦隊の関係は文字通りトップシークレットとしてこの場の人間にすら明かしてはいけないと聞いたゴップ提督が自ら命じたのだから。
 なお、あの人を喰ったようなゴップ提督がまるでペンウッド卿のように胃の当たりを押さえるという珍しい風景が見れたのだが、それはそれで。

「ここに集まったのはその先の話をする為さ。
 旗艦級戦艦。
 全長10キロ以上になるだろうあのデカブツを地球はどういう目的で作るのかという話なんだからな」

 横から入った古代守の言葉は正しかった。
 まだ恒星間国家になりきれていない地球は、その証としての旗艦級戦艦のデザインに苦しんでいたのである。
 今まではガミラスとの戦争という事もあって、漂流者艦隊から与えられた設計図を用いたマゼラン改二級宇宙戦艦や建造が始まったグァンタナモ級宇宙空母、波動機関を搭載した現行艦艇の更新とリソースが足りていなかった。
 だが、第三次オールト会戦で放浪者艦隊とプローグ・コモナリティが見せた旗艦級戦艦の威力に地球側が魅了されたのは言うまでもなかった。
 戦争が続く以上、この旗艦級戦艦の建造の方向性ぐらいは決めておこうと言うのが本来の趣旨だった。
 そこで観戦武官から開示されたエクゼクター級スター・ドレットノートの化物ぶりに一同度肝を抜かれたのだが。

「そもそも、兵器ってのは使う状況と理由が無いと有効に機能しないものなのですよ。お嬢さん」

 更に口を挟んだのは、藤堂進中将。
 日本系将官が多いのは、軍務局を預かる芹沢提督による抜擢という話もあるが、そのあたりの暗い話は古代や真田は知るつもりもない。
 なお、先ごろ火星自治政府内で政変が起こり、彼の兄が政府代表についたとかなんとか。
 どこかの誰かが持って帰ってくれたムラクモ・ミレニアム成立時の火星自治政府の暗部の証拠が政変の決定打になったのは言うまでもない。
 火星自治政府の政変とムラクモ・ミレニアムの内部再編は、放浪者艦隊へのサインだった。
 過去に落とし前をつけさせたから、地球に帰参してくれという。

「でも、旗艦級戦艦を出せば一撃じゃない?」
「その旗艦級戦艦が戦闘機に弱い事を貴方は乗って体験したでしょう?」

 東雲愛歌が黙ったのを見て、藤堂進は研究会の面々を見渡す。

「ここで、お嬢様の為に原点から考えることを許して戴きたいのですが?」

 会議主催者のゴップ提督が頷くのを確認して、藤堂進は中央の3Dモニターに何かを打ち込んでゆく。

「まず、我々の艦隊勢力を整備する目的は何か?
 第一にその点が問題となります」

「おい。
 そこまで戻らないとならないのか?」

 軍務局長である芹沢虎鉄提督が呆れたように言ったが、ゴップ提督が先に頷いたのでそれ以上口を開くことは無かった。
 だが、別の参加者が藤堂に噛み付いた。
 彼は国連統合軍の財務官僚だった。

「当面は放浪者艦隊と同じようなものを作ればいいだろうが。
 彼らが多用しているあの三角の船で押しつぶせばいい。
 ……と言えないのが、そもそもの問題なんだよなぁ」

 ここで、戦時体制になんとか入れた地球側の脆弱さが露呈する。
 戦時体制に移管できたフォン・ブラウン条約の内容は以下の通り。

 1)各国戦力を抽出し、国連統合軍に移管。戦争の指揮・指導を国連統合軍司令部が行う。
 2)各国の承認後国際連合を軸に政府組織を新設の地球連邦に移管。ガミラス戦終了後に議会を設置し、連邦大統領を選挙にて決める。
 3)その他もろもろの諸事はガミラス戦終了後に行う。

 まず、1)ではやくも足の引っ張り合いが発生していた。
 波動機関への更新による既存艦艇には国連統合軍という所属の下に、各国の籍があるのだ。
 つまり、各国がそれぞれの戦力を提供して統一運用を計るというのがかつての国連だったが、ガミラス戦という存亡の危機において建造や計画から国連統合軍が行う事ができるようになった。
 それで軋轢が起きない訳がない。
 自分たちの金で造った船が別の所の防衛に行って、被害を受けて許せるほど人は寛大ではないのだ。
 そんな状況下での火星自治政府内部での政変。
 各国はそれを来るべき地球連邦移管における生贄と正しく認識していた。

「漂流者艦隊と同じものを使えないのか?
 漂流者艦隊はプローグ・コモナリティにはあのデカブツを売っているのだろう?
 我々も交渉して持ちかけたらいいじゃないか?」

 国連からやってきた経済官僚がまた口を挟む。
 それに返事をしたのは新見薫だった。

「あの船の乗員、三角の船ですから多分スター・デストロイヤー級の事を指していると思いますが、あれ一隻の乗員は七千名を超えるそうです。
 漂流者艦隊の方でもその人員をまかないきれず、クローンとドロイドで運用している状態です」

 それがまた参加者に憂鬱な顔をさせる。
 ドロイドについてはある程度の研究が進んでいた。
 だが、その社会参加が何をもたらすかまで考えているわけではなく、そこに人とまったく同じクローンまで入ってくるというのだ。
 火星自治政府が計画を進めていた『艦娘計画』と『侍女計画』は軍事的に見れば有効な策に見えて政治的には核爆弾に等しい地雷だった。
 それを踏まずに後任に任せるゴップ提督の政治的嗅覚の何と鋭いことか。

「一隻七千名。
 必然的にドロイドとクローン導入前提になりますな」

 真田志郎の補足に経済官僚が更に補足をつける。
 そこから見える、ガミラスの経済から見た艦艇整備というやつだ。

「ある意味、ガミラスがあの手の大型艦を導入していない理由の一つでしょう。
 あの手の船を銀河規模で展開したら、ガミラスと言えども人が足りなくなる」

 捕虜からの情報でガミラスの情報がわかりつつあった今、ガミラスのドクトリンなるものが見えてきた時期でもあった。
 そこから考えると、恒星間国家と銀河間国家の領域の広さと艦の用途が否応なく透けて見える。
 大小マゼラン銀河の統一を成し遂げ、更に各地に戦線を抱えるガミラスには旗艦級戦艦を作る必要性が無かった。
 オールト会戦がそうであるように、あまりに広大な縦深を持ち、次が用意できるからだ。
 波動機関搭載艦艇の火力は小型でも十二分に強力であり、艦艇が必要な戦線はいくらでもあったのである。
 ガミラス人の捕虜情報から銀河系方面が主戦戦ではなく二級ガミラス人や戦闘ドロイドを投入していた事を知り、地球側が愕然としたのもこの時期である。
 一方、漂流者艦隊やプローグ・コモナリティの旗艦級戦艦は、文字通り旗艦である唯一無二の決戦兵器であった。
 恒星間国家での戦闘はその支配領域が狭いことから艦隊全集結の決戦で勝敗が決る事が多く、その決戦だからこそあのようなデカブツを作る必要性が出てくる。

「そして、そんな決戦兵器といえども航宙機には弱い」

 ここで藤堂進が話を戻す。
 3Dモニターにこのような三角関係が浮かび上がる。


        航宙機

    宇宙戦艦   旗艦級戦艦 


「旗艦級戦艦は宇宙戦艦を潰せるが、航宙機の一撃に脆い。
 航宙機は旗艦級戦艦を始め打撃力に優れコストパフォーマンスも良いが、その運用から必然的に宇宙戦艦の支援が必要になる。
 宇宙戦艦は航宙機運用ができ会戦の主戦力にもなれるが、旗艦級戦艦が出てきたら為す術がない」

 ガミラスが恒星間国家ではなく銀河間国家である証左を皆は否応なく思い知らされざるを得ない。
 それをわざと東雲愛歌が口に出した。

「一隻数万もの乗員を使う旗艦級戦艦一隻より、空母数十隻の機動部隊1個の方が価値がある訳ね。
 けど、パイロットの枯渇とかどうなのかしら?」

「二級ガミラス人にとって出世の登竜門だそうだぞ。
 そうやって被征服地の優秀な人間をかき集めているらしい。
 銀河一つを領地にしている国です。
 うち程度の国相手にパイロットが枯渇するという希望は持たない方が懸命でしょう」

 それを言ったのは、伊東真也中尉。
 情報部からの出席で、ガミラスの捕虜尋問等を担当していた。

「で、それは軍内部の多民族化を進めて、征服民族たるガミラス人には面白くないそうです。
 知的生命体というのは自ずと自滅する何か遺伝子でも組み込まれているのでしょうかね?」

 自嘲の笑みを浮かべる伊東中尉を見ずに、藤堂進は話を続ける。
 彼のマーカーは航宙機と旗艦級戦艦を行ったり来たりしていた。

「では旗艦級戦艦は対ガミラス戦に必要なのか?
 現状では必要ありません。
 もっとも、先のオールト会戦での戦訓で造ってくる可能性もありますが、それができる国力ではある事は留意するべきです。
 その上で、この旗艦級戦艦が政治的軍事的に誰に一番効果があるのか?
 我らの友好国である漂流者艦隊とプローグ・コモナリティに対してです」

 その結論に参加者の大半が絶句する。
 国家に友人は居ないとは古くから言われた言葉ではあるが、旗艦級戦艦の価値を対ガミラスではなく対友好国対策と言い切る藤堂進の度胸は並のものではない。

「オールト会戦において、指揮はレビル提督が採りましたが、戦力は我々が一番過小でした。
 この手の合同艦隊の作戦指揮において、明らかに劣っている戦力で音頭をとって不満が出ない訳がありません。
 波動機関を得て太陽系からガミラスを叩き出した今、次の作戦として考えられているのは、プローグ・コモナリティ主導のガミラス追撃戦です」

 太陽系における戦闘でガミラスは戦艦・空母の主力艦を200隻近く、巡洋艦や駆逐艦の補助艦を700隻近く撃沈していた。
 この数はガミラス太陽系方面軍推定3000隻の約1/3を撃沈した事になり、軍隊における艦艇運用1/3が稼働して1/3が整備・訓練、1/3が休養の体制が崩壊した事を意味する。
 追撃する事で、ガミラスを銀河系から叩き出せる可能性は低くはなかった。

「漂流者艦隊を通じてのプローグ・コモナリティとの外交関係は悪くはなく、いずれ正式な国交樹立に向かうでしょう。
 その際に、外交的イニシアチブを考えたら、彼らの所に送る艦艇は考える必要があります」

「まるでオリンピックに送る代表団のようにか?」

 ゴップ提督が面白そうに藤堂進に問いかける。
 その問いかけに肯定の返事をしながら、彼はここでやっと艦艇そのものの話に入る。

「はい。
 参加することに意義がありますが、メダルを取れるならば尚の事いいという訳です。
 この上で、やっと艦艇そのもの話に移れます。
 現状、最も有効なのは航宙機なのはかわりがありません。
 ならば、旗艦級戦艦を空母として運用するべきでしょう」

 ある意味、地球側の技術で出来る発送の転換だった。
 建造において、戦況を一隻で逆転できる必殺技を積む必要はない。
 それはこの船に積める数千機もの航宙機に任せてしまえという訳だ。
 その上で、火力に割くリソースが浮かせられるから、建造は大分容易になる。

「ならば簡単じゃない」

 今までの流れを踏まえて東雲愛歌が話をぶっ飛ばす。
 たしかにこの場に居る多くの日本人の祖先がやった手ではある。
 明治維新の後、大日本帝国と名乗った彼の国が海軍を整備できたのは、列強から軍艦を購入できたからなのだから。
 それを同じ事をしろと東雲愛歌は言い、聞いていたゴップ提督は大爆笑した。



「漂流者艦隊に私達の旗艦級戦艦を作ってもらえばいいのよ♪
 ね。簡単でしょう?」 
 

 
後書き
藤堂進
 元ネタ『征途』
 なお、予定だと沖田提督が司令官、艦長をこの人にする予定たった。
 今回のネタは全部『征途』のオマージュだったり。

恒星間国家での戦闘はその支配領域が狭いことから艦隊全集結の決戦で勝敗が決る事が多く
 元ネタ『ステラリス』
 一回の会戦で全戦力がぶつかるから、負けるとまず立ち直れない。
 そこから滅亡に持ってゆくのに苦労するのがステラリスの面白さ。

ね。簡単でしょう?
 元ネタ。『ボブの絵画教室』のボブ・ロス。
 ちっとも簡単ではない。
 
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