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儚き想い、されど永遠の想い

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142部分:第十一話 断ち切る剣その十六


第十一話 断ち切る剣その十六

 このことはだ。彼等の中では記憶に残って離れないことだった。まさにだ。
「あの戦争もまたなのだ」
「守成なのですね」
「そうなる。守成だ」
 こう話すのだった。日露戦争のことも。
「幸せもまた然りだ」
「時には戦うこともあるのですね」
「ある」
 その通りだというのだ。あるというのだ。
「時と場合によるがな」
「恋もまたですか」
「あの二人はその戦いに向かおうとしている」
 二人のことを公にすること、それ自体がそうだというのだ。
「運命の戦いにな」
「この場合は幸せを築く為の戦いですね」
 侍従はそれだと伊上に話した。
「そうなりますね」
「そうだな。そうなるな」
「そうですね」
「そういうことだ」
 伊上もだ。その通りだというのだ。
「しかしそれだけではなくだ」
「その幸せを維持する為に」
「戦うことになるかも知れない」
「剣や銃を持たない戦いですね」
「それだけが戦いではない」
 武力を用いた戦いだけではない。そうだというのだ。
「その他にもだ」
「心の戦いですね」
「この場合はそれだ」
「そうですね。旦那様もこれまで多くの戦いを経て来られましたね」
「刀で斬り合ったこともあれば銃弾の中を潜り抜けた」
 幕末と維新だ。その頃は実に多くのことがあった。彼はその数多くの修羅場も潜り抜けてきたのだ。これは元老達の多くも同じである。
「戊辰戦争や西南戦争でもな」
「あの頃は何時死んでもおかしくなかったですね」
「しかし生き残った」
 そうなったというのだ。
「しかし戦いはそれだけではなかった」
「政治でもですね」
「舌も使えば頭も使った」
 そうしたものを全て使ってだ。戦ってきたというのだ。106
「心もだ」
「あのお二人は愛という幸せの為に」
「心で戦うのだ」
 まさにだ。それだというのだ。
「二人はな」
「そして旦那様はそのお二人に」
「力を貸させてもらう」
「旦那様のお力を」
「その二人の戦いに」
 幸せになりだ。それを維持する戦いにだというのだ。
「そうさせてもらおう」
「いいことです」
「私はこれまで多くのものを見てきた」
 人だけではないというのだ。
「そしてそういった中でもだ。あの二人はだ」
「素晴しい方々ですね」
「実にだ。素晴しい」
「だからこそ幸せになってもらいたい」
「両家の対立も終わるのだからな」
 こんな話をしてだ。伊上もだ。
 二人に対してだ。温かい心を向けていた。そしてその温かい心でだ。二人の為に動くのだった。彼もそうした意味で戦いを選んだのだ。


第十一話   完


                  2011・5・17
 
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