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どんな汚れも

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第一章

               どんな汚れも
 大阪の街はお世辞にも奇麗とは言えない、あちこちにゴミが落ちていて散らかっている。このことについては大阪市民達もわかっている。
「皆マナー悪いしな」
「ゴミ平気でゴミ捨て場じゃないところに捨てるし」
「そうした人が多くて」
「どうしてもね」
「街は汚いな」
「大阪の街は」
 こう言うばかりだった、とかく大阪の街は奇麗ではない。
 だがその中でだ、一人奇麗にしている者がいた。その者の名を城東バブルという。
 バブルは日々大阪二十六戦士の一人として大阪の街を奇麗にする為に働いている、どんな人でも場所でもものでもだ。
 彼は一瞬で奇麗に洗ってしまう、それで大阪市民達は彼を見て思うのだった。
「バブル君も頑張ってるんだ」
「それで俺達が汚くしてたら駄目だな」
「ゴミはゴミ捨て場に」
「使用した場所は自分で奇麗に」
「出来るだけそうしていこう」
「街を奇麗にしていこう」
「自分達で気をつけて」
「そうしていこう」
 彼等はバブルの頑張る姿に啓発されて自分達も気をつける様にした、それで大阪の街は次第にであるが奇麗になっていた。
 だがある日だ、何と大和川の方からだ。
 謎のヘドロだらけの怪獣が出て来た、それは悪夢の様な姿をしていた。
「何だあの怪獣は!?」
「何処から出て来たんだ!?」
「とんでもなく醜い姿をしているぞ!」 
 全身真っ黒いヘドロだらけでは当然だ。
「何て酷い匂いだ!」
「臭くて仕方ない!」
「何で大和川から出て来たんだ、あんな怪獣が!」
「どういうことだ!」
 誰もこのことが最初わからなかった、だが。
 大阪市立大学で環境保護の重要性をいつも訴えている教授が言った。
「大和川は汚い、だからだ」
「大和川のヘドロがですか」
「怪獣についたんですか」
「あの怪獣に」
「それであの姿ですか」
「あの怪獣はおそらく」
 どういった怪獣かともだ、教授は古の文献から話した。
「かつて大和川で眠っていた怪獣だ」
「そんな怪獣が大阪にいたんですか」
「そうだったんですね」
「それで大和川で眠っていたんですか」
「そうだったんですか」
「そうだ、平安時代に川から出て川の近くにいる人達を川の洪水から自分を盾にして護ったと言ある」 
 古の文献にはだ。
「それから眠りに戻ったというが」
「川沿いに住んでいた人達を護ったんですか」
「じゃあいい怪獣じゃないですか」
「どうしてその怪獣が出て来たんですか?」
「今一体」
「それはわからない、しかしあの怪獣は」
 大和川から出て来た、だが。
 動こうとはしない、ただその醜い姿を酷い匂いを出しているだけだ。教授はその姿を見て思ったのだ。
「何かを訴えているみたいだ」
「何をでしょうか」
「何を訴えたいんでしょうか」
「あの姿と匂いで」
「一体」
「それは私にもわからない」
 こればかりはだった、教授にも。 
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