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髭男

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第四章

「女の人だったらしいから」
「ああ、その話か」
「あの話聞いたんだな」
「結構有名な話だけれどな」
「実際どうなんだ?」
「あの人本当に女の人か?」
「さて、どうなのかしら」
 謙信もそこはいささか疑問形で答えた。
「実際のところ」
「わからないのかよ」
「その辺りは」
「そうなのかよ」
「それでもね」
 真相はわからない、しかしというのだ。
「そうかも知れないって思って」
「髭剃ったのか」
「謙信さんが本当に女性かも知れないって思って」
「それでか」
「そうなの、あの肖像画についても調べたら」
 彼も影響を受けた謙信のあまりにも有名な肖像画だ、そこでの謙信は顔の周りに見事な髭をたくわえている。
「後で描かれたものらしいし」
「実際にあの髭だったとはか」
「わからないか」
「そうなんだな」
「だからね」
 それでというのだ。
「剃ったのよ」
「あのダルビッシュさんみたいな髭をか」
「あえてそうしたのか」
「そうしたわ、色々皆にもアドバイス貰ったけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりあたくし的にはね」
「髭は剃っておく」
「そうするんだな」
「謙信さんが女の人だった場合も考えて」
「肖像画も実際どうだったかわからないからか」
「そうするわ、そしてね」 
 謙信はこうも言った。
「もっと大事なこともわかったわ」
「もっと大事なこと?」
「それ何だよ」
「ええ、中身よ」
 それのことだというのだ。
「謙信さんは立派な人だったわね」
「ああ、戦争に強いだけじゃなくてな」
「あくまで義を大事にしてたからな」
「戦はしても無駄な殺生はしない」
「嘘を言わない、裏切らない」
「忠義も大事にしていたな」
「毘沙門天も真剣に信仰してな」
 その信仰が為に生涯妻帯しなかった程だ。
「そう考えるとな」
「凄く立派な人だな」
「信玄さんや信長さんも凄いが」
「謙信さんも立派だな」
「あんな凄い人そうはいないぜ」
「中身をそうなるわ」
 謙信の様にというのだ。
「これからは」
「そうか、じゃあな」
「今度はそっちで頑張れよ」
「名前通り謙信さんみたいな人になれよ」
「絶対にな」 
 友人達も決意した謙信にエールを送った、そして実際にだった。
 謙信は上杉謙信のその生き様を学び彼の様になろうと生きた、そうして周囲に立派な人物と言われる様になった。髭から中身へと移っていって。


髭男   完


                2017・6・23 
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