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楽園の御業を使う者

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CAST12

あの後、戻って来た深雪さんにお礼を言われたり、達也とCAD談義をしたり、昼食を取ったり、ガチの鬼遊戯をしたりした。
そして今は風呂に入っている。
ふぅ…
今、この風呂は俺の貸し切り状態だ。
黒羽姉弟は父親に呼ばれ、司波兄妹は母親に呼ばれてるらしい。
四葉深夜の回復…多分結構大きな出来事だ。
ん?誰か来た…達也かな?
浴場に誰かが入ってきた。
シャワーの音が聞こえる。
やがて音が止み、誰かが歩いてきた。
「達也か?文弥か?」
「ふふっ…私よ」
ふぁ!?
「真夜さん!?何してるんですか!?」
聞こえてきたのは四葉家現当主の声だった。
一瞬だけ彼女を見て、直ぐ様目を反らした。
「あら、いいじゃないの」
良くねーですよ!
「隠して!前!前!」
「こんなオバサンの体が気になるのかしら?」
「こちとら健全な男子だぞ!?」
て言うかアンタ何歳だよ…?
四十越えてるとは思えねぇぞ…
「あら、やっと私にも素で話してくれたわね」
やべ…あぁ、もうこのままでいいや。
「アンタなに考えてんだ…俺の理性がプッツンしたらどうするつもりだ?」
「無論、反撃するわ」
おっかねぇ…
「で、どういうつもりだ?」
「貴方は、姉さんを治したのよね?」
「ああ、その事は…」
「その力で、私の…女としての私を生き返らせる事は出来るかしら?」
そう来たか……………
「……………………………………できる」
「………そう…できるのね」
だけど、それは…
「絶対成功するとは限らない…」
「……………」
「それでもいいと言うのなら、やってやる」
『蓬莱人の血』とは別の手段だが、やってできない事は無い。
「真夜さん、覚悟があるなら、今夜俺の所に来てください」
俺は彼女にそう言い残し、風呂から出た。
風呂の前には葉山さんが居た。
「………葉山さん…止めるべきじゃないんですか?」
「再三申したのですが…」
そっか…
「葉山さんは聞いてるんですか?」
「はい、きいております。
可能…ですかな?」
「はい、絶対ではありませんが…」
「では、真夜様を頼みます」
と深々とお辞儀をされた。
「わかりました」
葉山さんにいって部屋に戻った。



コンコン
来たか…
「覚悟はできた?」
「とっくにできてるわ」
そうか…なら…
「そこに、横になってください」
彼女は敷かれた布団の上に横になった。
「貴方の体を…事件の前まで戻してから、時を加速させます。
何をバカなと思うでしょうけど、それが俺の異能です」
「やってちょうだい…」
「わかりました…」
"時を操る程度の能力"
程度の能力を発動させる。
「いきます…」
チッ………………チッ……………チッ…………チッ………チッ……チッ…チッチッチッチッチッチッ…
四葉真夜の肉体の時間が過去へと向かう。
一日…一週間…一月…一年…二年…四年…
時間の負の加速は、ますます加速度を益す…
そして…
約三十五年。
前世と今生を合わせた俺の歳よりも数年長い年月を遡った彼女の体は、とても小さかった。
「調子はどうです?」
「頭がクラクラするわ…」
「我慢してください」
さてと…次は正方向に加速させる訳だけど…
今だいたい十歳前後だから…
プラス十くらいか…
「じゃぁ、今度は貴方の体を成長させます」
「……………」
彼女は、何も言わない。
「いきます」
一日…一週間…一月…一年…二年…三年…
そして…
約十年。
「今の貴方の体は二十。子供を作りたいなら適齢です」
「余計な世話を………まぁ、でも…ありがとう」
彼女の目から、雫が零れた。
「…………どうします?ここで寝ますか?」
「いえ…戻るわ…」
彼女はゆっくりと立ち上がり、部屋を後にした。
それを見送った刹那
「あ!がぁ!」
急に、頭痛に襲われた。
「あ!ぎ!がぁ!」
い…たい!あた…まが…
強烈な痛みに、俺は意識を失った…
 
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