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馬鹿兄貴の横暴

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第五章

 兄は一方的にだ、二人に要求を突き付けた。
「これまで俺が言った通りだ」
「その条件でいけっていうの」
「全部クリアーしないとだ」
 それこそというのだ。
「俺は認めないぞ」
「もうお父さんとお母さんいいって言ってるし」
 七海も負けずに返す。
「大輝君の方もね」
「はい、うちもです」
 ここで大輝も言った。
「認めてもらいました」
「そうか、しかしだ」
 伸也は今も彼を睨んでいる、そのうえで言うのだった。
「俺は認めていない」
「そうですか」
「どうしても認めて欲しいならな」
「出された条件を全部クリアーですか」
「それか俺を倒せ」
 そうしろというのだった。
「そうしたら認めてやる」
「あの、暴力は」
「安心しろ、そこで喧嘩と言ったらだ」
 それこそとだ、伸也も言った。
「アウトだった」
「そうですか」
「俺はワルだったが自分から喧嘩を売ったことない」
 伸也のポリシーだったのだ。
「いじめ、カツアゲ、万引き、シンナー、ヤク、煙草の類はな」
「一切ですか」
「してこなかったし今もだ」
 全く、というのだ。
「していないからな」
「だからですか」
「そうだ、言っていたらだ」
「アウトでしたか」
「本当の漢は暴力は振るわないものだ」
 自分からというのだ。
「そんなことを言った時点でな」
「駄目でしたか」
「御前、外見は頼りないが」
 伸也は大輝を見据えて言った、腕を組んで。
「しかし見どころがありそうだな」
「そうですか」
「よし、一年だ」
「一年?」
「一年仮の期間を置いてだ」
 そうしてというのだ。
「正式に結婚を前提とした交際を認めてやる」
「あの、結婚って」
「俺の妹が付き合うならな」 
 それこそというのだ。
「結婚だ、交際イコール結婚だ」
「だからですか」
「それを前提として付き合え、いいな」
「そうですか」
「そうだ、いいな」
 自分の言葉に呆気に取られている、伸也の目ではすっかり萎縮している大輝に対して言った。
「一年だ」
「そしてその一年の後で」
「結婚を前提としてだ」
「交際ですか」
「いいな」
「あのね、また何言ってるのよ」
 七海がここでまた口を開いた。
「一体」
「何だ」
「何だもこれだもないわよ」
 それこそとだ、兄にさらに言った。
「無茶苦茶ばかり言って」
「俺の何処が無茶苦茶なんだ」
「その全てがよ」
 完全否定で返した。
「一年仮だの結婚を前提だの」
「全部御前の為だぞ」
「勝手にそう思い込んでるんでしょ」
 伸也の方がというのだ。 
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