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碧い銀河

作者:fw187
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夢想 その1
  捕虜交換式

 自由惑星同盟の代表、ヤン・ウェンリー提督。
 捕虜交換式の後に僕を含め、数多の随行員が噂の魔術師(マジシャン)に群がった。

 当然、だよね。
 エル・ファシル星系から、輸送船主体にも関わらず、多数の民間人を乗せて脱出。
 アスターテ星域会戦は膠着状態に持ち込み、イゼルローン要塞を奪取。
 アムリッツァ星域でも最後まで戦場に残り、残存艦隊を帰還させた英雄なんだ。

 とてもじゃないけど、割り込む隙なんて、ありゃしない。
 僕は途方に暮れて、立ち竦むしかなかったんだけど。
 銀河帝国の代表、ジークフリード・キルヒアイス上級大将が動いた。

 光り輝く紅玉(ルビー)の様に赤い髪、見事な碧玉(サファイヤ)の様に煌く青い瞳、190cmの長身。
 分厚い包囲網より数段、高い位置にある頭を巡らせた僕の上司は瞬時に状況を把握。
 温和な声で詫びると自然に道が拓け、傍に来てくれたんだけど。
 密やかな敵意を込めた無音の集中砲火、突き刺す様に鋭い視線が痛い。
 通称《赤毛の、のっぽさん》は、女性陣の熱い視線に無頓着。
 遠隔攻撃の嵐に全然、気付いてないみたいだ。

「打ち合わせ通り、例の物は準備できているな?」
 赤毛の驍将は慌てて頷いた僕の腕を掴み、魔術師を囲む障壁も見事に突破。
 人垣に穏やかな声を掛け、道を譲った皆に謝意を述べながら僕を最前列に押し出てくれた。


「初めまして、ヤン・ウェンリー閣下。
 お会い出来て、大変、光栄です。
 提督は嘗て戦史研究科に籍を置き、歴史学者の道を望んでおられたと聞き及びます。
 マイクロ・テープに興味の対象と思われる論文、書籍を収めて参りました。
 御覧頂ければ、幸いであります」

「それは嬉しいですね、御心遣いに感謝致します。
 素晴らしい贈り物(プレゼント)です、本当に有難いですよ」
 ヤン提督から数日後、手紙が届いた。

「先日の贈り物、大変、興味深く読ませていただきました。
 お返しに送りたい品がありますので、フェザーンまで御足労を願えませんか?」
 上司の了解を得て、休暇を取った僕は。
 フェザーンに着いて、驚いた。

 ヤン・ウェンリー、本人が現れたんだけど。
 僕の背後からも、聞き覚えのある声が響いた。

「私は名乗る程の者ではありませんが、貴方と再会の機会を賜り大変嬉しいです。
 彼は私の信頼する優秀な幕僚です、報告書の内容も単なる夢物語の類とは思えません。
 どうも陸の上は落ち着きませんので、貴方の船に御邪魔させていただけませんか?
 それとも、私の船に御招待する方が宜しいでしょうか」

「私は友人の船に運んで貰ったので、美味しい紅茶を出す事も出来ません。
 肩が凝る惑星の重力圏を離れ、貴方の船に御邪魔させて頂ければ有難いですね」
 ヤン提督は僕の上司、ジークフリード・キルヒアイスの差し出した掌を固い握手を交わした。
 帝国軍の情報収集船、フェザーンの盗聴装置が無い密室で。
 2人は腹を割って話り合い、歴史を大きく変える事になったんだ。  
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