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どんな汚れも

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第三章

 バブルは怪獣との話を終えて教授と市民達のところに戻った、そのうえで怪獣から聞いた話をそのまました。
「怪獣は暴れるつもりはないです」
「そうなんだね」
「はい、ただ大阪の人達に言いたかったんです」
「その言いたいことは」
「大和川のことです」 
 怪獣がいるこの川のことだというのだ。
「大和川は汚いですね」
「残念ながらね」
 その通りだとだ、教授も答えた。それも苦い顔で。
「色々とね」
「その汚れが酷くてヘドロも溜まって」
「川がとても汚れていた」
「そのことを大阪の人達に訴えたかったんです」
「それでだったのか」
「はい、あの様の姿になって」
 大和川のヘドロを身にまとってだ。
「今の大阪の街に出て来たんです」
「川は奇麗にか」
「そしてひいては」
「大阪自体もだね」
「奇麗にして欲しいと」
 そう主張したかったというのだ。
「大阪は昔は今より遥かに奇麗だったからだと」
「そうだった、大阪もかつては」
 教授もここで気付いた。
「奇麗な街だった」
「今よりずっとですね」
「私が生まれる前だが」
 その頃の古い大阪はというのだ。
「ずっと奇麗だった、そして川もな」
「大和川もですね」
「他の川もな」
 大阪の川は多い、だがそのどの川もというのだ。
「奇麗だった」
「怪獣もそう言っていました」
「そして元の様にか」
「奇麗な川に、街になって欲しい」
「そう願ってか」
「僕達の前に現われたんです」
 敢えてだ、ヘドロを全身にまとってというのだ。
「大阪の人達なら出来ると」
「そうだな、一人一人が心掛けていけば」
「出来ますね」
「出来ない筈がない」
 教授は断言した。
「我々が」
「はい、それじゃあ」
「これからはな」
 まさにとだ、教授はバブルに答えた。
「大阪の環境を大事にしていこう」
「怪獣の訴えを聞いて」
「皆でな」
「僕達はこれからそうしていくから」
 バブルは今も川にいる怪獣に顔を向けて話した。
「期待していてね」
「君の願いは受け取った」
 教授も怪獣に言う。
「だから安心してくれ」
「大阪の環境は自分達でしっかりしないとな」
「さもないとどうにもならない」
「だから頑張ろう」
「皆で」
 大阪の市民達も誓い合った、そうしてだった。
 怪獣に約束した、そして実際に彼等は大阪の環境を守って奇麗にするのだった。そしてその中にはバブルもいてだった。
 今日もモップと洗剤を手に頑張る、大阪の街も人達も奇麗にする為に。


どんな汚れも   完


                    2018・1・23 
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