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茶コーヒー対決

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第三章

「それぞれ美味しいのです、ですから」
「どっちもなの?」
「喫茶店に出すべきなの」
「紅茶もコーヒーも」
「そうなの」
「片方だけしか出していない喫茶店はまずありません」
 茶太郎は喫茶店の跡取り息子としても話した、尚彼の店は紅茶もコーヒーも美味しいと評判で繁盛している。
「コーヒーの専門店でも紅茶はありますね」
「言われてみれば」
「確かにそうよね」
「紅茶のお店でもそうだし」
「コーヒーだけしかないとかね」
「紅茶だけってのもないわね」
「例えメインじゃなくても」
 それでもとだ、軽音楽部の面々も話した。
「両方あるわね」
「そうよね」
「両輪です」
 コーヒーと紅茶、両方あってというのだ。
「喫茶店やそうしたお店において」
「だからなのね」
「私達が開く喫茶店でもなの」
「紅茶もコーヒーもあるべきなの」
「両方が」
「そうです、共に美味しいのですから」 
 味は違っていてもというのだ。
「両方あるものであるべきです、ですから」
「そうなのね」
「紅茶だけ、コーヒーだけじゃ駄目なのね」
「両方があってこそ」
「それでこそ喫茶店なのね」
「共に愛する心があり」 
 茶太郎はその上品な笑みでさらに話した。
「それでこそです」
「喫茶店は成り立つ」
「そういうことなの」
「それじゃあね」
「私達はね」
「こだわるべきじゃないのね」
「そうです、コーヒーも紅茶も愛し」
 そうしてと言うのだった。
「両方を出すべきです」
「ううん、そうなのね」
「どっちかに意固地にならず」
「両方を愛して飲んで楽しんで」
「そうして出すべきなのね」
「そうすべきです」
 茶太郎は笑って部員達に話した、そしてだった。 軽音楽部の喫茶店ではコーヒーも紅茶も出され両方共かなり売れた、お店の売り上げはこの二つを軸としてかなりのものになった。部長はその結果を受けて茶太郎に満面の笑みで言った。
「有り難う、茶太郎君のお陰でね」
「お店はですか」
「大成功だったわ」
 そうなったというのだ。
「無事にね」
「それは何よりです」
「正直ね、紅茶かコーヒーだけだと」
「お店は成功していなかったですか」
「そうなっていたかも知れないわ」
「喫茶店をされるならです」
 茶太郎は部長に微笑んで述べた。
「やはりです」
「紅茶だけでも、コーヒーだけでもなのね」
「足りません、両方あってこそです」
 まさにとうのだ。
「喫茶店として成り立つのです」
「そうなのね」
「ああしたお店をされるなら」
「両方ないと駄目ってことね」
「ご自身が飲まれる分にはどちらかだけでもいいです」
 その場合はというのだ。
「個人の好みですから、ですが」
「それでもなのね」
「喫茶店は違います、ですから」
「茶太郎君はああしてなのね」
「皆さんに両方を飲んで頂き両方の美味しさを知ってもらい」
 そのうえでというのだ。
「出してもらったのです」
「そういうことね」
「そしてお店が成功したことは」
 茶太郎は部長に微笑んで話した。
「何よりです」
「そうね、本当によくわかったわ」
「喫茶店にはどちらも必要ということが」
「わかったわ、それじゃあ今日はお礼にね」 
 部長は茶太郎にその笑顔を向けてこうも言った。
「うちの部活に来て」
「お礼はいいと」
「笑顔ならいいわね、有り難うって言いたいの部の皆で」
「そういうことですか、では」
「来てくれるわね」
「喜んで」 
 それならとだ、茶太郎は応えた。応えたその時の顔は上品な笑顔だった。


茶コーヒー対決   完


                 2018・1・26
 
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