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楽園の御業を使う者

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CAST14

目が覚めた。
部屋の壁に掛けてある時計を見ると午前六時だった。
「昨日は一日中寝てたもんな…」
のそりと体を起こす。
「少し出るか…」
ベッド脇にあったスリッパを履く。
ガチャリとドアを開け、外へ出る。
出た先はリノリウムの廊下。
"千里先を見通す程度の能力"
視界が広がる。
どうやらここは四葉本邸ではなく少し離れた施設のようだ。
そう言えば達也がそんな事を言ってた気がしなくもない。
病院の玄関に達也が居るようだ。
行ってみるか…
30秒ほど歩き、玄関に着いた。
達也は玄関のイスでタブレットを見ていた。
「達也」
「もう体はいいのか?」
「大丈夫だ問題無い」
「そうか」
そこはノッて欲しかった…!
「おい、達也何を読んでるんだ?」
「ネットニュースだ。ここは新聞の配達なんて無いからな」
まぁ…そりゃそうだ…
でもネットニュースを見れるならインターネットに接続できるはず…
「達也、"大丈夫だ問題無い"って検索してみな」
「うん?まぁ…いいが…」
そして数秒後
「さっきのセリフは言葉通りか死亡フラグのどっちだ?」
と真面目に返された。
「前者だ。お前なら解るだろ?」
「まぁな」
「じゃ、真夜さんに連絡ヨロシク」
「了解した」


「もう体は大丈夫なのね?」
「はい。問題ありません」
「なら良かったわ」
四葉本邸の真夜さんの部屋で、俺は二人きりで彼女と向き合っていた。
「それで…今日で帰るのかしら?」
「何日も世話になる訳にはいかないので」
「わかったわ。なら昼過ぎに車を出すわ」


客室に戻ると、部屋の前に達也がいた。
「どうした相棒?」
「深雪と黒羽姉弟が待ってるぞ」
「なして?」
まだ7時半前だぞ?
「お前の時間操作魔法の事を知りたいそうだ。
マナー違反だと止めたんだがな…」
「構わんぞ。まぁ…あれは真の意味での異能だから真似はできんがいいのか?」
「深雪達もそれはわかっているだろう」
そして、黒羽姉弟の部屋へ向かう。
コンコンコンとノックする。
「文弥、深雪さん。居る?」
ガチャ!
「白夜!起きたんだね!」
「おう」
というか何故深雪さんはここでまってたんだろうか…至極どうでもいいが…
「で、俺の異能が知りたいんだって?」
「はい、四葉が20年掛けても治療出来なかったお母様を治療し、叔母上を若返らせたという魔法がどうしても知りたいのです」
「まぁ…話すのは吝かではないが…」
言っても信じては貰えんだろうな…そもそも俺だってわからない事が多すぎる。
「何か問題があるのですか?」
「あると言えばあるし無いと言えば無い」
「「「?」」」
三人が首を傾げる。
「話す事に問題は無いが、俺自身把握しきれてないんだ」
話が進まんからソコは置いといて…
「はっきり言えば、俺の異能を使えば
アビス。
オゾン・サークル。
シンクロライナー・フュージョン。
ヘヴィ・メタル・バースト。
霹靂搭…
おおよその戦略級魔法を再現できる」
「「「「は!?」」」」
達也の惚け顔って初めて見たぞ。
「俺の異能は"楽園の御業を使う程度の能力"。
よくわからんとは思うがそれは俺もだ」
こんな言い方はなんだが…半日有れば世界を滅ぼせる…はず。
「まず程度の能力についてだが。これはBS魔法の一種で、簡単に言えば特定の事象への干渉力を増大させる才能だ。
そして"楽園の御業を使う程度の能力"ってのはそれらを自由に使えるって事だ。
ポセイドンは
"氷を操る程度の能力"
"寒気を操る程度の能力"
の二つでニブルヘイムへの適正強化、増幅を行った上で放った『ただのニブルヘイム』だ」
「つまり…干渉範囲以外の変数は元の式のままということか?」
「そうだ」
他の戦略級魔法も同じ原理で扱える。
しかし正しい魔法式を知らないため、能力によるゴリ押しになる。
「あと"程度の能力"が司るのは基本的に"概念"だ。
だから魔法を行使出来るかは現代魔法よりも古式魔法よりの分類になる」
例えばシンクロライナー・フュージョンは単に
"核融合を操る程度の能力"
で再現可能。
アビスは
"水を操る程度の能力"
オゾン・サークルは概念拡張(拡大解釈)で
"風を操る程度の能力"
ヘヴィ・メタル・バーストは
"魔法を使う程度の能力(霧雨魔理沙)"
霹靂搭は
"雷を起こす程度の能力"
もしかしたらトゥマーン・ボンバも再現出来るかもしれないが、手間がかかりすぎるので却下。
ついでに言えば俺がよく使う圧切は
"境界を操る程度の能力"
と相性がよかったりする。
「あ、この話はオフレコでな」
「無論だ。三人共いいな?」
「はい」
「わかりました」
「わかりましたわ」


そして、来たときに通った地下トンネル…
「では、またいつか会いましょう。白夜君」
「はい」
「何かあれば魔法協会関東支部に駆け込みなさい。
関東支部には四葉の手の者が常駐しているわ」
うん…そういう事にならないように気をつけよう…
心強くはある…でもさぁ…ちょっと…いや、かなり過剰戦力だ。
なんせ"アンタッチャブル"…大漢をわずか数十名で壊滅させた魔法師集団…
考えるだけでも恐ろしい…
だけどそれは敵に対してだ。
数日ここで過ごして、彼等は仲間を護る為にそう在るのだと解る。
「俺も四葉に何か有れば駆けつけますよ」
「そう、四葉家当主として心強いわ」
そんな風に真夜さんと話していると…
「姉さん、いつまでイチャついてるの。白夜君も早く乗りなさい」
すぐそばの車の中から声が聞こえた。
車の中には深夜さん、深雪さん、達也がいる。
彼等が東京に帰るのと一緒に帰るのだ。
「いいじゃない」
「はぁ…ま、いいわ。白夜君」
「はーい」
深夜さんに呼ばれたので車に乗る。
バタン、とドアを閉めると、真夜さんが窓をノックした。
うぃ~ん…
「どうしたんですか真夜さ…」
しかし、俺はその先を言うことが出来なかった。
なぜなら、口を塞がれたからだ。
唇で…
「また会いましょうね、私の王子様」


その後気付いたら千葉家の前に居た。
「訳がわからないよ…」
「あら、白夜お帰り。四葉はどうだった?」
取り敢えず出迎えてくれたエリカにこう答えた。
「うん、とってもたのしかったよ(棒)」
 
 

 
後書き
区切りがいいのでここまでです。 
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